第11話 話し合い
其の日の夕方になって主の部屋が叩かれた。
「すこし、話がありますわ」
「ああ。どうぞ。……リルフ、どうしたのだその格好は!」
「お姐様たちに手伝っていただきましたの」
父親が驚くのも無理はない。
けばくて怖いと思っていたのは装飾品によるものだった。
痛んだ髪は時間が必要だが化粧などはリリィのものを借りればいいだけのことだ。
「さて、姉妹より大変興味深いことを聞いたのですが確認させてもらってもよろしいでしょうか?」
「ああ。なにがどうしたのかね」
「ご自分で分かってらっしゃると思っておりましたがそうでもないようですわね」
やたらと丁寧な口調でリリィが問い掛ける。
「どんなに強気に出たところでお前は操り人形だ。これからもわたしに尽くせ!」
「バカな人間もいたもんだな」
怒気を十分に感じさせる低い声を発した後に女の纏う空気が変わった。
「ソワカ!」
右手を主の額に翳しそう一言いうだけで彼は眼を剥いて倒れてしまった。
重いおとがしても彼に駆け寄る者は一人もいなかった。
「お父様はどうなったの?」
やっと口を開いたリルフは恐怖からか間に打を浮かべていた。
「大丈夫だぜ。これで父さんは綺麗な心を持ったろうぜ」
「本当ですか?」
リルフが心配そうに父を見ると数秒して父親は苦しそうにうめいた。
「リルフ、リリィ。本当にすまない事をした。
多妻制が認められていないこの国で取り返しのつかないことだ。
だけどきいてくれ」
一人訳知り顔の男がいう。
「この姉妹の血縁関係があるってやつのことか」
「そうだ。リリィからみて叔父の息子の子供がリルフの母だ」
つまり異母兄弟でも少し特殊な部類に入る。
「ま、それを聞いてもこれまでがこれまでだから許せるはずはないけどな」
☆☆☆
その後本当に悪だくみをする知恵がどこかへ行ってしまったらしくニコニコと笑みをたやさない。
「褒美を与えたいのだがなにがいいか?」
「お願いしてもよろしゅうございましょうか?」
構わない、金でも牛でもなんでもやる。いうがいい」
「ありがたくおもいます」
「では2頭の馬を頂戴出来れば他には何も望みません」
「よし。馬だな。至急用意させよう」
主は近くの使用人を呼んで指示をだしているのだろう。
「明日の朝には用意できるそうだ。最高の俊馬を用意しよう」
あっさりと人数分の馬を与えてくれることになった。
馬は育てるのに時間がかかるためにいまだに高価な移動手段である。
「これで早くつける。本当にたすかるわ」
「あの、お父様からもう一つ贈り物があるのです」
遠慮がちに姉妹は切り出した。
「迷惑でしたら言って下さいね」
リリィのは切れの悪い言葉に首をかしげつつも一行は案内されるままに屋敷を進んで行った。
☆☆☆
「こちらでございますわ」
姉妹が部屋の扉を開けるとそこは別世界だった。
床は金が敷き詰められていて輝いている。壁には見事なジュエリーが展示するように掛けられていた。
「すごいわ。これは。私、この部屋に入りたくないわ。汚してしまったら申し訳ないわ」
「たいていの方はそう言ってはいるのを嫌がりますわ」
リリィは予想の範囲内のように頷いた。
「どうですかな。褒賞と言ってはつまらないものなんですが」
「これはどういった経緯で此処に飾られているのですか?」
「ここにあるのは亡き妻たちが集めていた一部です。ここにあるのは本人たちも買ったはいいのですが、一度も身につけたことのない代物でして。そろそろ売ろうと思っていたものです。旅の路銀にでもあてて下され」
「でも、これは」
「だから言ったではありませんか。皆さんが困っています」
「そうかの?私は客をもてなすには一番の場所だとおもうがな」
「確かに貴族同士ならいいんでしょうけど」
女がためらうのも無理はない。
運べるようなネックレスや指輪などではなく、
とにかくジュエリーをつなげたは織物やサイズの大きいティエラ。
「これなんかどう見ても機能性はないぜ」
おそるおそる部屋に入った男が示したのは靴だった。
足の裏にダイヤモンド。表にはエメラルド。
こんなものは居ていたら盗賊に襲われそうである。
「じゃあこの3点をもらうわ」
やっと中に入った女が選んだものはイヤリング、指輪、ネックレス。どれも赤色で部屋の中でも1番質素なものだ。
「気に言ったものがあってよかったですな。では今日は料理をご用意させて下され」
「え?」
これ以上質素な旅の基準から離れては、これからの旅が辛くなってしまうのではないかと女は顔を曇らせた。
「ご安心ください。料理は私が作ります。あまり脂っこくては胃が疲れてしまいますよね。体への負担が少ない料理にしますので」
リリィがこっそり耳打ちしてくれ、また案内されるままに食堂へと向かった。
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