第2話 異世界女神様との出会い
一年前、宝石の知識と現物を確認するためにミネラルショーへ行った。ジュエリー前の宝石であるルースをたくさん買った帰り道で、急な目眩が起きた。目覚めると真っ白な空間にいた。
目が慣れてくると、真っ白の中にも濃淡があって清潔感のある部屋にいた。
「無事にこちらの世界へ来られたようです。意識は平気ですか」
目の前から声が聞こえてきて、いつの間にか人の姿があった。ダイヤモンドが輝いているみたいで、透明な人の形から光が溢れ出ていた。心温まる優しい光だった。
「あなたが私を連れてきたの? この場所は何処? あなたは誰なのかな」
「わたしが呼び寄せました。ここは
全ての質問に対して丁寧に答えてくれた。でも頭の中は混乱したままだったので、考えを整理するために疑問を投げかけた。
「私を連れてきた理由が知りたい。そもそも私はどのような状態なの?」
「世界を維持するために世界同士での循環が必要で、循環に一番適した人間が倉沢さんでした。今は精神のみの状態です」
他にもいくつか質問を投げかけると、女神様は丁寧に答えてくれた。
女神様の世界には魔法が存在していて、魔物や人間以外もいる。中世ヨーロッパのファンタジー世界に近いみたい。スキルという独特の考えがあって、技術や技能の高さを表現する指標だった。
元の世界に戻れないみたいだから、覚悟を決めるしかない。
「状況は分かったけれど私はどうなるの?」
「新たな姿でこちらの世界を楽しんでもらいます」
「今までの姿ではいけないの?」
素朴な疑問だった。
「元と同じ姿の肉体は復元できません。希望の年齢があれば叶えましょう」
「仕事ができるように、女神様の世界でいう成人年齢かな。若いほど嬉しい」
「十五歳の女性で再現します。姿は目覚めたときに確認してください」
元の世界では二十四歳だった。どのような感じで若返るのか、楽しみでもあり不安でもあった。
「女神様の世界での生活を楽しむだけで、魔王を倒すとかはないのよね」
「倉沢さんが来たことで、循環が始まっています。旅を楽しんでも趣味に徹しても構いません。ただ悪事を働けば相応の報いを受けるでしょう」
「悪さはしないよ。何でも平気なら宝石関連で楽しみたい。元の世界では宝石が大好きで、宝石の通販番組でMCをしていた。同じ仕事ができたら楽しい」
「似たような仕事はありませんが、必要なスキルを与えましょう」
スキルにも興味があった。道具や魔法を使えば、使用可能なスキルとランクが分かるみたいだから、あとで試してみたい。
「宝石関連のスキルもあるの?」
「宝石の取引や販売には、宝石鑑定スキルがあると便利でしょう。倉沢さんの知識レベルに合わせてランクBを与えます」
「それなりに宝石の知識があると思っているけれど、ランクBはどの程度なの?」
「一人前がランクDで一流がランクAとなります。その上はランクSのみです。ランクSは国宝と呼ばれています。倉沢さんの年齢でランクBは飛び抜けて優秀です」
元の年齢で考えても知識があるほうみたいで、純粋に嬉しかった。
「心置きなく宝石の仕事ができそう」
「会話ができる時間も残り僅かです。地上の出現場所は治安がよいシュンターリア王国が無難でしょう。森などに行かなければ、魔物に襲われる心配も少ないです。宝石取引も盛んな王都オシルドニーなら、倉沢さんも嬉しいはずです」
「安全で宝石を楽しめる場所よね。こちらからお願いしたいくらい」
地上へ出現したと同時に、魔物と遭遇したら怖かった。私には魔物や盗賊を倒す力はもっていないから、安全が一番だった。王都なら仕事も探しやすそう。
「最後に生活が困らない知識と必需品を渡します。一通りの会話が可能で読み書きは貴族並みです。必需品は起きたら確認してください。どうやら時間のようです」
目の前にいる女神様が透明になってきて、輝きも収まってきている。
「女神様、ありがとう。女神様の世界を楽しんでくる」
「わたしはいつも倉沢さんを見守っています」
女神様が姿を消した。一年前の出来事だった。
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