第38話
屋敷に到着し裏庭に行くとそこにはきれいに整えられた庭園があった。しかし、維持する人はいないし薬草畑を作らなくてはいけないので躊躇せず庭園を更地にしていく。魔法師候補生たちは隅っこで魔法の訓練を行った後、こちらに合流して庭園を耕してくれた。
私は畑づくりを任せて、屋敷に戻る。すると執事のエアルビムが玄関で待っていた。
「おかえりなさいませ。アリシア様。アリシア様に目を通していただかなければいかない書類は執務室に集めております。それと魔法師ギルドのギルド長が挨拶に来ると申しておりますがいつであれば面会できるでしょうか?」
「分かりました。書類に関しては目を通しておきます。魔法師ギルドに関しては明日の午後であればいつでも構わないと伝えておいてください」
「かしこまりました。それでは執務室まで案内させていただきます」
そうして執務室にたどり着くと、書類が数枚残されているだけであった。私は一枚目を手に取ると『ポーションに関する報告書』と明記されていた。その書類に目を通すと現段階でポーションを使用して副作用などは確認されていないという一文を発見した。
ゴブリンの襲撃から一月以上経っていることから一般販売が開始されたようだ。しかし、魔石を粉状にできる薬師がそれほどおらず、魔法師ギルドと協力してポーションを作成している状態のようだ。ただ今までの傷薬よりも効果が高いため騎士団などの軍で常備されるようになっているとのことだ。来月からポーションの使用料が送られてくるが大金のため注意するように書かれていた。
二枚目の書類は館に就職を希望するメイドや執事、護衛の名簿だった。私がまだ幼いことが知れ渡っているのか募集してきた人数はとても少なく、メイドにいたっては見習いを卒業してきた者ばかりであった。だが館を維持するための人は全く足りていないため全員を採用することにした。
残りは館の維持に関する資料であった。月に金貨三枚程度は現状でもかかる。それに加え新たに人を採用すると金貨二枚の追加だ。給金で賄えるため書類全てに確認のサインをしたところでエアルビムが部屋に尋ねてきた。
「アリシア様、昼食の準備ができましたがいかがなさいますか?」
「その昼食は私の分だけですか?」
「いいえ。屋敷にいる全員分の食事を準備しております」
「なら申し訳ないけれど裏庭で訓練をしている四人の分も食事を用意してもらえないかしら?」
「かしこまりました。食事の席はどうなさいますか?」
「一緒でいいわ。今後のことについても話しがあるから」
数分後、屋敷のダイニングに呼ばれた四人は椅子に座らせられて待機していた。私が入室し椅子に座ると食事が運ばれてくる。四人は戸惑いながらも嬉しそうにしていた。平民のほとんどは一日二食である。それはお金に困っているからだ。初めにこの四人には昼食をとることを義務付けようとここに呼んだのだ。
「あなた達には毎日三食しっかり食べてもらいます。今日はここに呼んだけれど明日からは寮で使用人に準備してもらいなさい」
そこでファルカスより質問が入る。
「昼食を取れるのはうれしいのですが、何か理由でもあるのですか?」
「あなた達は魔法師である前に兵士なのよ。だから身体を鍛えてもらいます。そのためには食事をしっかりととった方が効率的だからよ」
質問もないようなので私は話を続ける。
「午後からも午前中と同じように訓練をしてちょうだい。ただし、アダルヘルムは寮に帰る前に私に石生成の魔法と改良した魔法を使用してもらうから魔力を残していてちょうだい」
「分かりました。しかし、魔法の改良はそんなに早く出来るものなのですか?」
「概念さえわかっていれば簡単よ。ただそのためには宮廷に入る程度の知恵は必要になるわね」
その話を聞いた後、四人は午後の訓練に向かった。
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