58.マニアックなアイテム
月神の酒盃は少しくすんだ金属製の盃だった。
綺麗な装飾がされているわけでもなく、ピカピカ光っているわけでもない。
リサイクルショップに売っても地金の金額でしか買い取ってもらえなさそうな古ぼけた普通の盃だ。
今は日付が変わったばかりの深夜なのでちょうどいいと思い、私はベランダに出て盃を掲げてみた。
今日は晴天なので綺麗な月が出ている。
ひろしの世界のお月さまよりも少しだけ大きく見えるその衛星からは、しっとりと柔らかい光が降り注いでいた。
月の光といっても本当はその向こう側にあるはずの太陽の光だというのはひろしの知識で知っているのだけど、そういう野暮なことを言うのはこの綺麗な空に失礼な気がした。
月の光を浴びた盃からはゆっくりと透明な液体が湧き出す。
これがソーマか。
説明を見るに完全に回復薬の上位互換なのだが。
あれだけ大事にとっておいた中級回復薬さんが空気じゃないか。
どうしてくれるんだこれ。
私は盃に口をつけてその透明な液体を一気に飲み干してやった。
口の中には角のないまろやかなアルコールの熱と穀物の旨味が広がる。
「美味しいお酒……」
完全にひろしの国のお酒、日本酒の味だった。
11歳児が飲んでいいものではない。
しかしこれは後を引く味。
私はすでに再び満杯になっていたソーマをもう一度口に含んだ。
やはり、美味しい。
完全に味でも回復薬を凌駕している。
「中級回復薬さん、ごめん。私は飲むならこっちがいい」
こうして中級回復薬さんはお蔵入りが決まった。
回復薬としての性能でも比べ物にならないし、月が破壊でもされない限りは無限に生み出せるソーマさんに最初から敵うわけはなかったのだ。
さて、気を取り直してガチャを回す。
もう一度さっきの興奮と脳汁を味わいたくてユキトにまた一緒に回してもらったが、同じ奇跡が2度起きることはなかった。
というか途中でユキトが飽きて眠ってしまったために一人孤独な作業となった。
結果は1個確定のAランクが出た以外はすべてCランクだった。
まあ最初のSにすべての運気を吸い取られたのだろうな。
なにせすべての怪我や病を治せるエリクサーみたいなものをほぼ無限に生み出すことのできるアイテムだ。
また知られたら戦争が起きそうなアイテムが増えてしまったな。
今更かもしれないけど。
Sランク
・月神の酒盃
Aランク
・女児用ミニスカサンタコスチューム(慣性制御・空気抵抗軽減機能付き)
Bランク
・なし
Cランク
・ブリしゃぶセット10人前
・みかん20キロ
・ユニコーンの睾丸
・はちみつレモンのど飴100キロ
・マーメイドの貝殻ブラジャー(未洗濯)
・キャッチャーミット
・学園のマドンナの体操着(未洗濯)
・汗と想いの染み込んだ竹刀
・淫乱教師の秘密のDVD(240分)
~以下略~
今回はなかなかにマニアックな品が多い。
途中軽く学園編に入っているかのごとく学校関係の品が続く。
マーメイドのブラとマドンナの体操着はちゃんとクンカクンカしておきました。
マーメイドのブラは普通に磯臭かった。
海の中で暮らしてるんだから当然だった。
マドンナの体操着は汗と涙の匂いがした。
なぜだかエロい気分が吹き飛んだ。
たぶんあれが青春の匂いってやつなんだろうな。
DVDはもちろん全編飛ばさずに見た。
結構えぐい素人マニアックビデオだった。
教師の闇を知った。
今回Cランクの中にあまりにも私の琴線に触れるものが多すぎてAランクが後回しになってしまったが、これが一番わからんのだよ。
名 称:女児用ミニスカサンタコスチューム(慣性制御・空気抵抗軽減機能付き)
ランク:A
詳 細:慣性制御機能と空気抵抗軽減機能の付いた女児用ミニスカサンタコスチューム
まんまやないかい。
仕方がないのでカプセルを開けて実物を見てみる。
見た目はコーデュロイのような毛羽立った真っ赤な素材で作られた普通のミニスカサンタコスチュームだ。
クリスマスのケーキ屋さんでバイトの人が着ているようなものよりも、どちらかといえばキャバ嬢やガールズバーの店員が着ていそうな露出度高めのものに見える。
それのサイズが女児用だというのだからもはや何用途なのかわからない。
そういう用途で着せているのだったら相当罪深いコスチュームだと思うのだが、そこに妙な機能が2つほど付いているというのだから更にわからなくなる。
慣性制御機能と空気抵抗軽減機能、ひろしの世界では一般的にSFなんかで乗り物なんかに付いている機能だ。
慣性を制御することで急発進急停止をしても中に乗っている人に影響が出ないようになっており、空気抵抗を軽減することによってより速い速度を出すことが可能になる。
そんな機能が付いた服なんて、まるで空を飛ぶ幼女のためにあるみたいな服じゃないか。
これはどうにもニャンバスと同じ匂いがする。
もしかしたらニャンバス社がある世界には、幼女がミニスカサンタコスを着てニャンバスに跨って空を飛ぶような日常が繰り広げられているのかもしれない。
まあ私は今のニャンバスのスピードに満足しているのでよほどのことがない限りはこのコスは家で楽しむ用にさせてもらうけどな。
いつか音の壁を超えたくなったときなんかに本来の用途で着てみよう。
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