第142話 お披露目配信、控室
──
またまた数日後、俺の元にネモさんから連絡が。
『ルイさん、ロビンさんとカレンさんの出演許諾も取れました。なので歌の練習も今週中にやりましょう』
「マジっすか」
二人とも承諾してくれたのか。絶対忙しいだろうに、出てくれるのは本当にありがたいな。これはちゃんとお礼を言っておかないと……。
『それとゲーセンにあるダンスゲームの「ダンスダッシュ」の使用許可が取れました。ということでルイさんには、3D配信で踊ってもらいます』
「マジっすか」
もちろん聞いたことのあるゲームタイトルだ。でもギャラリーに見られるのが恥ずかしくて、実際にプレイしたことはないんだよな。せっかく用意してくれるんだし、これは事前に練習するべきだろうか……?
『あと料理企画の件ですが、料理人の方呼べそうです。レイちゃんとカレンちゃんにも出題者側になってもらって、格付けチェックもやりましょう』
「マジっすか」
まさかそこまでガチの企画をするとは思わなかった。料理人と比べたら一瞬で分かってしまいそうだけど……でも彩花も料理上手だったっけ? 最近彩花の手料理食べてないから、また食いたいかも……って、俺は打ち合わせ中に何を考えているんだ。
『それとですね……当日嬉しいお知らせがあるので楽しみにしててください』
「はい……えっ? お知らせってなんですか?」
『それは言えません。当日までシークレットです』
ネモさんは笑いながらそう言うが……普通そういうのって教えてくれるものじゃないのか? アイドルとかは、ドッキリも事前に教えてもらうとか聞いたことあるけど……いやまぁ別に俺はアイドルじゃないんですけど……。
「教えてくれないんですか?」
『はい。内緒の方が面白いと思ったので隠すことにしました。でもちゃんと嬉しいお知らせですから、安心してくださいね?』
「はぁ……そうですか。そこまで言うなら信じますけど……」
嬉しいお知らせなら尚更、今すぐにでも知りたかったが……ネモさんがそう言うのなら素直に食い下がっておこう。ドッキリとかじゃないなら、俺も警戒する必要ないだろうしな。
『これで以上ですかね。では、当日は最高に面白いお披露目配信を期待してますね、ルイさん!』
「そんなハードル上げられるとプレッシャーなんですけど……まぁ頑張ります」
『はーい、では失礼いたしますね』
「はい、失礼します」
そんな感じで通話を終えるのだった。
──
それから更に時は流れて……俺は歌やダンスの練習を重ね、誕生日にルイの3D化お披露目配信をするという情報を公開した。そしたらルイ民はもちろん、他の先輩VTuberのみんなもお祝いの言葉を投げかけてくれたんだ。
それを励みに、また俺は打ち合わせやレッスンを頑張って。眠気や筋肉痛に耐えながらも、忙しい日々を乗り越えたのだった。
そして……迎えたルイ・アスティカ誕生日当日。
「遂に来たなこの日が……!」
俺はとあるスタジオに足を運んでいた。ここは事務所とも違う、主に3D配信を行うスタジオである。何回かレコーディングなどで来たことはあったが、3D配信をする部屋には入ったことはなかったのだ。ちなみに今は控室で待機中である。
「3Dの配信する場所って、どんな感じなんだろうな……?」
「きっとスタジオ見たら驚くよー? カメラがたくさーん設置されてるんだよ!」
隣でそう言うのは彩花。更にその隣にはロビンとカレンさんの姿が。
「我も初めて見た時は冷や汗を掻いたな……これ一個壊したら、一体幾ら弁償する羽目になるんだろうと」
「ビビるのそこかよ」
一同は笑いに包まれる。そのタイミングで俺はみんなにお礼を言うことにした。
「でも……みんな来てくれて、本当にありがとね。忙しいだろうに、歌の練習とか企画で時間使わせて。みんなの配信の時間とかも奪っちゃってさ」
そしたら最初にカレンさんが返事をしてくれて。
「いいんですよ。楽しそうって思ったから、私は了承したんですし。それに今度はルイさんが私達の配信に出てもらうつもりですから……そんなに申し訳ないって思うのなら、その時にお返ししてくださいよ?」
「カレンさん……うん、ありがとう」
そしてロビンは腕を組みながら、背もたれに身体を預けて。
「フン……ルイボーイだから時間を作った、と我の口から言わせるつもりか?」
「ロビン……ありがとな」
俺は二人を交互に見る。二人ともホントに優しくて、ちょっと泣いちゃいそうだ。俺は本当に良い仲間を持ったなぁ……そして最後に彩花は頷きながら。
「うんうん、これから私も類を配信に呼びまくるから。断ったら一生根に持つから」
「お前はマジでずっと言いそうなんだよな……」
彩花は受けた借りは一生忘れないからな……あんまり彩花に借りは作りたくないのは正直なところだけど、このお披露目配信で彩花を呼ばないのは流石にあり得ないもんな。今俺がこの場に居られるのは、彩花のお陰なのだから……。
「でもルイボーイが3Dになったら、あちこちから声が掛かるんじゃないか? 面白いから、きっと色んな配信や番組に呼ばれること間違いなしだ」
「そうかな……あんまり面白いこと言わないぞ、俺は」
「たくさん番組出てるロビンさんが言うんですから、間違いないですよ!」
「へぇー、ロビンって番組出てるのか」
俺の言葉にロビンはこっくりと頷いて。
「ああ。レギュラー番組もあるし、色んな企画のMCに呼ばれるぞ。やったことのないゲームの解説も任せられたことある」
「ええ……」
呼ぶ方も中々だが、それを引き受けるロビンもすげぇな……ってかもうそれ、ゲームの解説とかじゃなくて、ロビンそのものを出してくれることを期待されてるのかもな。そこまでキャラが立ってたら、呼ぶ方もどんな感じの配信になるか想像しやすそうだし……。
「ロビンくんは一人でもずっと喋るから、長時間番組にはもってこいなんだよ!」
「なるほどな……そういやさ。俺マネージャーから今日、嬉しいお知らせがあるって言われてるんだけど、まだ何にも教えてくれないんだよ。一体何があるんだろうな?」
このタイミングで俺は雑談のネタがてら、嬉しいお知らせについてみんなに話してみた。ここでどんな知らせがあるのか予想する流れになると思っていたのだが、露骨にみんなは黙りだして……。
「……ん? レイ? どうした?」
「いや……べっ、別に?」
「別にって……ロビンとカレンさんは何か知ってる?」
「いや……知らないな。我は何も聞いていない」
「わっ、私も……全然? そんなお話なんて聞いてませんけど?」
「……」
絶対聞いてるなこれ……嘘つくのヘタ過ぎだってば。まぁでも……みんなのそういう素直なところ、俺は好きだよ。でも俺だけに知らされてない情報か……一体なんだろうな? みんなに関わることか、それとも俺だけ単純に嬉しいやつか……。
デカいコラボとか? それとも有名人と会えるとか、コラボ商品発売決定とか……ルイのコラボラーメンとか出ないかな。でも売れなかった時気まずいから、もう少し有名になってからだろうか……。
……とかそんな妄想を繰り広げていると、控室にスタッフさんが入ってきて。
「皆さん、そろそろリハーサルの準備の方、お願いいたしますー」
「はーい」「はい」「分かりました!」「では参ろう」
各々返事をして、俺らは3D配信スタジオへと移動するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます