30.小周天
兎のユキトをペット兼ボディガードとして雇い入れてから1か月ほどが経過した。
ユキトが毎日オークなどの強い魔物を狩ってきてくれるので魔物のお肉や素材になる皮、魔石がたくさん集まる。
オークの魔石は上位種じゃない普通の個体でも1個100MP以上になるのでポイントはゴブリンを狩っていた頃よりも早く貯まる。
最近ではかなり余裕ができてきたので一度魔王城を進化させた。
新しい魔王城は2階建てになり、1階層の広さも30畳ほどに拡張した。
1階は部屋を区切らず丸々30畳のリビングダイニングに、2階は6畳の部屋を4部屋作った。
2階の4部屋のうち1つを私の部屋に、1つをユキトの部屋にした。
今は寒いのでユキトと一緒に寝ても湯たんぽくらいにしか感じないが、これから暑くなればお互いに地獄となることだろう。
なのでユキトにも個室を作り、一緒に寝るのが辛くなる季節にはそこで眠ってもらうことにした。
私物なんかも置きたいだろうし、ペットといえどもプライベートな時間は必要だろう。
私も一人になって定期的に快楽に耐える訓練をしなければいけないしね。
残る2部屋は衣裳部屋と物置きとした。
私はカプセルに入れたものをよくわからない空間に入れておくガチャボックスというスキルを持っているが、あれは一度カプセルに入れなければ物を入れておくことができないスキルだ。
アイテムボックスのように瞬時にいくらでも入れておけるわけではない。
木箱に入れてまとめるなどすれば容量も増やせるのだが、そもそもすぐに使いそうにない物をガチャボックスに入れて常に持ち歩く意味もない。
今までに回したガチャ473回分のカプセルを全て整理した結果、そういったカプセルに入れておく必要のない物というものがかなり出たのだ。
そういう物はまとめて魔王城の物置きに入れておくようにすれば、かなりの数のカプセルを生鮮食品の保存などに使うことができる。
魔王城にも時間が停止する倉庫なんかを追加することができるのだが、それには兵器と同じくらい大量のMPが必要となる。
欲しいものだらけでMPがいくらあっても足りない現在、他で代用可能なものは後回しにせざるを得ないのだ。
和式のままだったトイレだって温水洗浄便座付きの洋式にしたかったし、布団が干しやすいように2階の各部屋にはベランダも作りたかった。
1階には大きなガラスサッシとウッドデッキを作りたかったし、各種フルーツの苗木を植えるための家庭菜園も欲しかった。
一つ一つはポイントがそれほどかからない改築だが、全て実行すると結構なポイントとなった。
ユキトが稼いできてくれるポイントを湯水のように使う私。
まるで浪費癖のある悪い妻みたいだ。
ちょっと今後は節約しようと思った。
「はぁ、今日は暖かいな」
魔王城は結界のオプション設定で雨をシャットアウトさせたりすることができるので、このウッドデッキは雨の日でもここに座って外を眺めたりトレーニングをしたりすることができる。
今日のような晴れた日は春先の冷たい風をシャットアウトしておけばポカポカとした日光だけを浴びることができて気持ちがいい。
ユキトは今日もご飯をモリモリと食べて元気に出かけて行った。
きっとまたオークを狩って帰ってきくるだろう。
私も負けていられない。
ペットに養われる女にはなりたくないのだ。
いつもの場所に肉を置き、ゴブリンを待ちながら気功術の練習をする。
私は魔法陣の勉強をすることで魔力というものを操作する感覚を知った。
ひろしの世界ではどうなのか知らないが、この感覚こそが気を練る上では重要なのではないかと私は思っている。
気と魔力は表裏一体、陰と陽のような存在な気がする。
魔力は私の身体の中で生まれ、外に出ていく力。
気は自然界に流れ、私の中に入ってくる力。
魔力が卵子だとしたら気は精子だ。
いや、この例えはちょっとやめておくか。
まあ魔力は自分が放出して使う力で、気は自然界から取り込んで使う力という感じだ。
気を自然界から取り込むのもまた魔力が必要だ。
なぜなら気はそのままでは人の身体には入ってこないから。
魔力で身体の中に誘引する必要がある。
気を練るために魔力が必要というのはこのためだ。
これが正解なのかはわからないが、私はこの方法でそこそこ気のようなものを身体の中に取り込んで練り込むことに成功している。
魔力をイソギンチャクの触手のように周囲に伸ばし、気を誘引して身体の中心に向かって巻き取るイメージでやると身体の中から溢れ出すようなエネルギーを感じるのだ。
おそらくこれが気なんだと思う。
この力を体内に留め、循環させることを小周天という。
最近になっていつの間にかできるようになっていたのだが、100日築基といって100日気功を続けると小周天に至るに足る気が充ちてくるというのが村田流気功術の教えだ。
結構サボったこともあるが確実に100日以上は鍛錬を続けているのでできるようになったのだろうと思っている。
この小周天ができれば気力が充ち、物凄い力が出て病気にも罹りにくいと本には書いてあった。
病気に罹りにくいのは本当なのかわからないけれど、物凄い力が出るというのは確かだ。
なにせ私のように非力な10才女児でも小周天を行いながらであれば30キロの米俵を持ち上げることができたのだから。
火事場の馬鹿力のように脳のリミッターを外しているのであれば危険な力だが、どうやらそうではないようで米俵を持ち上げた次の日にもその次の日にも筋肉痛がやってくることは無かった。
筋肉に過剰な負荷はかかっていなかったということになる。
おそらく気という謎のエネルギーによって身体能力が強化されたのだろう。
パワードスーツのような感じでアシストしてくれる力、それが気なのだ。
便利な力だ。
これがあれば大口径のライフルを撃っても反動に負けることはないかもしれない。
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