第10話 商品番号220910:ダイヤモンドブローチ
「最後の商品は何かしら」
「エリ姉自身が付与魔法を使って作った、特別な宝石アイテム。もちろん一点物。今までの中で一番高額品になるけれど、価格以上に魅力的な商品よ」
「楽しみです。早く見せてくれるかしら」
エリ姉の声が弾んでいた。
テーブルにある大きめの黒色ケースが、アップで映し出された。蓋をゆっくりと開けていくと、宝石アイテムの姿が見えてきた。
「思う存分堪能してね。ジャジャジャジャジャー、ジャッジャジャーン」
宝石を多く使ったブローチで、中央の大きなダイヤモンドが目を引いた。
「輝きが凄すぎます。今までに見たことのない宝石アイテムです」
「3.0ビーンの大粒ダイヤモンドを使ったブローチよ。ここまでの大きさは私も初めてね。輝きや透明感も一級品で、素材がプラチナなのも特徴よ」
「素敵なのは宝石だけかしら?」
「デザインと付与魔法はランクAのエリ姉で、加工もランクAの専属加工職人メム・ダイツの作品よ。最高の宝石アイテムね」
専属加工職人は何名かいるけれど、その中でドワーフ族のメム・ダイツさんはただ一人のランクAだった。年上で気むずかしい性格だけれど腕は確かだった。
「ダイヤモンドは宝石で一番硬度があります。王道で相性がよい各種防御の付与魔法を使いました。デザインは盾を意識しています。誰もが胸元に釘付けとなります」
「裏側も見てほしい」
ケースから取り外してトレーの上に置いた。手にとってブローチを回転させて、裏側でも宝石の輝きが確認させた。
「裏側でもデザインの手は抜きません。安定感のあるピンを使って、応用すればペンダントトップや髪飾りにも使えます」
「エリ姉のデザインは細部まで考えられているよね。そのデザインを最大限に生かす加工にもなっている。裏取りと言われる綺麗な加工もされているから安心ね。さらに周囲の宝石は爪が見えない特別仕様よ」
爪が見えない留め方は、元の世界にあった技術だった。私が留め方を説明しただけでメム・ダイツさんが再現してくれた。メム・ダイツさんの技術も凄かった。
「ダイヤモンドは衝撃に弱いですが、対策も取ってあるブローチです」
「説明を忘れていた。魔物との戦闘では衝撃がつきものだから、ダイヤモンドの表面にはカラーレススピネルで保護してあるよ。方法は秘密だけれど、ダイヤモンドの輝きは失わないから安心してね」
『価格と鑑定書も忘れずにお願いします』
プロデューサーからだった。ブローチは説明部分が多いから長引いたみたい。
「そろそろ価格が知りたいかしら」
「ダイヤモンドブローチは白金貨五千枚よ。一流ハンター以上でないと手が届かないと思うけれど、目指してもらえると嬉しい。シュンターリア王国最大の鑑定機関による鑑定書もついているから安心してね」
元の世界では鑑定書と鑑別書があるけれど、こちらの世界では両方を合わせて鑑定書だった。
先ほどまでの商品は単位が金貨で、白金貨一枚は金貨十枚と同じだった。どの程度の高額になるかは誰でも容易に想像できると思う。
「実際に着けたところを見てみたいです」
「エリ姉と同じ意見よ」
配信映像が録画に変わった。
その間にブローチを番組スタッフへ渡した。
「マイナは宝石アイテムを着けないのかしら」
「オパールの宝石アイテムはよく着けるよ。でも通販番組中は紛らわしいから、着けないようにしているだけ」
「宝石アイテムで可愛らしさが増したマイナを見られないのは残念です。マイナがモデルをすれば見られるかしら。お客さんにもマイナの可愛らしさを広めたいです」
『企画しましょうか』
ハンターたちからも見たいとの声が聞こえてきた。嬉しいけれど恥ずかしい。
「MC不在になるから無理よ。それよりもミレミランさんの準備ができたみたい」
配信映像がミレミランさんに切り替わった。全体の立ち姿を写している中でも、ブローチは存在感があった。
「高価すぎて緊張するにゃ」
ぎこちない動きながらも、ブローチの素晴らしさは伝わっているみたい。ハンターたちからは驚きや歓声の声が上がった。
「素敵なブローチでずっと見ていたい。でもブローチの性能も早く知りたい」
「お姉さんが性能の凄さを説明します」
配信映像が私とエリ姉に変わって、その間に実戦の準備が始まった。
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