【 ブルーの瞳 】
その後、サメやエイ、大小様々な色とりどりの魚たちが沢山泳ぐ大水槽を見に行った。神秘的なブルーの濃淡が、時折上から降り注ぐ光にキラキラと輝いてとても美しい。
水槽に手を添えてそれを見ている彼女の横顔をチラリと見た。唇をキュッと結んで口角は上がっているが、目にうっすらとブルーに映る涙が覗いた。
「あっ、少し疲れたよね? 向こうのベンチで座ろうか」
「うん……」
そう言って、僕の方を見て微笑みながら溢れ出しそうな涙を手で拭う。
大きな水槽の前でふたり一緒にベンチに座り、ふたり言葉を発せず、しばらく魚たちの泳ぐ姿をぼんやりと眺めていた。彼女の横顔が薄暗い中に、大水槽のブルーの光に揺れている。
相変わらず、彼女の唇は何かを我慢しているかのように固く結ばれているようだ。
どれくらい時間が経っただろう。一度、僕の方を向き、笑顔でゆっくりと瞼を閉じる彼女。目を開けると、その瞳は潤んでいた。
そして、顔が急に寂し気な表情に変わると、震えながら結ばれていた唇が遂に開いた。
「うぅぅ……」
「ど、どうしたの? ミライ……」
突然、両手で顔を覆い、泣き出す彼女。
どうして急に声を出して泣いてしまったのか、僕には全く分からない。
「な、何か僕、悪いことしちゃったかな……?」
「ううん……」
そう言いながら、彼女は首を横に2回振った。
髪が大きく揺れた後、小刻みに震えているよう。
しばらくすると、彼女は決心したかのように一度涙を手で拭い、僕にその理由を語り出した。
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