第13話

次の日、ペルリタさんの話した予定通り、中央区の商業ギルドに行くことになっている。私は昨日、鍛冶屋のおじさんに書いてもらった設計図を持って準備をしているとウルフェンが何かをアピールしてくる。何かあったのかとウルフェンについていくと裏庭の薬草畑に向かい、私が植えた双葉の薬草のところまで来てしまった。薬草を見てみるとしおれてしまっている。成分を確認するとどうやら薬草に魔力が足りていないようだ。それを確認するとウルフェンが前足と薬草の根本に置き、魔力を流し始めた。薬草の魔力がどんどん増えていき以前確認した数値まで上昇するとウルフェンが魔力を流すのを止めた。見た目には変化は起きていないが数日中には回復するような気がする。私はウルフェンにお礼を言った。


「ありがとう。ウルフェン。今後とも薬草の管理よろしくね」


ウルフェンは一鳴きした後、家の方へ帰っていった。すると。


「アリシア。出かけるわよ」


とペルリタさんが呼ぶ声が聞こえた。私は走って家に戻った。


場所は変わり中央区、商業ギルドにたどり着くと以前同様一番近い受付にペルリタさんと私は向かう。そこにいたのは以前担当してくれた人だった。私たちに気が付くと会釈してくれる。


「いらっしゃいませ。ペルリタ様。アリシア様。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「前回同様、新商品の登録に来ました」


「あれから一か月しか経っておられませんがもう新商品を開発なされたのですか?」


「ええ。娘が」


受付の人は一瞬固まったがすぐに意識を取り戻し部屋へ案内してくれた。今日も秘書らしき人が同席している。


「では初めに商業ギルドの会員証を確認させていただきます」


私とペルリタさんは言われた通り会員証を取り出した。


「確認いたしました。それで今回お持ちになった商品とはどのような物でしょうか?」


ペルリタさんが私に目で合図を送る。私は観念して説明を始める。


「一つはアロエ軟膏の代替品でアロエクリームと名付けました。二つ目は肌の水分を保つために使うものでこちらは乳液と名付けました。三つ目は設計図を持ち込んでおりますのでこちらを確認してください」


そう言って、アロエクリームと乳液のサンプル、圧搾機と遠心分離機、それとネジの設計図を渡す。秘書さんは乳液のサンプルを一心に眺め続けていた。


「これはまた、すごい量の物を発明なされましたね。しかし、アロエ軟膏の代替品はとても助かります。レシピもかなり売れていますし、他の街でも蜜蝋が足りなくなっていましたので」


「確かに代替品ではありますが製造コストはこちらの方が高くなります。あと専用の機械が必要となるため、広がるまでに時間がかかると思います」


「広がるまでと言うことは今回もレシピを公開なされるということでよろしいでしょうか?」


私は返事をして、作り方の説明をしていく。受付人はレシピを羊皮紙に書き写していった。作業が終わると私はサンプルを納品する。前回のアロエ軟膏の時を踏まえ必要な量をあらかじめ作っておいた。


「サンプルもこれだけあれば十分でしょう。ちなみにペルリタ様のお店に行けば圧搾機と遠心分離機を確認できるのでしょうか?」


これにはペルリタさんが返事をする。


「いいえ。それらのサンプルは現在、工房に依頼して作ってもらっているところです。私たちは魔法を使って処理しましたのでそれらの機械はありません」


「それは踏み込んだことまでお聞きしてしまい失礼しました。では、アロエクリームと乳液のレシピ公開はそれらの機械が完成した後になりますがよろしいでしょうか」


「はい。構いません。できれば検査だけでも早めに済ませていただければ私のお店での販売ができるのですが、構いませんか?」


「分かりました。では今日からこの二種類の薬品を検査させていただきます。それとアロエ軟膏分のレシピ公開費がたまっているため引きおろしが可能です」


「ちなみにいくら溜まっているのですか?」


「金貨二枚分です」


予想より大きな金額に私は驚いてしまった。

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