第36話
私と領主様は朝食を食べ終わり話を始める。
「昨日の伝言は聞いた。四人も魔法師候補を見つけたらしいな。それで、外壁の補修にはいつ取り掛かれそうだ?」
「いつと申されましても見つけたのは魔法師候補であって魔法師ではありませんよ。魔法師が育つのを待つよりも兵を使って外壁の補修を行った方が早いと思います」
「魔法と言っても万能ではないということか・・・」
「どちらかと言うと万能がゆえに会得が難しいというべきかと。それに魔法師の育成に関して例が少なすぎます。もう少し資料などがあれば早くはなるかもしれませんが」
「そうか。私も疲れていたようだな。問題は山積みで兵は動かせん。街門の補修は後回しにする。では今日呼んだ本題に入ろう」
「先ほどの件は本題ではないと?」
「ただの希望があるかの確認だ。本題はそなたの家だ。貴族街に一軒広大な庭付きの屋敷があった。そこを君へ譲渡する。メイドと護衛に関しては治療に当たった際の人員を既に屋敷に配置してある。執事には表にいる彼を使ってくれ」
「そんな物頂いてもいいのですか?」
「ある物は有効に使わんとな。それに君にはない物を大量にねだることになるのだ。そのくらい投資しておいてもいいだろう。それと魔法師の家だが君の屋敷の隣が住民街になる。隣の家をとりあえずは使ってもらってくれ。貴族街の隣だから家は大きいぞ」
「候補には男性と女性が混じっているのですが。二軒いただけるのですか?」
「そうだ。二軒準備してある。しかしそちらには使用人などはいないから必要であれば街から雇ってくれ。魔法師候補は月に銀貨五枚、使用人には月に銀貨三枚の給金を支払う」
「分かりました。魔法師候補に関して今はこれ以上増やす気はありません。使用人は家を確認してからになりますが二名ずつの計四名を予定しています。あと薬草を栽培するための庭師を二名雇いたいのですが構いませんか?」
「庭師に関してはそなたが給金を払うのであれば何人雇おうと問題ない。ちなみに其方の魔法師としての給金は金貨二十枚だ」
「魔法師としてですか?」
「其方は本来薬師であろう。そちらの仕事もしてもらわないと困る。今は薬草を採取する暇もないため手持ちのポーションで何とかしのいでいるようだが兵士か冒険者の手が空き次第、栽培に移れるように準備を進めておいてくれ」
「分かりました。話は以上でしょうか?」
「ああ」
「では街に必要な人員を探しに行ってきます。朝食ありがとうございました」
そう言って私は退室した。部屋の外には先程話に上がった執事さんが立っていた。
「話しに上がったとは思いますが、これからアリシアお嬢様付きの執事を任されましたエアルビム・フォインと申します。これからよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします。エアルビムさん」
「私に敬語は必要ありません。名前も呼び捨てで結構です。ではお嬢様、本日のご予定はいかがなさいますか?」
「まずは魔法師候補達との集合場所である教会に向かいます。その後で魔法師候補達の家を確認して必要な使用人を商業区で探します。最後に私の屋敷を確認して今日は終わりにします」
「かしこまりました。その旨を私から御者に伝えておきます。アリシア様は準備が整い次第、玄関に向かっていただければすぐに発車できるようにしておきます。私は屋敷を確認し、資料をまとめておきます」
「もう準備はできているのですぐに玄関に向かいます」
「それでは私もご一緒いたします」
そうして私と執事のエアルビムは速足で玄関へと向かった。
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