第6話 追放白魔道士、少女パーティーに道を示す


エルシャの誤解も解けたところで、2人が起き上がってくる。


「ん……あっ!どうなった!?」


「うっ……うう……。」


目を覚ました瞬間、結果を確認しようとするミュリネと、まだ頭が回っていないのかボーッとしているマティナ。


「エルシャは1分と少し、ミュリネは2分、マティナは3分と少しってとこだな。」


俺はそれぞれの結果を告げる。


「うぅ……頑張ります……。」


「くぁー、2分かァ!次はもっと行くからな!」


「……5分には、届かなかったわね。」


マティナがを言っている。


「そりゃそうだろ。端からクリアさせる気なんてねぇんだから。」


俺がそう言うと、3人とも驚いていた。


「ええっ!?」


「そうだったのか!?」


「……そう……なのね。」


気づいていないようなので、一つ一つ説明していく。


「ステータスを一切鍛えていない十歳児が、ゴーレムから5分も逃げ切れるわけねぇだろ。ありゃ、お前らの動きの癖とか、今の限界を見るためのもんだよ。クリア出来ねぇようにタイムも設定したしな。」


「そう……だったんですね。」


「なんだよ、それならそう言えよ。」


「……ん。」


趣旨を伝えたところで、反省会だ。


1人ずつ行こうかね。


「まずはエルシャ。お前は攻撃に過剰にビビりすぎだ。痛いのは誰だって嫌だし、自分より大きい相手の攻撃は確かに怖いもんだ。だが、攻撃に対して過剰に反応してたら、余計に体力を消耗するだけだ。冒険者やってれば、あれ以上に大きい相手との戦闘もざらだからな。今のうちから慣らしとけ。」


「は、はいっ!」


「良い返事だ。……攻撃から目を逸らしていなかったし、ビビりながらも、お前は凌げていた。攻撃の恐怖に慣れれば、お前はちゃんと強くなれる。」


「ありがとうございます!」


エルシャに、反省点をおしえ、最後に自信を持たせるように褒めるところは褒める。それが、いい教育者としての在り方だ。知らんけど。


「次にミュリネ。お前は無駄な動きが多い。攻撃を避けるのに派手な動き要らない。力を抜いて、最小限の労力で避けるのがベストだ。そもそも、お前もエルシャも、後衛志望だ。前衛が来るまでの間を持たせることを考えるべきだ。もっと、体力を節約する術を身につけろ。」


「はい!」


「……避け方には問題があったが、お前には躱すこと自体には余裕があった。あれならもっと強い相手でも凌げるはずだ。前衛が間に合わない時、その力は役に立つ。誇っていいぞ。」


「!……へへ。」


ミュリネにもエルシャと同様、反省点を伝え褒めるところは褒めておく。


厳しい鍛錬で嫌われるのはいいが、出来ればこいつらとはいい関係を築きたいしな。……その方が面倒が少ないし。


「最後、マティナ。前衛としての才能はピカイチだな。避け方も上手かったし、よく相手を見ていた。恐らくは、動きの予備動作が見えていたんだろう。隙も少なく、体力の消耗も抑えれていた。集中を切らすこともなかったな。その観察眼と集中力は今後お前の武器になるだろう。」


「……はい。」


「……課題は体力の少なさだ。これは三人ともに言えるがな。体は冒険者の資本だ。どれだけ優れた力を持っていようが、すぐにガス欠になるような奴は冒険者として大成できない。今後は、体力をつけていこうか。」


「ありがとう、ございます。」


マティナは、登録したての初心者ではあるが、その技術自体は非常に高い。あとは、年齢故の体力の少なさを克服することが出来れば、良い冒険者になれるだろう。


……将来が怖いねぇ。


「疲れているだろうし、鍛錬はここまでにして、今後ほ方針について話そうか。」


俺はそう切り出すと、三人の顔を見回す。


「三人共、さっきので体力が少ないのは理解したと思う。だからまずは、体力を付けることを目標にしていこう。」


三人が頷いたので、話を進める。


「それに並行して、武器の扱いも覚えてもらう。前衛のマティナだけではなく、後衛の2人もだ。」


その言葉が意外だったのか、エルシャとミュリネは俺に詰め寄ってくる。


「な、なんで私達も、武器を使えるようにならないと行けないんですか?」


「そうだよ。私は黒魔法をぶっぱなしたいんだけど。」


……マティナは、わかってるっぽいな。


じゃあ、2人にちゃんと説明してやらないとな。


「マティナ、なんでだと思う?」


「……私達が、いつも万全のポジションで、敵と戦える訳では無いから、です。」


その答えに、二人は頭の上にはてなマークを浮かべていた。


補足してやるか。


「正解だ。例えば、君らが、ダンジョンに三人で潜っていた場合。当然前衛のマティナは、前を歩くことになる。その後ろに、2人がつくわけだな。」


ここまでは、二人とも理解しているのか、うんうんと頷いている。


「ダンジョンは、一本道じゃない。別の道から来た魔物が、後ろから襲ってこないとも限らない。そうなると、一番最初に接敵するのは、マティナではなく君たち2人だ。」


「ああっ!」


「なるほど。」


二人も納得したようだ。


「そんな時にマティナが来てくれるまで、何もできませんじゃあ、魔物に殺されるだけだ。しかし、少しでも凌ぐことが出来れば、マティナが間に合うかもしれない。……つまり、冒険者としてやっていくなら、後衛だろうが武器術は、というより近接戦闘の心得は必須なんだよ。」


「な、なるほど。」


「確かに、黒魔法だけじゃダメなんだな……。」


俺は更に話を進める。


「熟練の冒険者ほど、自分達に有利なシチュエーションを作る術を持っている。どんなに不利な状況でも、自分達が有利になるように動くことができる者が、優れた冒険者と呼ばれるんだ。」

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