第37話

私は馬車に乗り教会へ向かうと、教会には人だかりができていてそれを神父様が何とか抑えている状況だった。馬車が近づくと人は道を作るように左右に分かれた。


「神父様、これは何事でしょうか?」


「実は昨日、無料で属性診断が受けられたという噂が今になって広がってしまいまして。それで今日属性診断を受けようという民衆が集まっているのです」


私は大声で民衆に話しかける。


「無料で属性診断を受けることができたのは昨日だけです。本日は行えませんので解散してください」


それを聞いた民衆の反応は様々だった。早々に諦める人。こちらへ文句を言ってくる人。私へ取り入ろうとする人などだ。私はこちらへ文句を言った人たちへ忠告する。


「一応、私は貴族の一因です。それ以上汚い言葉を発する様であればここで処理しますよ」


その言葉を聞いた文句を言っていた民衆は走って逃げていった。残ったのは先日採用した魔法師候補四人と残り四名の男女だ。私は残った数名の話を聞いてみるとスラムの住民で炊き出しや治療を行った私に対して改めてお礼を言いたかったとのことだった。


私は四名を魔法師候補の寮で使用人として雇うことにした。その旨を伝えると、四人は泣いて喜んでいた。どうやら食つなぐのにも精一杯であり体力も衰えていることから街の修理の仕事もできずに生きていくのを諦めなければいけない程の状態だったらしい。


私は護衛の一人をこの四人につけ、魔法師候補の寮まで送り届けるように命令した。そして、私と候補生は馬車に乗り寮に向かった。


到着して家を眺めてみると二階建ての大きな家で間取りは宿屋のようだった。一回に大勢で食事がとれる食事処のような場所がありその他には小部屋が十程ある家だった。隣の家も確認したが同じような形でベッドは既に備え付けられていた。


私は部屋の確認を済ませた後、全員を集合させる。今後の予定を話すためだ。


「まず、土魔法使いを集めた訳を説明するわね。あなた達の第一目標は街門の修理よ。そのために砂を石に固める魔法を取得してもらいます。最初はアダルヘルムを師匠として詠唱から教えてもらいなさい。これを日中に行い、魔力が尽きた場合は私の家に薬草畑を作るからその手入れをする事と外から土を集めてくる作業をしてもらいます。何か質問はあるかしら?」


そこでテベリオが手を挙げたので話す許可を与える。


「アリシア様の言い分では攻撃魔法は必要ないってことですかい?」


「そういうわけではないわ。ただ第一目標には必要ないわね。給金は月に銀貨五枚らしいけれどここを離れたくなったらいつでも言いなさい。今はやる気のない人間を育てる余裕はないわ」


テベリオは不服そうにしていたが銀貨五枚と聞いて満足そうな顔になっていた。


「他に質問は?」


次はアダルヘルムが手を挙げる。もちろん話す許可を与える。


「私の使う石生成では街門を支えるには強度が足りないと思われます」


「それに関しては、私が魔法を改良します。私には魔法式が見えるので問題ないでしょう。ですが私は見た目で分かる通り属性を授かっていません。ですので、試すのはあなた達となります。魔力を高めていないと発動しない可能性もあるのでしっかりと訓練を積んでください」


その話を聞いてみんな驚愕していた。マトローナが急に話し出す。


「それで発動できなかった場合に罰則などはあるのですか?」


「ないわ。だけれど日頃の勤務態度や同僚や住民からの評判によっては退団してもらうわ」


これを聞いてみんな安心していた。私の考えでは無茶なことを言われることを恐れていたのだと思う。再度質問を促したが誰も発言しなかったので私は護衛に話しかける。


「私たちは屋敷に戻るけれど護衛がいなくなるのが心配であれば屋敷から護衛とメイドを一人こちらに連れてきてちょうだい」


屋敷は隣だが流石に護衛が全員離れるのは問題があると考えたのか、護衛は敬礼をして屋敷の方へ走っていった。すぐに戻っていたためメイドに寮の管理の方法を今からもう一人の護衛が連れてくる人間に伝えるよう指示を出し、私たちは屋敷へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る