第120話 passionato~情熱的な(20)
シェーンベルグには
まだ『展覧会の絵』しか聴かせてないのに
そのリストアップされた曲は自分が得意な曲ばかりだった。
ショパンのノクターンやベートーヴェンのピアノソナタ、ラヴェル・・
そして
本選の決勝で行われるピアノコンチェルトは『ラフマニノフ第2番』
真尋はチラっとシェーンベルグを見た。
このジイさん・・エスパーか???
予選は1次と2次でそれぞれ2曲と3曲を弾く。
それに通ったら本選で3曲。
そして決勝でピアノ協奏曲を1曲だった。
それが
見事にバランスよく配置されている。
なんじゃ、このジイさんは・・
彼を見るとパンをむしゃむしゃと食べている。
仙人??
とにかく不思議な老人だった。
大体の曲は一度は弾いたことがあったので、特に戸惑うことはなかったが
ベートーヴェンの『月光』だけは弾いたことがなかった。
前半の叙情的な箇所と対比するように第3楽章の激しさ。
「もうぜんっぜんなってないな、」
シェーンベルグはそう言って突き放す。
くっそ~~~
曲の仕上げに時間のかかる彼にとっては新しい曲をモノにするのにただ労力だけを費やした。
そしてレッスンが終わると徐に真尋の前にチケットを手渡した。
「・・??」
「今日。 ポーランドのシンスキーのピアノコンサートが市内であるから。 行って来い。」
もう命令口調だった。
人のピアノなんか聞いてる場合じゃねーんだよ・・
そう思うのだが、何故だかいつの間にかシェーンベルグの言うことを素直に聞くようになっていた。
このように何かと言うと彼は歌劇やクラシックのコンサートのチケットを渡してきて見に行くように言う。
最初は渋々行っていた。
正直、あまり他人の演奏に興味がなくて
今までも特にコンサートに行ったりなんかしなかった。
しかし。
ポーランドのシンスキーの演奏は素晴らしく。
魔法のように動くその指や
深い深い旋律。
パンフレットには彼の華麗なる経歴が連なっていた。
ショパン国際コンクール優勝の他、名だたるコンサートで軒並み優勝をさらうようなピアニストだった。
やっぱ。
コンクールで優勝するヤツって・・すげえんだ。
おれ
今まですんげえ小さい世界の中にいたんだ・・
真尋は今までの自分の考えを一掃してしまうほど
その音楽に圧倒された。
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