第40話

領主の館に到着した私は、館にある自分の部屋へと通された。どうやら領主様は来客の対応中らしくどのくらい待てばいいのかわからないとのことだ。


「私の用事は今日中に話すことができれば問題ないわ」


私がそうメイドに告げた。


「では、アリシア様。何か必要な物はございますか?」


「それなら魔法に関する書物を見せて欲しいわ。持ち出しが難しいのであれば私が書庫へ向かうから話を付けてくれないかしら?」


「かしこまりました。確認してきますのでしばらくお待ちください」


そう言ってメイドは出ていった。数分後に戻ってきたメイドは。


「アリシア様。魔法に関する本は書庫からの持ち出しは厳禁とのことです。領主様はまだ時間がかかりそうとのことですが、今から書庫に向かわれますか?」


「行きます。書庫まで案内してください」


所変わって書庫である。ここにはエラデエーレ領が開発された当初からの書類などが保管されており、その中には街門の建設方法が記述された本が残っているという。私は司書に話しかける。


「魔力の増幅に関する書籍を読みたいのだけれど、何かあるかしら」


「それでしたら、鏡写しと呼ばれる儀式に関する書物が一冊、魔力を宿す食材を食べることによる研究所が一冊あります。すぐに読まれますか?」


「はい。お願いします」


私はまずは鏡写しの儀に関する書物から読み始めた。その内容には魔力を注ぎすぎた場合のデメリットがあることや魔力が全快の時に行う方が上昇率が高いことなどが書かれていた。


次に魔力を宿す食材に関してだが、その効果は鏡写しの儀よりも低く、魔物の心臓など魔力が多く含まれている物を食すと最悪、魔力が暴走してしまうとのことだ。


その二つの書物を読み終わり、無属性の魔法に関する書物を読んでいる最中に執事より領主様の対談が終わったとの報告があった。私はすぐに執務室へ案内してもらった。


「ごきげんよう。領主様。いい報告と悪い報告どちらから聞きたいですか?」


「何だその言い方は?とりあえず悪い方から頼む」


「今日、私の館へ魔法師ギルドのギルドマスターが来訪しました。目的は無詠唱魔法の方法らしく教えれば月に銀貨一枚をくれてやるとのことでした。王都では報告しただけで値段がつけられないと言っていたので、話にならないと思い腹に一発魔法をぶちかましてしまいました」


領主様はあきれたように手のひらを頭に押し付けていた。


「その後どうした?」


「ギルドマスターには帰っていただき、王都のギルドマスターへこの件について手紙を出しました」


「分かった。とりあえず返事が来るまでこの街のギルドマスターは貴族街に入れないようにしておく。それで構わないな?」


「はい。それで構いません。ご配慮ありがとうございます」


「それでいい報告とは?」


「魔法師候補が石材の生産に成功しました。一日に作れる量は少ないですが、作りが頑丈なため今の街門に使用している石材よりも上質な物が定期的に作成できるかと」


「それは確かにいい報告だな。それで一日にどれほどの量が作れそうなのだ?」


「それはまだ分かりません。何せ今日その魔法を初めて使用したので。ただ魔力量が呪文も作成したので土魔法を使えて魔力量が足りていれば石材の作成は可能な状態になっています」


「それなら土魔法師を増やせばいいではないか」


「その魔法を公にしても構わないのであればそれでいいのですが、その魔法は私が改良した魔法ですよ。ギルドに持ち込まれでもして、他の国が要塞でも作ったらどうするのですか?」


「それほどの代物か。分かった。魔法師の採用に関しては私が注意を払い行う。君は魔法師を育てることに注力してくれ」


「分かりました。ところで魔力を増幅させる方法に鏡写しの儀と言うものがあることはご存じですか?」


「知ってはいるが、あれはやりすぎると魔力が暴走すると聞いているぞ」


「そんなに危険な儀式だったのですね・・・」


「まさかやってはいないだろうな・・・」


「魔法師候補の三人に行いました。一応危険と言うことは話しています」


「危険を承知で行っているのであればそれは個人の判断と言うことで構わん。しかし、行っていない者とは何らかの差を付けねばならないだろう。今のところは給金に差をつけることにしよう。その三人には月に銀貨七枚を支給する旨を伝えてくれ」


「分かりました。それでは儀式は続ける方向で進めてよいのですね」


「本人が了承している以上は構わん。しかし、今後は私の許可をとることと、何らかの資料を残すようにしてくれ」



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