第4話 商品番号220904:オパールペンダント

 私だけが見える位置にペンダントトップがあった。トルソーを回転させれば、お客さんに宝石アイテムが見えるけれども、すぐには回転させなかった。


「最初に紹介する宝石アイテムは私の大好きな宝石ね。宝石を眺めるだけでも買う価値があると思う」

「早く見たいです。マイナが大好きな宝石はあれかしら」

「多面体カットのルースは少ないけれど、光が舞う空間を見ているような宝石よ」


 ジュエリー前の宝石であるルースだけをとらえても、宝石ごとの特徴がある。配信映像にはトルソーが拡大されていたので、いつでもトルソーを回転できる。

「お姉さんも宝石アイテムを語りたいので、じらさないで早く見せてほしいです。宝石アイテムを語れないのなら、マイナを語ろうかしら」


「恥ずかしいから宝石アイテムに移るね。ハンターの皆さんも待ち遠しいみたい。トルソーを回転させるから、宝石アイテムを堪能してね。ジャジャジャジャジャー、ジャッジャジャーン」

 自らの口で音を表現させて、トルソーを回転させた。配信映像はペンダントトップが主役になっていて、中央にある宝石の輝きが素晴らしかった。


「ここからも輝きが堪能できます。素敵な宝石アイテムです。お姉さんもほしい」

「お客さんが最優先よ。この宝石アイテムは今日で売り切れるかな」

「商品の数が少ないのかしら」

「私が厳選したルースよ。このうっとりするような輝きは数が揃わない」

『商品の紹介をお願いします』

 プロデューサーの声で我に返った。宝石の輝きに見入って紹介がまだだった。


「素敵な宝石アイテムはオパールペンダントよ。宝石の重さは1.0ビーンで素材はイエローゴールドを使用している。オパールは軽いから、他の宝石よりも大きく見える。オパールには水分が含まれているから、水魔法との相性が抜群ね」

 ビーンは宝石特有の重さで、元の世界にあるカラットと同じ重さみたい。


「付与魔法は水魔法に特化しています。水の膜で攻撃と防御、回避まで上昇する万能型の宝石アイテムです。魔法が使えなくても使用できる優れものです」

「エリ姉の言葉が全てを物語っているよね。ここまでお得な宝石アイテムは滅多にないと思う。価格も金貨三枚で、パーティーが豪華な飲食を一回我慢すれば買えるくらい。十日以内の発送が可能よ」


 配信映像が録画に切り替わった。宝石アイテムが回転している、事前にとっておいた映像だった。その間に手元の宝石アイテムを番組スタッフに渡した。

「新人から一人前にあたるランクD~Fあたりにお薦めかしら」


『注文が入りました』

「はやくも注文の問い合わせも来ているよ。実用的だけれどジュエリーとしても優秀で、オパールは傷が付きやすいけれどペンダントトップなら安心ね」

「オパールのカットは大変と聞いています」


「昔は大変だったみたい。今は綺麗なオパールが多いかな。同じ表情がないと言われるオパールで、あなただけのオンリーワンよ」

「お姉さんはマイナのオンリーワンになりたいです」


『モデルの準備は完了です』

 視線をミレミランさんへ向けると、ペンダントトップの装着が終わっていた。そろそろ話題の着地地点を見つけたい。


「エリ姉の切り返しが冴えているみたい。私もエリ姉のオンリーワンになりたい。でも今は宝石アイテムよ。この商品もエリ姉のデザインよね」

「水をイメージしたデザインです。森の中にある湖畔で朝を迎えるような、目を閉じれば景色が浮かぶかしら。バチカンも大きめなので太めのチェーンでも平気です」


「いつもエリ姉のデザインは素敵で、今回もお気に入り。チェーンは別売りだから買うときは気をつけてね。実際に見てもらうほうが分かりやすいと思う」

 配信映像が私とエリ姉から、ミレミランさんに切り替わった。

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