第4話 追放白魔道士、早速教育を始める
三人の教育係を務めることを決めた俺は、三人を冒険者の宿から、ちゃんとした町の宿に移動させる。
「い、いいんですか?」
エルシャが、吃りながら聞いてくる。
「教育係は、新人の面倒を見るのが仕事だ。宿の斡旋もそこの支払いも仕事のうちだ。気にする必要は無い。」
新人の為にギルドが貸し出している宿は、お世辞にもいい場所とは言えないしな。なんせ、大部屋に数パーティーをぶち込むだけど、なのだから。
「朝起きたら荷物を盗まれてました、なんてことになれば最悪だしな。」
そう言って、三人の宿を移し、再度ギルドの訓練所に戻りながら、話を始める。
「3人は、ステータスって知ってるか?」
俺は、マティナ、ミュリネ、エルシャの3人に尋ねる。
「えと、自分のレベルと、体力と魔力を見ることが出来るもの、ですよね?」
遠慮がちにエルシャが聞いてくる。
「そうだ。これは一種の魔法で、誰でも使える物だ。だけど、ステータスはそれだけじゃない。」
「それだけじない?」
ミュリネが首を傾げる。
「あぁ、ステータスは体力と魔力以外にもあるんだ。見ることは出来ないがな。この見ることができないステータスを、昔の迷い人たちの言葉を借りて、隠しステータスとかマスクデータということもあるが、基本はステータスと言っておけば問題ない。」
「そんなものが……。」
マティナは、頷きながら俺の話をきちんと聞いている。
「そして、ここからが大事なところだ。……体力や魔力は、どれだけ鍛えても伸びることは無い。この2つを伸ばすには、天賦、職業のレベルをあげるしかない。だが、隠しステータスに関しては、鍛錬によって伸ばすことが出来る。さらに言えば、鍛えておくことで、レベルアップの時の伸びも良くなるそうだ。」
鍛錬の大事さを少しずつ教えていく。努力しない天才は、脅威にはなり得ないからな。
ちゃんと、努力できるようにその大事さを知っておく必要があるのだ。
っと、大事なことを忘れるところだった。
「3人は、希望のポジションとかあるのか?前衛がいいとか後衛がいいとか、どんな戦闘スタイルにしたいかとか。無いならないで問題は無いぞ?」
そう聞くと、3人とも少し考える素振りを見せたので、1人ずつ聞くことにする。
「エルシャは、どうなりたい?」
「えと、私白魔法が好きで、だから、白魔法を活用できるようなのがいいです。」
「じゃあ順当に後衛かな。白魔術師の後衛は、仲間の回復と強化、あとは指示出しとかかな。」
エルシャは、正当な白魔術師の道を進みそうだな。
……俺バリバリに邪道なんだけど、大丈夫?いややるけどさ……。
「ミュリネは?」
「私は、黒魔法でドカーンってやりたい!」
「なら、ミュリネも後衛かな。黒魔術師なら、後衛からの魔法爆撃が出来れば強いな。あとは、エルシャと同じく、指示出しもかな。」
ミュリネも、予想通りというかなんというか、エネルギッシュな娘だな……。
とは言え、この子も順当な黒魔術師になりそうだ。
「じゃあ最後、マティナ。君はどうする?」
「……私は前衛をやります。三人が後衛はバランスが悪いし、一人は前がいないとまずいですし。」
「パーティーのバランスを考えるのは、各々の戦闘スタイルが決まってからだ。自分を抑える必要は無い。三人後衛でも立ち回り用はあるからな。」
俺がそう言うと、少し迷う様子を見せたが、
「……いえ、やっぱり前衛をやります。赤魔術師は、他の二つに比べれば器用になんでもこなせます。前衛をやるのは私が適任です。……それに、私は前衛をやりたい。」
そう言いきった。
「……そうか。なら、まずは武器の扱いからだな。それと、発動速度の速い魔法の練習。指示は後衛の2人がだすようにするから考えなくていい。」
スタイルの話をしているうちに、ギルドに着いたので、再び訓練所に入る。
先程から時間が経って、元々ここにいた奴らは以来に出かけたらしく、数人しか残っていなかった。
俺は、黙って中央に歩いていき、魔法で半径5メートルの円を3つ描く。
「えっ!?今の何!?」
「おっさん、今のどうやんの!?」
「これは……!?」
何やら驚いているようだが、話を進めることにする。
「3人とも、円の中に入れ。1つの円に1人だぞ?」
分かっているだろうが、一応言っておく。
三人共が、円の中に入り俺はもう1つ魔法を発動させながら、話し始める。
「これから、君らにはその円の中で俺が作るゴーレムの攻撃を避け続けてもらう。そうだな、最初だし今回は5分にしておこう。」
言い切ると同時に、ゴーレムが出来上がる。
それぞれの円の中にゴーレムを入れ、時計を取り出す。
「えっ!えっと、あのどういうことですか!?」
「おいおっさん、説明なしか!?」
「いきなりこんなことを……!?」
三人が何やら喚いているが、構わず話を進める。
「5分間、避けきることが出来たら、次のステップに進む。まぁ、ご褒美ぐらいは用意しとくわ。じゃあ、頑張れよ?若人諸君。」
俺がそういうのと同時に、ゴーレムが、攻撃を始めた。
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