第13話

 シャワーを浴び終わると、部屋で彼女はすでにバスタオルを巻いて裸になっていた。

「そこ、寝てください」

 小野は言われるがままベッドに横になった。腰に巻いたバスタオルをとって、娘に陰部を露にすると、娘はそれを握った。

 小野は目をつむった。けれどもすぐにその気を失くした。——自分は何をしているのだろうと思っていた。

「蛭さん、大きくなりませんか?」

 しばらくしてから彼女がそう言った。小野はどうだろう? と返し、彼女は一生懸命手を動かすが、あまりにも下手だったので、小野は仕様もなくなった。

「ごめん。今日は気分がノラなかったかも」

 すると突然彼女は緊張を切らしたのか、気安い感じにこう言い放った。

「——えー、今日したかったのに」と。

 小野はそういうこともあるのだろうかと思いながら、ちょっとした疑問を聞いてみた。

「もういろんな人としてきているの?」

 彼女はしばらく黙った。小野は何か不可思議なことを訊いてしまったような気がしたが、あまり構わずに彼女を見るでもなく、何をするでもなく、ホテルの悪趣味な柄の壁を眺めながら、返事を待った。

「蛭さんはどうなんですか?——」

「僕は時々かな?」

「なんですかそれ——」

「いまなにしてるんだっけ?」

「何してるとは?」

「仕事」

「ああ、化粧品関係です」

「売ったりしてるんだ?」

「そういうこともしますし、試作品を試して意見したり?——」

「へぇ」

 そしてまた沈黙が訪れた。彼女はつまらなそうに俯きながらシーツのしわを伸ばしたり指でなぞったりして出来上がる痕跡を確かめていた。そして不意にまたこう言い放った。

「蛭さん本当にできないですか?——」

「んー、もう今日はお話ししよう。アナタはなんだかこう、お話がすきそうだし」

彼女は本当に残念に思ったのか、生まれたてからこういう性分なのか、肩を落とすとはこういうことなのだといわんばかりに本当に肩を落として残念な感情をリアクションで見せた。

小野は今どきこういうわかりやすくて、表現的な人物がいることに少しの珍しさと、彼女の良さを見出していた。

「話なんて何の話するんですか? わたしみたいにオカシナ人間の話をすればいいんですか?」

 小野は自らを何も知らない人に対してオカシイ人間と紹介する人を初めて目の当たりにしていた。

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