第14話
予想より大きな金額が商業ギルドに預けられていることに驚いている私をペルリタさんが揺すって現実に戻してくれた。
「ペルリタさん。この場合、お金は引き出した方がいいのでしょうか?」
「使い道が決まっていないなら預けていた方が安心よ。そんな大金持っていたら盗みに来る輩もいるでしょうし」
「じゃあ、そのまま預かってもらいます」
その話を聞いていた受付人はその話を切り上げた。
「では他に要件はないでしょうか?」
その時に私は人体実験の改善案を出すことを忘れていたことを思い出した。
「実は薬品検査の改善案をお持ちしたのですが、お渡ししてもいいですか?」
そう言って私は木版をテーブルの上に置いた。受付人は一言私に話しかけ木版を読んでいく。
「一度、ギルドマスターと相談してみます。確かに今の体制のままでは薬の登録はリスクが高すぎますので。ですがこちらの提案にはお金を支払うことはできませんがよろしいのですか?」
「構いません。より多くの薬を扱うことができれば救える命も増えますし、ペルリタさんのお店も利益が増えると思いますので」
「かしこまりました。こちらは必ずギルドマスターと協議させていただきます」
「よろしくお願いします。私たちからの要件は以上です」
「では、出入り口までご案内します」
商業ギルド以外に中央区には用がなかったため、そのまま帰宅する。すると、なにやらお店の裏庭が騒がしかった。私たちは裏庭に向かうと衛兵が数人集まっており、一人の男性が縄で笹巻にされていた。私たちが帰ってきたのを発見したウルフェンは私の元へ駆けこんできた。私はウルフェンを受け止め、撫でてあげていると衛兵から声をかけられる。
「その子の主人は君かい?」
「はい。そうですが何かありましたか?」
「実は、大きな鳴き声が聞こえたので見回りを行っていた私たちがここへ駆けつけたのだけれどね。その時にはそちらの男がこのウルフに制圧されていたところだったのだよ。それでどちらを取り締まればいいのかわからずに暴れまわっていた男をとりあえず縛ってウルフは暴れる様子がなかったから自由にさせていたのだけれど、話を聞かせてもらえるかな?」
私はここがペルリタさんのお店の裏庭だということを説明し、私はそこで雇われていること。ウルフェンは私の従魔であることと普段この裏庭に立ち入る人間はいないということを証言した。
「なるほど。つまりはこの従魔に過失はなく、そちらの男は不審者と言うことでいいかな?」
「はい。見たこともない男性です」
私たちの証言を聞いた衛兵は、侵入した男を連行して立ち去っていった。
そのまま数日を過ごしてとある日、男を連行していった衛兵の一人が挨拶に来た。
「こんにちは。この間こちらの裏庭に侵入した男の証言が取れましたのでご報告に来ました」
「それはご苦労様です。今お茶を出しますので少々お待ちください」
そう言ってペルリタさんは下がっていった。数分で戻ってきたペルリタさんを交えて衛兵さんから報告を聞く。
「実はアロエ軟膏なる物が商業ギルドにてレシピが公開されたのですが、それに伴い蜜蝋とアロエの価値がかなり高騰しております。男はお金欲しさにこの薬屋の裏でアロエが栽培されていることを知って盗みに入ったそうです。そこでこちらの従魔であるウルフに捕らえられてしまったという経緯でした」
「そんなにアロエの価値が上がっているのですか?」
「以前の五倍ほどに値段が吊り上がっています。しかも軟膏は今在庫不足でこれからも値上がりそうなのです。そこでこちらの周辺も衛兵の巡回に含めようとは思うのですが、こちらのお店でも護衛の方を雇うなどの対策を取っていただきたいのですが・・・」
「分かりました。良い人材がいないか探してみます」
そうペルリタさんが返すと衛兵さんは納得したような表情で帰っていった。
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