初恋相手は壬生浪士♀
Rod-ルーズ
第1話 螺旋と運命
『この度、誕生させましたのは、かの有名な大剣豪のクローンでございます!!』
俺が小さいころテレビではそんなニュースばっかりが流れていた。当時、小学生だった俺がそんな難しいニュースなど理解することは出来ず、特番に特番が重なって見たかったアニメや戦隊ヒーローが見れなくてつまらなかったのを思い出す。
それから月日が流れて生物のDNAを組み替えるいわばクローン技術は当たり前のものになっていった。中学生になった時には社会科見学で研究施設を訪れるほどにまで社会から認められるほどに。
当然、いい顔をしない人だって存在する。テレビでは『生物学学会員』とか『環境推進委員』とか見ただけで偉い人なんだなっていう人が反対の声を上げているし、都会を歩けば週末の日曜日にデモ行進をしていたりする。
そんな日常だけど案外みんな気にしていなかった。そう、それは俺だって同意見。
「そういえば昔やっていた第1号の人たちって俺とそんなに変わらない年なんだよな」
ふと幼かった時のことを思い出す。高校2年生にもなり、当時のことを考えると十年も前のことになるだろうか。クローン技術で生まれた子たちは発表した当時、すでに小学校に入学させて一般人のように成長をさせるなんて話していた気がする。
「一度でもあって見たいものだな、そんな当時を生きてきた人達に」
当時の記憶がなかったとしても、きっと断片的な記憶とかは持っているんじゃないかって期待してしまう。それとやはりオーラが一般人と違っているのだろうか。きっと会うことはなのかもしれないけど、『子供の時に見た世間をにぎわす有名人』に会って見たかった。
☆☆☆
「ねぇ、お使い頼まれてくれない?」
リビングでくつろいでいると母親がちょうど夕飯の準備をしている最中、手を止めて袋の中を確認していた。きっと何かを買い忘れてしまったのだろう、俺こと村上正は買い物を頼まれるのであろうと直感し目線を外してテレビに集中していたのだが、その思惑は外れてエプロン姿のままこちらに向かってきた。
「正、ごめんね。サラダに使う付け合わせを買いそびれちゃって。お使い頼める?お母さん、これからカレーの準備しなくちゃいけないから」
「・・・はいはい。いけますよ、何を買ってくればいいの?」
そういって母が買ってきて欲しい物をスマホにメモし買い出しに出かけた。何も必要なカット野菜も足りないらしく、メモ帳にはそれなりの数が記されている。まぁ、1000円で足りる買い物だ、しかもおつりはアイスでも買ってきなさいと頂くことができた。自転車にまたがり近くのスーパーへ漕ぎ始めた。
それからお目当ての商品を見つけて購入。スーパーには自分の欲しいものはなかったので代わりにコンビニへ向かうことに。夕方の時間にもなると店内は少し人が多い気がする。まぁ、見かけるのは同じ年齢の学生たちかスーツを着たサラリーマンで特別な見た目の人はいない。けれどそんな中で目を引くような人物がいた。
「ん…姉さんが言ってた雑誌ってこれかなぁ・・・」
本のコーナーで雑誌を見比べている一人の少女。黒髪を高くポニーテールで纏めており、白く色白な肌。そして中学生ぐらいか?同い年か、150cmもない華奢な体付きにもかかわらずまとっている雰囲気は凛々しさを覚える。服装は歳相応で白いスカートに薄いオレンジ色のパーカーを着ていた。
(買い物か、てか今まで見たことないんだけど。こんな綺麗な人・・・)
家からも近い個々のコンビニは割と高い頻度で利用している。だからこそ、よく見かけるお客さんの顔は覚えているし店員とも仲良くなった。だからこそ、今目の前にいる少女は覚えがなかったのだ。俺は不思議に思い近くで商品を陳列していた30代の小太り気味なおっさん・・・チーフである『高田さん』に声を掛けた
「ねぇねぇ、高田さん。あんな人見たことある?」
「いや、俺も初めて見たな~あんなかわいい子。なに、村上君ナンパでもするの?」
「いや、しないって・・・てかずっと悩んでいる感じだけど」
「そうだねー、お遣いなんじゃない?俺は女の雑誌なんか全く知らないからわかんないけどね・・・あ!すぐに伺いますねー!!」
レジが混んできたのを見て高田さんはカウンターに向かっていた。俺はどうしても彼女のことが気になって、近くに立って聞く耳を立てる・・・
「えっと、確か雑誌の付録がどうとか・・・黒のメイクポーチって言ってたけど・・・」
(あぁ、なるほどね。あれって麻耶(まや)がこの前買ったやつかもな)
彼女が探しているのはきっと、妹である麻耶がこの前本屋で俺に買ってもらった
(買わせた)雑誌のことだろうと頭によぎった。俺は『お前には大人すぎる』なんて親父のような古臭いセリフを履いたけど、半場脅しのような雰囲気でレジに持って行ったのを思い出す。俺は、その雑誌を見つけて手に取った後、いまだに探している彼女にすっと手渡した。
「ねぇ、探しているのってもしかしてこれのことですか?」
「えっ・・・あ!そうです、コレを探していたんです!なんでわかったんですか?」
「いやー俺、妹がいるんですよ。あなたぐらいの年齢で。この前、この雑誌に付いている付録がほしいってたかってきたんですよ。そしたら、お姉さんが独り言で『黒のポーチ』って言ってたからもしかしてと思って」
実際は入店した当初から眺めていたのだが、それを言ったら変な目で見られるしきっとお巡りさんを呼ばれるだろう。
それを知らずか、彼女はホッとした表情を見せて俺に一礼をした後、すぐにレジに向かった。そして、店を出るときに俺に向かって大きく手を振った後、足早に去っていた。
俺はさっきまで困り顔しか見せていなかった彼女が見せた年相応な笑顔と子犬の無邪気さに熱くなっており、その場で立ち尽くしていた。
「また会いたいな・・・」
こんな事、もう二度とないだろうしきっと一期一会だろうと心の中で思っている。けれど直感はまたすぐに出会えることがあると感じていた。
「おーい、ナンパ失敗か?高校生」
「・・・ちゃんと仕事しなよ。ガキに絡まないでさ・・・」
そうして突然の出会いから数日後、俺たちはまた運命的に出会うことになるのはまた別のお話
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