22.恐怖を忘れさせてくれるもの

 なんとかトカゲと巨人を倒すことができた。

 しかしトカゲに関してはほぼ仲間割れによる自滅だし、巨人も至近距離まであっちから近づいてくれたから始末することができたに過ぎない。

 改めて考えると私にはガチャのおかげで生活能力はあっても、戦闘能力は圧倒的に足りていないことに気が付いた。

 具体的には攻撃力が全く足りていない。

 今回も巨人やトカゲのの身体を貫通して1発で仕留めることのできる武器があればもっと早く消費ポイントも少なく終わっていたはずなのだ。

 だけど私の持っている攻撃手段ではあの怪物共を倒すには足りなかった。

 バ〇ットM82は昔は対戦車ライフルと呼ばれていたが、最近は対物ライフルと呼ばれているらしい。

 この化け物みたいなライフルは2キロ先まで飛び分厚い鉄板を貫通する強力な武器だが、現代の最新式戦車の装甲は貫くことはできないのだ。

 そんな武器ではわけのわからない力で満ちた異世界の怪物を相手にするには力不足で当然だ。

 ひろしの世界には魔物がいない。

 SNSあたりには魔物が住むと言われているし永田町には妖怪が出るようだが、それは比喩表現であって物理的な魔物はいないのだ。

 ひろしの世界の武器のほとんどは人に対して向けられるものだ。

 化け物を討伐するためのものではない。

 針を1本心臓に刺されただけで死んでしまう脆弱な人間を相手にするならば拳銃だってライフルだって有効だが、あんな化け物に向けるなら12.7mm弾だって豆鉄砲だろう。

 対物ライフルの弾でも貫通できない地肌を持つような化け物相手には、最低でもロケットランチャーあたりが欲しいところだ。

 ロケランは軍用ヘリや戦車を破壊するための武器で、携行可能な武器の中では最強レベルの破壊力を持っている。

 自衛隊が異世界で戦うラノベでもあれだけでドラゴンに痛打を与えていた。

 ドラゴンよりも格下であろう巨人やトカゲ相手なら十分に致命傷を与えることができるだろう。

 しかし当然ながら私はロケランを持っていないし、さすがのひろしでもロケランの作り方は知らなかった。

 というかロケランの作り方を知っている日本人というのはたぶん公安あたりにマークされていることだろう。

 いくら変成陣や錬成陣などを使えるといっても、ロケランのような強力な武器を自力で作るのは今のところ不可能だ。

 この魔王城にはポイントを使えば追加できる防衛設備や兵器もあるが、今はポイントがギリギリなので追加はできない。

 巨人とトカゲの魔石はさぞ大きくて質も高いのだろうが、それでも今回の戦闘が黒字になるほどではない。

 これまで私が狩ってきたゴブリンなどの弱い魔物は魔石がゴミクズレベルに低品質だったが、塵が積もって山となるくらいに毎日狩り続けていたのだ。

 その山を1回の戦闘であっという間に使い果たした今、とても魔王城を強化する余裕はない。

 そうなるとやはり武器を手に入れるにはガチャしかないのだが、現在のガチャポイントは600ポイントちょっとだ。

 ガチャスキルのレベルが上がり1日につき3ポイントのガチャポイントを得ることができるようになった今、あと4か月も我慢すれば1000ポイントが貯まりAランク1個以上確定の110連ガチャを引くことができるようになる。

 Bランクにバ〇ットよりも強力な武器があることを信じて11連ガチャを引くか、それとも110連ガチャが引けるようになるまで我慢するか迷う。

 今までの排出傾向を見るに、武器はBCランクに多いような気もする。

 だがよく切れるナイフという信じられない切れ味のナイフがAランクから出ていることから、Aランクでも武器として使えるアイテムが出る可能性はある。

 しかし110連ガチャではAランクアイテムが2個以上出る保証はない。

 対してBランク確定の11連ガチャならば現時点でも6回は回すことができ、当然Bランクアイテムも6個が確実に出ることを保証されているわけだ。

 数を選ぶか質を選ぶか、これは究極の選択だ。

 しばらく悩んだ結果、私は数を取った。

 Bランクのアイテムの中にもAランクのアイテムと遜色のないほどに良いアイテムもあるし、わずかだがAランクやSランクが自然排出する可能性もある。

 それに、とにかくガチャを回したい気分だったというのもある。

 でかい怪獣との戦闘は私にとって相当なストレスだったようだ。

 結界に守られているとわかっていても大木や火球をわんさかぶつけられる恐怖は私の膀胱を決壊させ、ズボンを濡らした。

 着替える間もなくずっとおもらしズボンのまま戦闘を余儀なくされた。

 それはまあいいが、めちゃくちゃ怖かったのは確かだ。

 今イケメンに肩を抱かれたらしっぽりヤられてしまうかもしれないというほどの恐怖だった。

 いややっぱりイケメンは無理。

 女顔のショタならワンチャンあるかもしれなかった。

 そんなわけで極度のストレスにさらされた私は現実を忘れさせてくれる快楽を求めているのだ。

 前回のガチャで脳汁がブシャーとなった記憶がフラッシュバックして、私はガチャを我慢できなくなってしまった。

 ギャンブル中毒の人がふとした瞬間にパチンコ屋さんや競馬場に行ってしまうのと同じ原理だ。

 私のガチャにはお金が必要ないので別に依存しても連続ガチャが引けないくらいの弊害しかないのが唯一の救いだ。

 ガチャがあってよかった。

 人は何かに依存しなければ心の安定を保つことのできない弱い生き物だ。

 特に意思の弱い私などはガチャが無かったらギャンブルやお酒や麻薬、もしくはチ〇ポに依存してしまっていたかもしれない。

 何に依存しても待つのは破滅だけだ。

 女に生まれた以上は、エロゲのバットエンドのような終わり方はしたくないものだ。

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