閑話 ミュリネ、曲射を教わる
「ししょー、魔法の軌道がぶれるんだけど〜。」
「あ?……あぁ、そりゃ魔力操作がつたねぇからだな。」
「えーッ、でも結構複雑な動きもさせれるようになったんだよ?」
「お前なぁ……高々一月程度の訓練で、精密な操作とか無理に決まってんじゃん。」
「うー、じゃあどうすればいいのさぁ?」
「どうするも何も、地道に魔力操作を上達させるしかねぇよ。あのブレは、魔力が均一に流れてねぇから起きるもんだ。しっかり均一に魔力を流してやれば、ブレは起こらない。」
「そっかぁ、まだまだなんだね、あたし。」
「むしろ、1ヶ月程度でそこまで来てるのがおかしいんだよ。……俺がそのレベルになるのにどんだけかかったと思ってんだ。」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、何も。……ま、約束だしな。ミュリネ、着いてこい。」
~射撃場~
「この前、Bランク以上の必須技術を教えるって言ったよな。」
「お、教えてくれるのかっ?」
「まぁ、約束だし、教えることには教えるけど。まだ、使えねぇと思うぞ?」
「いいっ!大丈夫、教えて!」
「わーお、目ギンギンじゃん。幼女の顔じゃねぇよ、これ。」
「はーやーくー!」
「へーへー、すぐ教えますよ。…………さっき魔力が均一に流せてないから魔法の軌道がブレるって言ったろ?つまり、魔法陣に流す魔力の量によって威力は変わるってことが分かる。今から教えるのは、それの活用だ。」
「あのブレの?」
「そうだ。例えば、そうだな。簡単なもので【火球】にしとこうか。火球は、真っ直ぐ飛んでいく火の玉を作る魔法だ。」
「あたしもよく使うな。」
「で、この魔法陣に魔力を流す時に、例えば右側に魔力を多めに流すと……、」
魔力を右に偏らせ、【火球】を発動。
火球は、決められた命令の元発動し、飛ぶ。
そして……
「…………っっっ!?左に……曲がった?」
「その通り。右側の威力が強まり、中心を軸に回転が生じることで左へ
「で、でも、魔力は均一に流さないと魔法が発動しないだろ!?」
「ミュリネの言う通り、本来なら魔力のバラツキが大きければ魔法は発動しない。」
「ならっ……!」
「だが、魔法陣の許容最低値以上の魔力を流せていたならば、魔法は発動する。」
「ど、どういうこと?」
「魔法の発動の失敗には、2つの種類がある。魔法陣には魔力の許容値があり、魔力を流し込み過ぎれば魔法陣は自壊し、魔法発動には至らない。これは、ほぼ全ての人間が知っている周知の事実だ。
……そして、もう一つ。魔力の量が足りない時にも魔法は発動しない。これは、魔法を発動するために必要な魔力が込められていないから。……とよく誤解されているが、実際は違う。」
「え?」
「正しくは、魔力の絶対量が足りていないのではなく、魔法陣の各部位に必要な魔力量が足りていないということだ。魔法陣の線一つ一つに、必要最低魔力量が設定されていて、それが足りていないから魔法が発動しないということだ。つまり、各部位に必要最低魔力量を確保し、その上で魔力を片側に集めることで魔法の曲射ができるということだ。」
「す、すごい。…………あたしにも、できるかな?」
「さぁな。ミュリネの努力次第じゃねぇの?才能はあるんだし。」
「……そっか、そっか……。」
「ししょー、今日はありがとう。」
「気にすんな。元から教える予定だったもんだ。」
「そか。じゃ、またあした。」
「おー、また明日な。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます