見られたくなかった

千羽美里サイド 中島との邂逅

私は今、楽しんでいるのだろうか。

だけどこれが楽しいという感覚なのかは分からない。

でも私は今とても楽しいと思っている。

婚約者の事も忘れる事が出来てとても幸せだ。

だから私はこれが楽しいと認知している。


達也も笑っている。

だから楽しい。

部活動を変わって良かったと思っている。

私は.....昔から楽しいという言葉を知らない。

何故なら私は.....達也と出会う前の記憶が無いから、だ。


つまり私は、楽しい、という事がよく分からないのだ。

そう思っていたのだが。

私は、楽しい、というものをよく知らない。


だけど私は部活動の仲間というものに出会った。

その中で私は色々と学んだ。

楽しい、という事も。


「今日は行って良かったか?」


「そうだね。.....色々と学べたから良かったんじゃ無いかなって思う」


「色々と学べた?.....それはつまり?」


「私自身が本当に色々と学べたって事だよ。.....私の人生は死んでいるから」


「.....ああ。そういう事か。.....良かったよ。多少でも楽しめたのなら」


そう言ってくれる達也。

それから私を静かに見てくる。

私はその姿を見ながら少しだけ恥じらいながらも笑みを浮かべる。

すると、お姉様。達也さんを独り占めにしないで下さい、と美幸が言ってくる。


「お姉様の達也さんじゃ無いです」


「.....あら?そう思うの?.....私は達也は私のものって思っているけど」


「お姉様。それは無いです。達也様は私の達也様です」


「お前ら。恥ずかしい事で喧嘩するなよ!?」


私は笑いながら会話をしつつ2人を見る。

2人は苦笑しながら私達を見る。

何だかこの幸せが続けば良いとは思った。

だけどまあ。

エロの事に関しては私は譲れないけど。


「お姉様。何を考えているのですか」


「.....?.....もしかして顔に出ていたかな」


「出てますね。達也様が呆れています」


「.....そう。まあ私はそれでも良いけどね」


言いながら私は達也の手を握る。

それから駆け出そうとした時。

目の前から黒い車が来た。

そして私達の前で停止する。

そうしてから顔を見せた人物は.....。


「.....中島」


「ハロハロー。もしかして学校帰りだったかな?」


「.....中島さん。何の用ですか」


「いやねぇ。.....気に入らない奴の顔を拝んでみようかって思ってな」


そう言いながら中島が車から降りて来る。

私達は中島の前に立ちはだかる。

それから中島を見ていると。


誰だ?、と顔を顰めてから見る達也。

達也に.....知られたくなかった。

こんなの、だ。


「.....お姉様の婚約者様です。.....達也さん」


「.....!.....そうなのか?」


「.....こんな人が婚約者とか考えたくも無いけど.....それから.....貴方に見られたくはなかったかな.....」


私は言いながら中島を見る。

正直に言ってしまうが。

気持ち悪さが疼く。

私は何故この人と一緒に居るのだろうか。

そんな事も.....疼いてしまう。


「.....そうか。婚約者か。.....その婚約者様が何用だ」


「はあ?何様だよお前。偉そうにしやがってよ。俺が居ないと全部滅ぶんだぜ?偉そうにすんな」


「.....滅ぶだ?.....全然意味が分からないが.....お前は美里と美幸の脅威なんだろ」


「.....脅威というか俺が居るから全て成り立っているんだが?」


つーかお前こそ何様だよ。

俺の婚約者に手を出してよぉ!、と言いながら。

達也にジュースみたいなのを引っかける。

私はその事に、達也!、と声を荒げる。

すると達也が私を静止した。


「.....落ち着け。こっちから手を出したら負けだぞ」


「.....でももう許せないよ.....こんなの!ジュースとか汚い!」


「そうですよ!達也さん!」


「.....」


そんな言葉に。

達也は何を考えているのか分からないが。

静かな笑みを浮かべながら大笑いする中島を達也は見る。

そして、哀れだな、と切り出した達也。

私は?と思いながら達也を見る。


「お前は哀れだな。.....こんなちっこい事しか出来ないのが」


「.....はぁ?」


「.....いや。ガキかな、って思ってる」


「テメェ俺をガキっつったか。何様だコラ」


別に俺にジュースをいくらでも引っ掛けてもらっても構わない。

だけどまあ.....お前より俺の方が知能では上ってのが良く分かった。

だからお前の事を哀れだって言ってんだ、と切り出す。

すると中島はその言葉にかなり赤くなる。

恥っている様だ。


「俺をどれだけ罵ってもらっても構わないが。.....美里と美幸に手を出したら絶対に許さないからな」


そして中島を見る達也。

私はその姿にまた赤くなる。

それから私は中島を見る。

チッと悪態を吐きながら中島は、覚えてろ!、と言いながらそのまま車にイラついて乗って去って行く。


「.....でも達也.....服が.....」


「.....こんなもんよりお前の身が心配だ。.....そして美幸もな」


「.....達也さん。.....だからそういう所に惚れるんですよ」


「.....そうか」


中島を一泡吹かせられた。

この事は.....絶対に忘れない。

だから私は.....達也が好きなんだ。

ずっと大好きで.....変わらない。

思いながら私は赤くなりながら達也さんを見つめた。

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