第24話

次の日、ペルリタさんは宣言通り出かけていった。冒険者ギルドにはどうせ行くからと言うことで昨日書いたスケッチを持って依頼を出してくれることになっている。


私はその間に試験管ホルダーの作成だ。とはいっても家には手ごろな木材もなく一個見本を作っただけで疲れてしまった。やはりこういうことは本職に任せてしまおうと思った。


店番をしていると次々に冒険者がやってくる。治療ではなく薬草を一目見るためだ。その手には麻とスコップ、護身用の武器を持っている。前回来た冒険者の出来事が噂になっているのか、薬草をチェックした冒険者は次々と街門の外へ向かっていく。


昼頃になると多くの冒険者が薬草を採取して戻ってきていた。私は一株ずつ薬草をチェックしては達成者のみ依頼表にサインをしていく。字が読めないためか適当に摘み取ってきては裏庭に捨てていく冒険者も少なからずいたためだ。そんな冒険者へ説明をしていると後が込み合っているからと他の冒険者が説明を請け負ってくれた。


夕方になると冒険者の姿もなくなり、私は急いで薬草の苗を裏庭へ植えていく。薬草のチェックと並行して苗を植えていたため残りは少ないが夕食に遅れるとペルリタさんに叱られてしまうのだ。


何とか夕食前に薬草を植え終わった私は、食事の席でペルリタさんと話をする。


「ペルリタさん。ありがとう。おかげで薬草が大量に集まったよ」


「それは良かった。それでどれくらい集まったのかしら?」


「おおよそ二百株くらいだね。おかげで裏庭が少し狭く感じるようになったよ」


「あら。それなら周辺の家を買い取って畑を広くしようかしら」


私は笑ってごまかしておいた。


「話は変わるけれど、ペルリタさんは明日も出かけるの?また頼みたいことがあるのだけれど」


「いいわよ。どうせ街中を歩き回るから少し寄り道するくらい問題ないわ」


「ならお言葉に甘えて、これをヤルシオさんのところで注文してほしいの。数は最低八十セットでお願いします」


「また大量に発注するわねぇ。まあ、あなたには魔術師ギルドからお金も入ってくるからこのくらいなら何の問題もないでしょうけれど使いすぎには注意するのよ」


「はーい」


その後は他愛のない会話をしながら夕食を楽しんだ。


次の日、ペルリタさんを見送った後、私は魔石が粉状になるまで魔力を注いでいた。私はこの現象を魔紛化と呼ぶことにした。その作業の最中に商業ギルドのエレノラさんがやってきた。


「おはようございます。アリシア様。本日は実験のために必要なポーションをご提供いただけないかの確認に来ました」


「おはようございます。エレノラさん。実はまだガラス瓶の納品がされていないので作りたくても作れないのですよ。その他の材料は揃っていますので数日中には用意できると思います」


「今、ガラス瓶の納品とおっしゃいましたか?まさか納品に必要なガラス瓶を自前で用意する気だったのですか?」


「そうですけれど、何か問題ありましたか?」


エレノラさんは額に手を当て、ため息をついた。そのしぐさはなんだか色っぽかった。


「ギルドマスターは資金援助をするとおっしゃっていたではありませんか。どうして必要な費用をおっしゃっていただけなかったのですか?」


「いえ。今後も使う品物だったので・・・」


私があいまいな返事をするとエレノラさんはさらに追い打ちをかけてくる。


「それに材料が揃っているということは薬草などもどこかに依頼したのではありませんか?その費用を全て教えてください。ギルドマスターに報告します」


私はエレノラさんの勢いに押され使った費用を全て話してしまった。


「そんな費用を個人で支払うなどありえません。後日その金額を補填に来させていただきます。それとガラス瓶は明日お持ちするのでポーション作成の準備もお願いします」


そう言い残してエレノラさんは帰っていった。私は昼前にもかかわらずなんだか疲れ切ってしまった。

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