第10話
一か月間、私のスキル調合について調べてみた。スキルの内容は対象の成分などを調べること。そしてそれらを組み合わせることができる。どういうことかと言うと、二酸化炭素と水さえあれば化学の工程をすっ飛ばして炭酸水を作成できてしまうのだ。と言うわけで科学の世界にはない魔力と言うものを水に溶かしてみた。結果できたのは魔力水。魔力が含まれた水以外に分かることがなく現在持て余している。
そのことをペルリタさんに話してみると、とりあえずは放置という結論に至った。何かとんでもない発見でもしない限りはスキルがばれてしまうような行動は慎むように言われてしまった。
そんなこんなで家で実験の日々を過ごしていたが、急に薬屋の方が忙しくなった。どこから宣伝されたのか軟膏の注文がとても増えたのだ。しかも衛兵や騎士団も買いに来るので家の治安がとても良くなった。しかし、蜜蝋の在庫がほとんどなくなってしまった。これでは一般家庭にまでアロエ軟膏が普及することはなさそうなので、新しい素材を探しに街の商業区に行くことになった。
商業区に着くと、見慣れた食物から見慣れない動物まで多種多様な物がたくさんあった。私は迷子にならないようにペルリタさんと手をつないでいろいろな店を見て回る。するとあまり人通りのない場所に木の実を売りに出しているお店があった。私はペルリタさんにお願いしてそのお店の商品を見せてもらった。
「いらっしゃい。なにかお探しの物でもあるのかい?」
「娘がちょっと寄ってみたいといったものですから。少し商品を見せてもらってもいいかしら?」
「どうぞ好きに見ていってください。見ての通りうちは閑古鳥が鳴いてますんで買って行ってくれると嬉しいねぇ」
私はなるべく油分の多い木の実を探していた。こちらの世界では植物油はあまり親しみがないのか使用されておらず、魔物からとれる動物油の方が利用されている。そのためか油分の多い木の実は捨て値で取り引きされているようだった。そんな中で私はオリーブの実を発見した。そして大豆も。これで軟膏クリームが作れそうだと思い、ペルリタさんに頼み大量に購入してもらう。すると驚いた店主が声を上げる。
「そんなに買ってもらっていいんですかい?」
「ええ。でもこんなには持って帰れないからサービスしてここまで届けてくれるかしら?」
そう言ってペルリタさんは地図を差し出しお店の場所を指し示す。店主は快く了承してくれた。
そのまま家に帰り、少しだけもらってきたオリーブを魔法で圧搾する。使った魔法は結界魔法、ただ魔力を物質化させただけであるが使う魔力の多さに対して強度が上がる便利魔法だ。この魔法はアロエ軟膏が商業ギルドの審査を通るまでの一か月間に自分で開発した魔法だ。今までは有効活用できなかったため、お蔵入りであったがこの日初めて使った。するとペルリタさんがにやりと笑って一言。
「明日、魔術師ギルドにこの魔法を売りに行くわよ」
こうして私は明日魔術師ギルドに向かうことが決まった。
それはさておき。
絞りだしたオリーブ油は竹筒へ保管し、次は大豆を圧搾する。方法はさっきと一緒だ。結界の上に私が乗ることで一気に大豆を圧搾した。それを結界に流し込み温水を注ぐ。一時待って沈殿した物を遠心分離機にかけてレシチンという乳化剤を取り出す。この作業を見ていたペルリタさんは頭をひねってこう呟いた。
「これはどこに売りつけたらいいのかしら?」
私は聞かなかったことにして作業を進める。これを竹の容器へ数パターンに分けてオリーブ油を加えて混ぜ合わせる。数パターンに分けたのは最適な配合量を探すためだ。この作業が終了したときに薬屋のドアベルが鳴る。時刻は夕暮れ時であり、店はもう閉まっている。ペルリタさんが玄関に駆け寄りドアを開けると昼間に買い物に行ったお店の店主がそこにはいた。どうやら約束通り品物を届けてくれたようだ。
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