第7話 追放白魔道士、武器を作る①
「さて、二人も納得したみたいだし、まずは武器を決めようか。」
そう切り出すと、エルシャとミュリネは首を捻って悩んでいる様子だが、どうやら、マティナはもう決めているらしい。
「マティナは何にするんだ?」
「片手剣にしようと思ってます。」
オーソドックスだが、悪くない。マティナのスタイルに合わせる武器としては、かなりいい選択だろう。
「理由は?」
「大きな武器は扱えませんし、避けることを主体にしているので軽い方が良いです。でも、短剣なんかだと威力が弱すぎて、魔物の注意を引けません。だから、片手剣がいいと思いました。片手が空いていれば、盾を持つことも出来ますし。」
……めっちゃちゃんと考えてんだけど。この子教育係とかいらなくない?10歳だぜ?もっと、なんかこう、ぶっぱなしてやるぜヒャッハーみたいなのでもいいんだよ?おじさん、そんなでもちゃんと教えるよ?
「ん、かなりよく考えているな。自分の中でそれだけイメージあるが固まっているなら、俺から言うことは無い。」
言いながら、鉄の延べ棒を取り出し、一つの魔法を発動する。
すると、延べ棒が動き出し、片手出扱える武器に形を変えていく。
「取り敢えずはこんなもんか。手に取って確かめてみろ。」
俺の前には、オーソドックスな片手剣から、エストックやレイピア等の細剣類、ショートソードにロングソード、片手半剣、迷い人が伝えたとされる刀等、片手で扱うことの出来る剣類がズラリと並ぶ。
「……え?今……何しました?……て言うか、どこから鉄出したんですか……?」
何やら困惑している様子のマティナ。エルシャやミュリネも目を瞬かせている。
「何って、錬金術を使っただけだ。鉄は、無魔法の収納から出した。そんなことより、何使うか触って選べ。そこらの武器屋よりは、質は良いはずだ。」
鉄はそこそこの純度の物を使った上に、錬金術の練度も、パーティーにいた時から使わされまくっていたから、それなりに高い。
俺の戦闘スタイル的にも、錬金術は乱用するしな。
まぁ、この街の職人よりは良いものを作れているはずだ。
最高級の物は、専門の職人に頼んだ方がいいが……。
自分の中で整理が着いたのか、マティナは武器を振り始めた。
「……大きすぎて振りづらい、これは駄目。こっちは、振り安さはあるけど攻撃を逸らしたりは難しそうね。……これは……。こっちは……。これも……。」
一つ一つをしっかりと振り、吟味しているマティナ。戦闘スタイルも決まっている分、求めるものがはっきりしているから、武器選びにはそこまで時間をかけないで済むだろう。
問題は……
「ん〜、何がいいんだろう?」
「後衛だし、サブだから小さいのの方がいいよね?」
この2人か。
そこまで明確なビジョンがある訳でもないし、武器選びに時間がかかるのも当然か。
「あまり大きいものは体力を消耗するし、重い武器も万が一に備えて持つには負担が大きい。後衛が持つのは基本は短剣か杖かだが、二人はどうする?」
待っていても決まりそうにないので、話に入る。
「ん〜、その二つだと短剣かな〜。あたしは軽い方が避けやすいし。そっちのが時間も稼げるでしょ?」
ミュリネはミュリネで、ある程度は考えていたらしい。
確かにミュリネの場合、運動能力は低くない、むしろ高いので、時間を稼ぐには軽く小さい短剣の方が適しているのだろう。
先程の様に、錬金術を発動し、短剣を作る。
ナイフにダガー、ククリナイフにマンゴーシュ、ソードブレイカー等、一部メインにするにはおかしなものもあるが、一応作っておく。
何がミュリネの琴線に触れるか分からないしな。うん、仕方ない。決して、俺の趣味ではない。……ないからな?
「で、エルシャは何をそんなに迷っているんだ?」
ミュリネの武器を作った後も、悩み続けているエルシャに問いかける。
すると、エルシャは何かを決意したような表情でこちらを見上げてきた。
「自衛の近接武器以外に、弓を教えて貰ってもいいですか?」
……弓ねぇ。複数の武器の習熟ですら難しいのに、弓ってセンスもいるからね。振り回しとけば、そこそこの脅威になる近接武器と違って……。
……近接武器はアホでも使えるとか言いてぇのか?そうです、その通りです。
「なんで、弓を?」
「私は白魔術師なので、回復はできても攻撃ができません。数少ない攻撃魔法を使えば、いざと言う時の回復手段が限られるようになりますし。そうなると、私は回復以外では何の役にも立たず、2人が戦っている間、何もすることができません。でも、私は運動能力が高い訳では無いし、近接戦は向いてないです。だから、弓を使えれば、回復以外でも戦闘に参加できると思ったんです。」
マティナの時も思ったけど、この子らほんとに10歳なの?俺がおかしいの?まだ戦闘したことねぇのに、なんでそこまで気が回んの?
ある程度、近接武器と魔法の習熟が進んだ頃に俺から言う予定だったんだけどなぁ……。
生徒が優秀すぎて、おじさん辛いよ。
今日も煙草が上手い……。(遠い目)
「……近接武器と魔法の習熟だけでも、かなりの時間がかかる。それに加えて弓迄やるとなると、かなりのハードスケジュールになる。着いてこれなければ、二人におんぶに抱っこの状態になってしまうかもしれない。それでも……やるかい?」
中途半端な気持ちでやるには余りに大きな選択だ。脅すようにはなるが、ここで諦めるようなら続きはしない。
心を折るぐらいの気持ちで、エルシャを威圧する。
「やります!やらないと、二人のパーティーメンバーだって、胸を張って言えないような気がするから。ここで諦めると、公開する気がするから。だから、やります。」
「……。」
俺は無言で、錬金術を発動させる。
ミュリネと同じように短剣を作り、それを見たエルシャは絶望したような表情になる。
「……先ずは、近接武器からだ。ある程度使えるようになったら、弓も教えてやる。二人よりも、厳しくやらねぇと追いつかねぇから、死ぬ気で着いてこい。」
そう言って煙草をふかす俺に、エルシャは涙を堪えながらも、精一杯声を張り上げた。
「はいっ!!」
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