閑話 エルシャ、弓を教わる


とある日の鍛錬後


「エルシャ、そろそろ弓やるか?」


「?……!はいっ!」


「じゃ、ついてこい。」








~射撃場~


「ここは、遠距離攻撃の練習の場だ。これからよく使うから覚えとけ。」


「は、はいっ。」


「……弓は、魔法と比べて殺傷能力は低い。その変わり、物体故に当たれば行動を阻害できるのは利点だな。また、その静音性と隠密性も、大きな利点のひとつだろう。魔法のように光を放たず、魔法のように音を出さない。そして、最大の利点は魔法のような適性がないこと。誰でも、修練を積めば扱えるというのは大きな魅力だろう。」


「な、なるほど。」


「弓は、身につけるまでにかなりの時間がかかる。だから、いくらエルシャでも、数ヶ月は覚悟しておいた方がいい。……それでも、やるか?」


「……もちろんです。二人におんぶにだっこは嫌ですもん。」


「……なら、早く覚えなきゃな。」


「は、はい。」


「じゃ、これ使え。」


「これは?」


「ロングボウと呼ばれる、まぁ弓の一種だな。飛距離は350~400m、有効射程は、150~200m程度。……だが、使い手によってはこれを大きく超えることもある。身体強化を使えば、引ける弦の硬さも変わるし。あくまで、目安として考えといてくれ。」


「……400……200……。」


「身長的に取り回しは難しいだろうが、ま、そこら辺は慣れろ。」


「わ……かりました。」


「テキトーに構えてみろ。今日は正しい構えと感覚掴んで帰れば上出来だ。」





「半身になって、足は肩幅程度に開け。……後数cm後ろ足を下げてみろ。」



「肩の力は抜いて、前を見ろ。姿勢を崩した時のだらりとした感覚を再現するイメージあるで。」



「持ち方はなんでもいい。持ちやすいように持て。利き手は右だよな?……左手はもう少し下の方が持ちやすいだろ。引く時も、どっちでもいいから、しっくりくる持ち方にしとけ。」



「左手は、視線と平行になるように。右手の引きも同じだ。」





「ま、こんなもんか。」


「あ……ありがとう……ございました……。」


「おう、お疲れさん。……今日は基本の形を覚えてもらったが、戦闘中にそこまで役には立たん。これからの練習は、形の練習と動きながら打つ練習を1日おきにやっていく。動きながらでも、正確に打てるように、形を体に覚え込ませるようにな。」


「はい。明日もよろしくお願いします。」


「おう、じゃ解散な。二人も向こうで待ってるだろ。3人で帰んな。」


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