閑話 マティナ、設置魔法を教わる


「先生。」


「なんだ?」


「二人には色々教えたのに、私には教えてくれないんですか?」


「え?あっ、いやそういう訳じゃなくてだな……。」


「なら、私にも何か教えてくれますよね?」


「あー、まぁ良いんだけどさ。……彼奴に放り投げる気だったんだけどなぁ……。」


「……?何か言いました?」


「いや、何でもない。何を教えて欲しいんだ?」


「自分と同じ程度の実力の人と戦った時、どうしても硬直状態が出来ますよね?」


「出来るね。」


「その時の対処法と言うか、状況を一変させられるようなものを知りたいんです。」


「……なるほど。」


「出来ますか?」


「できるできる。……じゃ、やろっか。」


「やるって、なにを?」


「立ち会い。」


「私と先生じゃ、実力差がありすぎると思うんですけど……。」


「大丈夫大丈夫。ほら、構えな。」


「……分かりました。」


「じゃ、来な。」


「ふっ!」


キンっ!キンっ!


攻めるマティナ。ローワンは、後ろに下がりつつ攻撃を防ぐ。


1メートルほどそのまま下がり、突然ローワンが止まり鍔迫り合いになる。


すると…………


「……後ろっ!?」


マティナの背後から迫る火球。


同時に、ローワンによる剣戟。


火球により、体勢が崩れたマティナは刀を弾かれ、喉元に剣を突きつけられる。


「……参りました。」


「はい、おつかれさん。」





~休憩後~


「さっきの、どうやったんですか?」


「やってる事はそこまで難しいことじゃない。……魔道具を知ってるか?」


「武器とかに、魔法陣を刻んで魔力を流すだけで魔法を発動できる物ですよね?」


「そうだ。俺がやったのは、あれの簡易版だな。」


「……魔法陣を描いたんですか?試合中に?」


「正解。訓練所は地面が土だからやりやすいぞ?」


「いや、普通そんな事出来ませんよ。木刀ならまだしも、真剣を使っての立ち会い中に、地面に魔法陣を刻むとか、人間業じゃない。」


「それが、そうでも無いんだなぁ。」


「え?」


は、魔法を使う時の要領で魔力で魔法陣を刻むんだよ。」


「魔力で?」


「そうだ。魔法発動前の、頭に浮かんだ魔法陣を魔力でそのまま地面に転写する。慣れるまでは大変だが、慣れれば数秒で出来る。」


「はぁ……。」


「ついでに、魔法陣を刻んだ後に硬直状態を自分から作ってもいい。硬直状態なら、相手はどうしても前方に注意を割くからな。後ろからの攻撃に気付き辛い。」


「なる、ほど。」


「ま、練習がいるって点は他のふたりと一緒だ。気長にやんな。」


「はい。」



「今日はありがとうございました。」


「気にすんな。何時かは教えるつもりだったんだ。……彼奴が。」


「あいつ?」


「あー、いや何でもない。」


「そうですか?……今日はありがとうございました。」


「おう。気ぃつけて帰れよ。」

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