第11話
次の日、昨日ペルリタさんが言った通り中央区にある魔術師ギルドに向かうことになった。道を歩きながらペルリタさんと会話する。
「ところでアリシアは他にどんな魔法を開発したのかしら?」
「光を屈折させる魔法です」
「屈折?」
「例えば鏡を斜めに置いたりすると光が反射して影になっている部分が明るくなったりしますよね。それを意図的に起こす魔法です」
「へー。それは何に使えるのかしら?」
「それは内緒です。詳しい話をすると私にも理解できていないことを説明しなければいけなくなるので」
「えー。けち」
そんな話をしていると魔術師ギルドの前にたどり着いた。扉は開いておらず受付は外にあった。とりあえず受付へ向かうとギルド証の提示を求められた。私は持っていないので何も行動を起こさなかったがペルリタさんが一枚のカードを差し出す。それだけで扉は開かれ私たちは通ることを許された。
「この魔術師ギルドってどういうところなのですか?」
「魔法の素質がある者を集めて魔法の研究を行う機関よ。一応依頼に応じて魔法の教えることもしているけれどそれはほとんど貴族相手ね。あとは珍しい魔法なんかは買い取ってもらえるわ」
「それで私が開発した結界魔法を買い取ってもらおうと・・・」
「そう言うこと。アリシアもお金があった方がいろいろと研究が捗るでしょ」
「・・・それはそうですけれど」
私が言いよどんだところで扉の前にたどり着いた。ここは魔術師ギルドのギルドマスターの部屋らしく魔法に値段をつけるのはギルドマスターの仕事らしい。ペルリタさんは遠慮なく扉を開けて中に入っていく。私はその後に続く。
「何だ、ペルリタか。そちらのお嬢さんはどなたかな?」
「何だとは何よ。フレデリク。もっと言うことはないのかしら。この子はアリシア。私の娘よ」
ペルリタさんの話を聞いてフレデリクと呼ばれたお爺さんは驚愕した表情を見せる。
「お主、娘なんぞおったのか?」
「一月ほど前にこの街で拾ったわ」
「呆れたわ。それでそちらの子をどうして連れてきたのじゃ?」
「それはこの子が魔法を開発したからよ。アリシア見せてあげなさい」
そう言われたので私は小さな結界のコップを作りそこに給水の魔法で水を注ぐ。その光景にペルリタさんは満足し、フレデリクさんは困った顔をしていた。
「ペルリタ。流石に給水の魔法は買い取れんぞ」
「違うわよ。その前よ。この子はガラスのコップなんて貴重品持ってなかったでしょうが」
「そう言われればそうだな。ほう。魔力を物質化しているのか?」
私は答えていいのか分からなかったためとりあえずペルリタさんの方を見る。
「アリシア、答えていいわよ」
「はい。その通りです。一応魔力を多く込めるほど耐久力が上がるという能力もあります」
「その前に一つだけ質問じゃ。お主詠唱はどうした?」
「あら?そう言えばそうね」
「えっ?魔法式さえわかれば詠唱は必要ないじゃないですか」
二人は驚愕して顎が外れてしまいそうなほど開いていた。私はどうしたらいいのかわからずそのまま立ち尽くす。先に回復したペルリタさんから質問が来る。
「その魔法式と言うのは何かしら?」
「例えば給水の魔法であれば【水よ、来たれ】と詠唱しますよね?」
その言葉に二人はうんうんと頷く。
「実はこの詠唱には魔力を込めすぎないようにする作用と手のひらから水を出すという魔法式が刻まれています。その魔法式の通りに魔力を込めることで魔法と言う現象が発動します」
私はちょっと説明が下手だったかなと落ち込むと、フレデリクさんが要約してくれる。
「つまり、詠唱がなくとも、起こしたい事象に伴った魔法式を作ることができ適切な魔力を流すことができれば無詠唱で魔法を行使できるということじゃな」
私が頷くとフレデリクさんは項垂れて話を続ける。
「この無詠唱の方法に関する情報料は流石にこの街のギルドにあるお金じゃ支払いきれんわ」
「分割払いでいいわよ」
「お主の成果ではないわ。だが助かる。金額も儂では決めきれんのでな。グランドマスターに任せることにする。それまでは一月金貨二枚で勘弁してくれ」
そう言ってペルリタさんに金貨二枚を支払っていた。
「構わないけれどしっかりアリシアの名前を前面に出すようにするのが条件よ」
「それは分かっておる。では仕事が増えたので今日のところは帰ってもらって構わんか?」
そう言われては居続けることもできないため私たちは魔術師ギルドを後にした。
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