第19話

「ここ田M町付近で一番サービスいいんですよ」

 ゆうあが言うには休憩一回で各各に一つずつドリンクが付くのと、アメニティに関して見てもここまで揃っているところはなかなかないのだという。

 小野からしてみれば別段何の変哲のないホテルの一室のように見えたが、これよりもひどい場所はいくらでもあることも何となくは想像ができた。

 小野はカバーのかかった張りのあるソファに腰かけた。

「そしたらワンドリンク頼みますか」

 小野はオーバーアックになってそう頼んだ。もう身振り手振りがどこかの楽団の指揮者のように激しくなっていた。小野にはゆうあが少し可笑しくなっているのが見える。変な人を見ているというよりは、面白い人だと思っているのだろう。眠気も限界が来れば酔っ払いみたいなものかもしれない。

「ジントニックで」

「あ、飲む感じですね」

「そういうのじゃないんだ?」

「わたしミルクティで——」

「なんかこどもっぽいなぁ」

「なんでよ」

 運ばれた飲み物を二人で飲みながら小野は彼女に少し訪ねた。

「こういうサイトでくる女の人って業者まがいの人が多いじゃない? 実際そういう業者っているの?」

「わたしは個人でやってるからわからないけど、そんな業者があるんですかね?」

「連絡よこすのに来ないとかよくあるよ」

「こない?」

「メッセージのために課金させるためのサクラだと思うけど」

「ふうん」

 ゆうあ自身はもともと接客をしていたようで、こういったウェブを使うようになったのは接客の仕事を辞めてからなのだという。

「今仕事は何してるんですか?」

「わたし、マッサージしてますよ。——今度きます?」

「遠慮しておくよ――。こういうところだけにしたいし」

 小野はなるほどと思っていた。個人でやる気になったのはどういういきさつかはわからないが、2で即決するくらいなのだから、身体が使えるうちに何でもやっておこうという感じだろう。

 飲み物を飲み終えたところで小野はシャワーを浴びることにした。

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