第11話 ダイヤモンドブローチの性能
ミレミランさんの準備ができて、配信映像には胸元にブローチはなかった。手には大きな盾を持っている。
「最初は宝石アイテムなしでハンター相手に対戦してもらいます」
『対戦相手の指定が来ました。如何しますか』
プロデューサーからの念話だった。対戦エリアの下側には予定していたランクCハンターが待機していた。
『誰からなの?』
『王都オシルドニーのギルドマスターです』
「素人の私でも違いが分かるかな」
『希望のハンターは誰?』
エリ姉と会話を続けながら念話も飛ばしていた。頭の中での同時並行処理は、最近は慣れたせいか苦にならない。
『ランクBのドリンモークさんです』
「宝石アイテムの効果が高いから、マイナでも分かると思います」
「それは楽しみね。せっかくだから、もっと凄くしたいと思うのよ」
「マイナが対戦するの?」
ハンターたちから笑いが起こった。
「私では無理よ。それよりもドリンモークさんはいますか? 王都オシルドニーのギルドマスターからのご指名です。この会場にいるかな?」
地下練習場内にいるハンターへ向かって大声を出した。
「俺がドリンモークだ」
声の方向には片手を上げた大男がいて、頭一つ飛び抜けている人間族だった。
「相手に一撃を与える役だけれど、引き受けてくれるかな」
「ギルドマスターのご指名だ。俺でよければ構わない」
「ありがとう。番組スタッフが説明に行くね」
配信映像は私とエリ姉に切り替わった。
「急な展開で予定外だけれど楽しまないとね」
「ドリンモークさんはこのギルド一番の腕力で、トップクラスのハンターです。ランクBですが、経験を積み重ねればランクAになれる人材です」
「エリ姉の情報量は凄いよね。主要なハンターの情報を知っていそう」
「マイナについてはもっと詳しいです。お姉さんに語らしてくれるかしら」
エリ姉と出会って一年くらいだった。付与魔法以外にも世間の情報に詳しくて、私についても、私以上に詳しいと感じたこともあった。まるで女神様みたい。
「今語られると宝石アイテムの紹介ができなくなるよ。せっかくドリンモークさんが飛び入り参加してくれるので、エリ姉には対戦の説明をしてほしい」
両手斧を持ったドリンモークさんが、対戦エリアに上がってきた。
「準備は整ったようなので、お姉さんが説明します。最初に宝石アイテムなしで、攻撃を受けてもらいます。安全のために盾で防ぎます」
配信映像にはミレミランさんとドリンモークさんが向かい合っていた。
「俺は手加減しない」
「相手がドリンモークは辛いにゃ。でも頑張るにゃ」
ミレミランさんが左手で盾を構えた。右手には短剣を持っていて、私から見ても防御姿勢だと分かった。ドリンモークさんが歩み寄る。
「ドリンモークさんの眼光は鋭いよね。宝石のような輝きにも見える」
「目で相手を威圧する力がありますから、将来が楽しみです」
「準備はできているにゃ」
ミレミランさんの気合いに満ちた声だった。
「両手斧の攻撃を盾で受け止めます。二人ともお願いします」
ドリンモークさんが両手斧を振り上げて、盾に向かって振り下ろした。
金属同士がぶつかった激しい音が響き渡る。
「ミレミランさん」
立ち上がって叫んでしまった。ミレミランさんが後ろに吹き飛んでいた。
私の想像以上にドリンモークさんの威力が凄かった。でもエリ姉やハンターたちは平然な顔をしている。
「ハンターなら慣れているから平気です」
私の心を読んだようにエリ姉が答えてくれた。
配信映像に私の立った姿があって、恥ずかしさを隠すためにゆっくりと座った。
「怪我とかはしていないの?」
「大丈夫です。もう立ち上がっています。ランク差と体格差、腕力の違いでは当然の結果ですが、攻撃力の凄さが分かったと思います」
「驚くほどに分かった。宝石アイテムには自信があるけれど受けきれるの?」
「マイナが弱腰とは珍しいです。新たな一面が見られてお姉さんは嬉しいです。宝石アイテムの準備ができたようですので、実際に見たほうが早いです」
ミレミランさんとドリンモークさんが、向かい合った姿が映った。
「くれぐれも無理はしないでね」
「今度は受けきるにゃ」
「俺は手を抜かない。全力で攻撃する」
ドリンモークさんの両手斧が、ミレミランさんの盾に向かって振り下ろされた。
大きな金属音が響いたけれどミレミランさんは少し後ずさりしただけだった。
「ドリンモークの一撃を防いだにゃ。本当にこの宝石アイテムは凄いにゃ」
自然に声が出たみたいで、ミレミランさんは胸元のブローチを眺めていた。驚いているのが私にも分かって、ミレミランさんを見つめた。
『会話が止まっています』
現状を思い出した。
「威力の差は歴然だった。私が言うのもおかしいけれど宝石アイテムは凄いよね」
「弟子に継承させたい宝石アイテムです」
「エリ姉の名言が出たよ。価格も凄いけれど、それほど効果も抜群なのね」
時代を超えても使える宝石アイテム。弟子に継承がエリ姉の口癖だった。
「この宝石アイテムに関われたのは光栄に思います」
「私もダイヤモンドを厳選した甲斐があった」
ミレミランさんの状態が整うまで、私とエリ姉が写し出された。
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