第3話 追放白魔道士、新人と対面する
ギルマスに着いていくと、着いたのはギルドの訓練所だった。
むさ苦しい大男達が、連携の確認をしている傍らで、3人の子供が集まっているのを見つけた。
「あれか?」
「ああ、あの子たちだ。行くぞ。」
俺達は、その3人の子供に近づいていく。
近づくにつれ、その子達が全員女の子である事に気づいた。
歳も同じぐらいで、十歳程度だろうか。とにかく小さい。
「3人とも、ちょといいかい。」
ギルマスが近づきながら声を掛ける。
スキンヘッドの大男が、笑顔で3人の幼女に声をかけている図だ。衛兵に通報した方がいいのだろうか……?
「昨日、教育係の話をしただろう?」
「えと、はい。確かに聞きましたが……その人が?」
オドオドと1人の少女が答える。ピンクの髪をツインテールにした可愛らしい女の子だ。
「教育係の話をしたら、君たちを見たいと言われたから、連れてきたんだ。」
そう言うと、ギルマスはこちらを見てくる。
「あー、初めまして。俺はローワンという。君たちは?」
とりあえず、自己紹介をして3人に投げかける。
「えと、私はエルシャです。白魔術師です。」
先程のピンクの髪の女の子が答える。
「ミュリネです!天賦は、黒魔術師だよ!」
次に答えたのは、オレンジっぽい髪色の元気な子。
「マティナ。赤魔術師。」
最後に答えたのは、白髪のクールな女の子。
ギルマスの言う通り、見事に3人ともバラけているな。
それに、性格もバラバラだ。よくパーティー組ませれたな……。
「おじさんの天賦はなに?」
元気な子、ミュリネが俺に聞いてくる。
「今は、赤魔術師系列の天賦だね。」
俺が応えると、ミュリネは不思議そうな顔をして、再度尋ねてくる。
「今はってどういうこと?それに赤魔術師系列って?」
あー、そりゃそうか。この子らは新人だもんな。いやでも、そこら辺って一般にも広がってなかったっけ?
……まぁいいか。
「天賦は、条件さえクリアすれば変えられるんだよ。それと、系列って言うのは、
まぁ、その条件ってのが初期職業のカンストなんだから、普通は選ばねぇけどな。
「ついでに、初期職業の者をファースト、二次職の者をセカンド、三次職の者をサードと呼ぶこともあるから、覚えておくといい。」
ギルマスが俺から説明を引き継ぎ、さらに詳しく話している。
3人とも、真剣な顔をして聞いているし、教育係がまともならまともな冒険者になるだろう。
……やるとは言ってないぞ、やるとは。
煙草をふかし、頭を落ち着かせる。
「なんで冒険者になったのか、聞いていいか?君らぐらいの歳なら、選択肢は他にもあっただろ?」
俺が一番気になっていたこと。それが冒険者になる動機だ。
この3人は、才能がなくて仕方なくここに来たわけでも、ここ以外になれる職業がない訳でもない。
それなのに、冒険者を選んだ理由が聞きたい。
「えと、あの、私は昔、冒険者の方に救ってもらったので、私も冒険者になりたいなって思ったので。」
「私はね、強くなりたいんだ。村は、魔物にやられちゃったから、もう逃げたくないんだよ。泣いてるだけなんて、もう嫌なんだ。」
「私は、世界を巡りたい。もっと、自分がいる世界を知りたい。だから、冒険者になりたいの。」
……3人とも、理由は違うけど、目にはしっかりとした決意で溢れている。
「……若いねぇ。」
思わずそんな言葉が漏れてしまうほど、若さってものを見た気がする。
この歳になると、こんなに純粋になにかに向かうなんて、そうそう出来ることじゃない。
自分がいつの間にか汚れていたってことを、まざまざと見せられた気分だよ。
「教育係の件だけど、勿論君たちにも決定権はある。君たちはどうしたい?」
俺は、三人に問いかける。
「俺に才能はないから、探せばいくらでも俺以上の奴は見つかると思う。そいつに頼んでみるのもおさいいと思うぞ?」
そう言うと、三人は顔を見合わせて話し始める。
「ど、どうする?」
「あのおじさんは、いい人だと思うよ?」
「私は誰でもいい。」
「あの人より、いい人はいるらしいよ?」
「でも、他の冒険者さんって結構怖くない?」
「誰でも、そこまで大きく変わることはないと思うけど……ギルドの依頼扱いなんだし。」
俺が煙草をふかしていると、三人が意見を交わしあっているところに、ギルマスが近づいていく。
「俺はローワンが適任だと思うぞ?」
3人に向けて話し始めるギルマス。
「あいつはBランクだけど、あいつ以外に頼むとなるとCランクになるし、あいつほど魔法の造形が深いやつはそうそういない。もっと言えば、あいつの実力はそこらのSランクよりも高い。」
「え!?Sランクより!?」
「なんでそんな人がBランクなの?」
「私達なら騙せると思ってるの?」
少し遠いところで話しているからか、よく聞こえない。でも、聞き耳を立てるのもちょっと変態チックで気が引けるんだよなぁ。
「冒険者ギルドの規定に、Aランク以上には帰属義務ってのがあってな。どこかの国家に所属しなければならないってやつなんだが、自由が無くなるからBランクに留まるってやつは多いんだよ。」
「ほぇー。」
「んー?」
「そういうこと。」
ギルマスは話は終わったとばかりに、戻ってくる。三人は、まだ相談しているようだ。
「何話したんだ?」
「お前のことをちょっとだけ。」
……何考えてんだろうな、こいつ。俺である必要はないってさんざん言ったと思うんだけど……。
相談が終わったのか、三人が此方に近づいてくる。
「あの、私達の教育係、お願いできないでしょうか。」
エルシャがおずおずと、
「お願いしますっ!」
ミュリネは元気に、
「よろしくお願いします。」
マティナは静かに、頭を下げてくる。
…………あーもう!
「ギルマス。本当に、妥当な教育係はいないんだな?」
俺はギルマスにそう問いかけると、嬉しそうに、
「あぁ、お前以外に、適任者はいない。」
そう言いきった。
「……ふぅ。分かった。教育係の件、引き受けよう。」
俺は、この子達の教育係を引き受けることに決めた。
「いいんだな?」
再度聞いてくるギルマスに、しっかりと目を合わせ答える。
「あぁ、責任をもってこの子達を育て上げよう。」
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