40.男らしいおカマ

 魔王城の隣の空き地におカマとエルフが野営するようになってから3日が経過した。

 大体午前中からお昼くらいにかけてあの2人はゴブリンキングの調査に向かう。

 その間私は普段通り森の中を槍を持って走ったり、湖で魚を狩ったりしている。

 お昼くらいになると2人が帰ってくるので一緒にご飯を食べ、それから私の訓練をしてくれる。


「それじゃあ今日の訓練を始めるわね。昨日はエリシアだったから今日の先生はアタシよ。頑張ってマッチョになりましょう」


「えぇ、マッチョはちょっと……」


 3日も一緒に過ごしていればそれなりに打ち解けるものだ。

 敬語も敬称も2人にやめてほしいと言われたのでやめた。

 ひろしの国では目上の人や初対面の人には敬称をつけて敬語で話すのが普通だったが、この国にはそんな文化はない。

 めちゃんこ稼いでる商人や王侯貴族などの権力者を相手にするときでもない限りは使わなくてもいいそうだ。

 2人はSランク冒険者なので使われる機会も多いけれど、なんか距離があるような気がして仲良くしたい人には使ってほしくはないという。

 なら私もちゃん付けではなく呼び捨てでいいと言ったら、それはできないと断られた。

 ちゃん付けのほうが可愛いからそう呼びたいらしい。

 好きにしろ。

 だがマッチョになるのは断る。

 一応私も女の子なので、筋肉の鎧を纏うのは抵抗があるのだ。

 まあ胸筋を鍛えるとおっぱいが大きくなるという説がひろしの国では有力だったので、少しならパンプアップしてもいいが。


「うん、アリアちゃんは魔力操作は完璧ね。魔力は魔法スキルを持っていない人でも色々なことができるのよ。こうして脳みそに魔力を流してリミッターを解除すれば身体強化になるし、身体の表面に纏えば魔勁術になるの」


「脳のリミッター?」


 ひろしの記憶を持つ私には脳のリミッターという言葉の意味はわかるが、まさかおカマからそんな言葉が出てくるとは思っていなかったので聞き返してしまった。

 おカマは私が言葉の意味を聞いているのかと思い説明してくれる。


「そう。人間の身体っていうのはね、この頭の中に詰まっている脳みそが動かしているのよ。でも、筋肉は10割の力を出すと負担が大きすぎて壊れてしまうの。アリアちゃんもいっぱい運動した次の日に筋肉が痛くなったりした経験はない?」


「ある」


「あれはいっぱい運動した結果筋肉がちょっとだけ壊れちゃって、それを治している状態なの。ちょっとだけなら治ったときに前よりもいい筋肉になるんだけど、いっぱい壊れちゃうとなかなか治らなくなっちゃうのよ。だから脳みそはそうならないように筋肉の力をセーブしているの」


「へー」


 これもひろしの世界では有名な話だ。

 火事場の馬鹿力などもこのリミッター外しが力の正体なのだとか。

 なんか脳自体もほとんど使われていなくて、使用率を数パーセント上げるだけで天才になれるとかESP能力が覚醒するとか色々な憶測が飛び交っていた。

 小周天を使うと身体能力が跳ね上がる現象も、当初はこの脳のリミッターが外れるためだと思ったくらいだ。

 しかし実際には小周天は気という謎の力で身体能力そのものを強化していた。

 まさか魔力を使った身体強化がそっちだとはな。

 確かに、気と魔力の性質の違いを考えれば理にかなっているのかもしれない。

 気は内向きの力で、魔力は外向きの力。

 ゲイルの言う身体強化の術は魔力を脳の外側から流してリミッターを解除している。

 おそらく気功術で分類するならば外気功に属する技なのだろう。

 外気功には魔力を使うというのがここ最近私がたどり着いた境地だ。


「そんなわけでねぇ、脳のリミッターを外すと筋肉がいつもよりも凄い力を発揮するのよ。筋肉を傷めちゃうから実際の戦闘の時にはそんなに強度を上げられないんだけど、この技が真価を発揮するのは訓練なの。身体強化を使って訓練をすると筋肉が凄いことになっちゃうのよ。ほら見てアタシの筋肉。これが長年身体強化で負荷をかけ続けた筋肉よ」


 そう言っておカマは脱ぎ始めた。

 まあ勝手にやらせておくか。

 しかし言うだけあっていい身体してるな。

 腹筋は当然バッキバキに割れているし、身体中にゴツゴツの筋肉が浮き出ている。

 ひろしの世界のボディビルダーという職業の人たちみたいに躍動感のある筋肉質な身体だ。

 ああ、下半身は脱がなくてもいいのに。

 さすがにパンツまでは脱がなかったが、薄いヒモパンには男性の象徴がもっこりと浮き出てしまっている。

 通常時でこの大きさとは、なんという大口径ロングバレルマグナムだ。

 私は男とセッ〇スするくらいならば死を選ぶが、おチ〇ポ様に興味が無いわけではない。

 今後のソロプレイの参考にさせていただこう。

 しかしまさかおカマのマグナムがこんなに立派だとはな。

 完全に男のア〇ルを破壊する形をしている。


「あら、アリアちゃんったら。アタシの筋肉に見惚れちゃったのかしら。アタシのおすすめはこのバックダブルバイセップスのポーズで浮き上がる……」


「あ、もう結構です」


 私が興味があるのはお前の股間だけであって、筋肉はどうでもいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る