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死ぬ前にしておくべきことを考えることにした。
自死を図るということはどこかしらに迷惑をかけることにはなる。とはいえ先立つ者のプライドとして、できる限りのことはしていこうと思った。
まず会社周り。同僚にそれとなく辞職の意志を示すところから、直近の仕事を片付け、身上整理、業務引き継ぎ、そして辞職に至るまで1ヶ月近くかけて行った。
死に方は首吊りを考えていた。
発見のされ方など死後のことは想像がつかないが、格好つけて簡単に遺書を書いてみた。戸籍謄本、住民票をコンビニで取得し、通帳、そして書き上げた遺書と共に居間の机の上に置いた。
やけに寂しく感じる部屋で1人、仏間の母の遺影を見つめた。
家族がいなければ、しておくこともあまり無いものだな。
父親は私がまだ小学生の頃に病死した。癌だった。
兄弟もペットも居なかったため、私たちはお互いにとって唯一の家族となり、それからは2人家族として生きてきた。
私が学生の時分、母は努めて私の世話を焼いてくれたが、就職して生活が安定してからは、安心して力が抜けたかのように老化が目立ち始め、反対に私が母の世話をするようになった。
母の介護は私の生きる意味となっていたが、その唯一の家族も先月病死した。皮肉なことに、罹患していたのは父と同じ癌だった。
今になって思う。
私も同じ癌で死にたかったなと。
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