第35話

次の日、朝から各地区を回って土属性の魔力持ちを魔術師団の兵士として採用する。集合場所は教会の前。という噂を流して私は教会の前で待つことにした。ちらほらと噂を耳にしてやってきた人たちがいたので、教会の中に入ってもらい属性診断を受けてもらう。時間が経つと属性診断を無料で受けさせてもらえるという噂まで追加され若い人たちの応募が増えてきた。


私は一緒に来ていたウルフェンと一緒に素質がありそうな人間を探す。それと同時に属性診断を受けた人の名簿を作成していく。後々その属性の人間が必要になるかもしれないし、住民の把握にも役立つだろうとの判断だ。


四十人程属性診断を終え、その中に二十名程土属性の魔力持ちがいたが私を下に見ていたり、年齢的に雇うのは難しい人たちばかりであった。私も名簿作成に集中し始めた頃にウルフェンがすり寄り何かを知らせてくれる。頭を上げると冒険者らしき装備をした男の人が私のことを見ていた。


「土属性の魔力を持っていれば兵士に採用してくれると聞いたのだが、本当なのか?」


男は私を下に見ることをしなかった。話し方から正確にも問題なさそうだ。


「私との面談と魔法の素養をみて合格できれば採用するわよ。今のところ採用した人はいないけれどね」


男は眉を顰めた。しかし、このまま帰る気はないのか属性診断の結果を教える用紙を差し出した。結果は土属性だった。


「あなた土魔法はどの程度使えるの?」


「分からない。今日初めて属性診断を受けたからな」


「ならそこで土を石に変えるように魔力を流してみて」


男はやってみるが初めてで何も教えてもらっていないのにできるはずがなかった。それでもあきらめずに何度も挑戦している。私はそれを放っておいて属性診断を受けた人たちの名簿を作成していく。


夕方になるまで行ったが、採用することになったのは先程の男を含めて四人だった。

他は、同じように初めて属性診断を受けた女性が一名、土魔法のロックバレットを使える男が一名、こちらが望んでいる土を石に変換することができる四十代の男性が一名の計四名だ。名前は順番にファルカス、マトローナ、テベリオ、アダルヘルムだ。


四人とは明日の午前中に教会で待ち合わせをすることにして、私は馬車で館へ戻った。館へ着くと玄関で執事さんが出迎えてくれる。いつも同じ人だが私専用の執事でもいるのだろうか。そんなことを考えていると執事さんから声がかかる。


「おかえりなさいませ。アリシア様。本日中に報告したいことがあれば私にお申し付けください。領主様は現在、仮眠の最中ですので」


「ただいま戻りました。では私の部下を四人仮採用しました。明日からこちらへ連れてきたいので兵士用の部屋の準備をお願いします。とお伝えください」


「かしこまりました。それではお部屋までご案内いたします」


そう言って私の部屋まで先導してくれた。この屋敷は広く道を覚えられていないので正直助かっている。


次の日の朝、準備を済ませ扉を開けるとそこには執事さんが立っていた。


「おはようございます。アリシア様。領主様より朝食のお誘いが来ておりますがお時間よろしいでしょうか?」


「向かいます。案内してください」


私がそう言うと、執事さんは先導してくれた。連れてこられたのは執務室だった。そこはリビングとかじゃないの?と思わずにはいられなかったが連れてこられたものは仕方ない。執事さんが中の様子を伺い、扉を開けて私を招いてくれた。そこには幾分か書類が整理された部屋であったが領主様はまだ目に隈を作っている。私は案内されるままにソファへ向かい領主様の仕事が終わるのを待っていた。


「すまない。先に座っていてくれ」


そう言われたので座って五分程待っていると朝食が運ばれてきた。それと同時に領主様も立ち上がりソファへ腰かける。


「では先に食べようか。話はその後でする」


私と領主様は無言で朝食を取り終えた。そしてようやく本題に入る。

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