第147話 スクショタイムください

 俺の登場により、コメントは一気に盛り上がる。ちなみにコメントは正面にあるモニターで確認出来ていた。まぁ……流れるスピードが速すぎて、全部を読むなんてことは出来そうになかったけど。


「みんなの応援のお陰で3Dになることが出来たぞ! 本当にありがとう!」


『おめでとう!!』

『感謝を言うのはこっちや』

『おめえが頑張ったからからだろ!!』

『ルイ3Dマジでおめでとう!!!!』

『初配信からは想像出来なかった未来だなw』

『ヌルっと出てきて驚いたわ』


「ヌルっと出てきて驚いた……まぁそうだな。最近はみんな歌から始まるからな……だからこうやって普通に登場するのは、逆に新鮮だろ?」


『確かに』

『ルイらしいっちゃルイらしいけどなw』

『古き時代のお披露目配信を思い出していたよ』

『チラっ……チラっ……』

『まぁルイは歌が上手くないから……ゲフンゲフン』

『あえてそうしたんだよな?』


「ん? ああ、そうだ。あえてこの登場したんだ。決して歌に自信が無いからとか、そういうことではないからな?」


 そう言うとまた『嘘乙w』みたいなコメントが大量に流れてくる。でも3D配信というめでたい場だからか、みんなどこか優しくて、嬉しそうで。とっても楽しそうなのが、コメントからでも伝わっていた。


「ははっ。それでみんなのコメントもスパチャも見えてるぞ。本当にありがとう! それでスパチャに応じて、上空からラーメンが降ってくるようにしてくれてるらしいけど……意味分かんないな!」


『草』

『やっぱラーメン系じゃねぇかお前』

『完全に公式設定になったなぁ……』

『替え玉代置いときますね』

『五万円の替え玉があってたまるか』


 そしてスパチャに応じて、配信画面ではルイの周りを埋め尽くさんばかりにラーメンが降ってきていた。なんかシュール過ぎて笑えるな。 


 で。オープニングトークを終えたところで、次に俺は衣装を見せることにした。


「それで衣装だが……このローブかっこいいだろ? 帽子もちゃんと尖ってる。これはもう完璧な最強魔道士に間違いないな!」


 言いながら配信用のカメラに近づいて、俺は丁寧に全身を見せつけていった。


『おっ、そうだな』

『ソッスネ……』

『悔しいけどかっこいい』

『ホントに真っ黒だなww』

『どこに最強がいるんですかねぇ……』


「それで新たな表情も手に入れたぞ。まずは魔眼……これめちゃくちゃかっこよくないか!? 『ルイ・アスティカが命じる!』とか言ってもいいよな!?」


 続けて俺は新たに貰った、表情の差分を紹介していた。俺の合図でルイの右目に、魔法陣のような模様が刻まれて……。


『!?』

『かっこいい』

『魔眼の設定、生きていたのか!?』

『どんな命令するんだよ』

『そりゃレイちゃんとイチャコラよ』

『能力使うまでもなくて草』


「それで、次が泣き顔……これいる?」


 そして次の合図で、俺の顔は泣き顔に変わる。使い所は多そうだけど……ルイくんがこんな表情しちゃダメなんだって。


『いる』

『いる』

『いる(鋼の意志)』


「で、次が……ハート目。これ完全にふざけ出したよね? いつ使うんだよ」


 そして次に俺の目はハートに変わる…………まぁ。用意してくれたのなら、ちゃんと紹介しますよ。ハイ。


『草』

『草』

『そりゃ恋してる時だよ』

『常時じゃねぇか』

『お前にハート目が備わってるのか……』

『エッチじゃん』


 このままハート目を続けるわけにもいかないので、とっととそれを解除して……俺は次へと進んでいった。


「まぁ表情は置いといてだ。じゃあ次、ポーズでも取りますよ。今後一生リクエストとか答えないから、言うなら今のうちだぞ」

 

 そう言うと、更にコメントの勢いは増してって……。


『セクシーポーズください!!』

『グラビアの表紙と同じヤツください』

『猫のポーズ。ニャーって言え』

『ギャルピースくれ!』

『逆立ちしながら開脚お願いします』


「なんでまともなのが一つもねぇんだよ……?」


『立木のポーズください』


「立木のポーズはヨガなんだよ」


『草』

『草』

『草じゃなくて木な』

『木生える』

『ルイの配信は環境に優しいなぁ』


 言いつつ俺は右足を左太ももに当てて、背筋を伸ばし……立ち木のポーズを取った。俺の運動神経は悪い方だと自覚しているが、体幹はそれなりに強いので……。


『木生える』

『身体安定してんじゃん』

『やるやん』

『これがルイの上スマッシュですか?』

『ヨガ使いの魔道士ってなんだよ』

『魔法放つポーズください!』


 そのポーズを保つことに成功したのだった。俺はその格好のまま、コメント欄に目を通していく……。


「えーっと次は……魔法を放つポーズください。おっ、いいねぇ。そういうのを待っていたんだよ俺は」


『エアコメ』

『そんなコメントあったか?』

『まぁ見てみたい』

『はやくスクショタイムくれ!』


 その要求に応えるべく、一旦俺はカメラから離れ、とある棒を持ち……またカメラの前に現れた。その棒は、配信画面では魔法使いの杖として表示されていて。


「杖だね。これを使って、いろんな技を出してやりたいところだが……スタジオ壊しちゃうから、ポーズだけで勘弁してやろう」


 そして俺はカメラに近づいて、くるっと杖を突き刺すようなポーズを取りながら、格ゲーのキャラの必殺技を真似するのだった。


「フッ……破滅だ」


『ハメツダ』

『SA3やめてね👍️』

『よりによって真似するのそれかよ』

『杖にも当たり判定付けろ』


 俺はそのポーズを数十秒続けて……。


「……ここスクショして、VTuberの会話に割り込むオタクを刈り取るルイ・アスティカとして使っていいぞ」


『助かる』

『いる?』

『いらない』

『いらない』

『素材配布するなら、背景ちゃんとBBにしろ』

『もうそのネタも古いよ、ルイじいちゃん』

『エルフの剣士のポーズもください!』

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