24.生きてた
ガチャでストレスは発散できたがバ〇ットM82を超える兵器を得ることはできなかった。
これによって当面の目標は魔物を狩って魔石を集め、MPを貯めて魔王城に兵器を追加することとなった。
とりあえず化け物2匹の魔石を頂いて目減りした分の足しとさせてもらおう。
私はほうきに跨り屋根から降り、倒れ伏す化け物共の亡骸に手を合わせた。
一応死なば皆仏というひろしの国の価値観をリスペクトしているのだ。
ひろしの国ではこの考えを頭空っぽで実行した結果死後も優劣をつけたがるような一部の人の反発を買ったりもしていたが、この考え方自体はかなり崇高だと思うのだ。
私は仲間に裏切られてジャイアントスイングで赤い彗星とされてしまった哀れなトカゲから解体していくことにした。
こいつは確かに何発も火球を結界にぶつけてきた憎い奴ではあるのだが、同時に仲間に切り捨てられてしまった可哀そうな奴でもある。
哀れみを込めて長めに拝み、胸のあたりにナイフを突き立てた。
Aランクアイテムのよく切れるナイフは対物ライフルでも貫けなかったトカゲの体表を容易く貫いた。
死にたてほやほやなのでビシャビシャと血が出てくる。
こうなることを予想しておもらしズボンを着替えなかったのだ。
トカゲが保菌している人間にとって有害なウィルスなどに感染してしまう可能性もあるのであまり生き物の血を浴びるのは衛生的によろしくないのだが、防護服なんかを作ってから作業するのも面倒だ。
防護服は今度作るとして、いざとなったら中級回復薬に頼ることにしよう。
私は血を浴びながらもトカゲの胸を切り進んだ。
当然だがトカゲの身体は人間と構造が違っていたのでどこに魔石があるのかわからない。
有用な素材にできる臓器があったらもったいないのだが、どうせ私にはわからないのですべて切り開かせてもらう。
やがて心臓っぽい臓器を発見し、そこからソフトボール大の魔石が出てきた。
「すごい、こんな魔石初めて見た」
トカゲの魔石はその大きさも透明度もゴブリンや魚の魔石とは全く異なっていた。
魔石はゴーレムの材料にもなるので大賢者ムラムラスの本にはその評価基準が書いてあった。
評価基準は2つ、それが大きさと透明度だ。
大きさは大体の場合魔物の身体の大きさに比例している。
身体が小さければ魔石は小さく、身体が大きければ魔石は大きくなる。
透明度はその魔物が体内に内包していた魔力の質によって変わる。
質の良い魔力ならばより透明度は高くなるというわけだ。
ゴブリンなどは身体も人間の子供くらいしかなく魔力の質も高くないので親指の先ほどの大きさをした透明度の低い魔石が取れる。
このトカゲは逆だ。
身体が大きく、魔力の質もよかったために大きくて透明度の高い魔石がとれたのだ。
まるで宝石のように輝く大きな魔石は持っている手が震えてしまいそうなほどに美しい。
透明な宝石といえば水晶やダイヤモンドだが、こんなに大きな自然石はそうそう無いだろう。
あったとしてもものすごい値段が付くに違いない。
この世界では魔石は宝石というよりもエネルギー源、ひろしの世界で言ったら原油のような存在だ。
しかしこんなに綺麗なんじゃあ宝石として使っている人もいるのではないだろうか。
私もちょっと魔王城に吸い込ませるのを躊躇してしまったほどだ。
まあやるけどな。
私は管理端末を取り出し、魔石を吸収させた。
増えたポイントは800ポイント。
今まで吸収させた魔石の中では断トツだが、やはり失ったポイントとは釣り合うものではない。
このトカゲが吐き出す火球1発で100ポイントくらいは減っていたので8発撃たれる前に倒せば釣り合った計算になるが、巨人もいたしそんなことは絶対に不可能だった。
やはり今のところこのレベルの魔物を狩ることには利益が無いな。
今のところ一番効率のいい魔石稼ぎは魚だ。
魚は透明度も大きさもゴブリンよりわずかに優れており、ポイントにしたら1個でゴブリンの10倍である10ポイント程度が手に入る。
1匹倒すためのコストは拳銃の弾2発から3発くらいなのでゴブリンを10匹倒すよりも効率がいい。
今回のガチャではさすがに12.7mm弾は出なかったものの、ひろしの世界で最もポピュラーな銃弾である9mm弾はそれなりの数が出た。
バンバン使って魚を狩ればすぐに失ったポイントを取り戻すことはできるだろうが、問題は拳銃本体がそんなにもつかどうかだ。
ガチャ運が悪いのか9mm弾を撃つための銃はグ〇ック17とベ〇ッタM92だけしか出ていない。
メンテナンスも欠かしていないし大事に使っているのだが、銃身というのは高速で撃ちだされる弾丸をライフリングに擦りつけるようにして回転を付けるものであり構造上どうしても全く摩耗しないということはあり得ない。
だましだまし使ってきたが、そろそろ銃身が限界だと思うのだ。
「何か対策が必要か。いっそのこと銃身を作ってみるか?」
錬成陣と変成陣を使えば不可能ではないはずだが、銃に使われている鋼材の配合比率などはひろしも知らなかった。
形だけ同じものを作ったとしても強度が足りなかったりしたら大怪我をすることになる。
私はどうするべきか考えながら巨人の解体に入ろうとしたが、背後でガラガラと瓦礫を崩すような音がして振り返る。
「え……」
『…………』
背後には巨人とトカゲが最初に戦っていたあの激つよ兎が血まみれで立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます