第139話 エイプリルフール、終幕

「……よくわかんないけど、凄いよ! やっぱりルイちゃんは天才だよ!」


「ありがとう……とりあえず感想戦はここを出てからにしようか。もうマジで日付変わりそうだから」


『草』

『もう少し浸らせてやれよwww』

『そんなにレイのままが嫌なのか?』

『ルイの姿に戻ったらチャンネル登録解除していいですか?』

『いいよ』

『俺が許可するよ』


 なんでお前らが許可してんだ……まぁ冗談だって信じてるけどさ。


 それで……洞窟を出たところでムービーが入って。いつの間にか主人公の二人は、現代の世界に帰ってきていた。それに気づいた二人は喜びを分かち合い、抱き合ったところでスタッフロールが流れていった。

 

 ふぅ……どうやら無事、日付が変わる前にクリア出来たみたいだ。


「いやー、やったね! 神ゲーだったね、類!」


「ああ、そうだな……クリアしたことだし、俺らも身体を返してもらおう」


「あっ、そういえばそうだったね」


 もうみんな完全に忘れてそうだけど……俺らはお互いの身体を取り戻すために、このゲームのクリアを目指していたのだ。


『俺も忘れてた』

『そういやそんな設定だったなw』

『もうエイプリルフール終わりますよ』

『別にこのままでよくない?』

『二日目行こう』

『エイプリルフール二日目突入!!!!!』


「いや、エイプリルフールに二日目とか無いから……」


「メケメケメケメケ」


「お前もそのネタ拾わなくていいって」


『草』

『草』

『なんで分かるんだよwww』

『ん───マジで────』

『本当は? 本当は?』


 独り言のつもりだったのに、まさか彩花が拾ってくるとは思わなかった。もしかしてこいつ、ネットミームとかも勉強してんのかなぁ……? だとしたら律儀な奴だ。 


 それで彩花は「んふふっ」っと、いつものように笑って。


「冗談だよ。それじゃあ……私達もエンディングに入ろっか?」


「ああ」


 そして事前に作っていた、エンディング用の映像を流すのだった。


 ──

 

 エンディングも変わらず、イラストは彩花。脚本は俺。ナレーションはいなりさんが担当していた。画面共有をして、俺の配信にもその映像を流していく……すると、魔導書に詰め寄ってるレイ(ルイ)のイラストと、いなりさんの声が聞こえてきて。


【ゲームをクリアしたルイくんは、レイちゃんと喜びを分かち合う間もなく、「早く元の姿に戻せ」と魔導書に詰め寄りました】


『エンディングきたああああああ』

『またいなりんに読み上げてもらってんのかww』

『はい捏造』

『さっきちゃんと二人で喜んでましたよ』


【すると魔導書は笑って「面白いものを見せてもらった……最後にやっておきたいこととかないのかい?」と問うと、ルイくんはただ一言「ない」と答えるのでした】


『嘘』

『はい嘘』

『絶対嘘だゾ』

『誰これ? 偽物?』

『レイちゃんと入れ替わって何もしないとか嘘だよなぁ!?』

『「そう言いつつルイの手は胸に当たっているのでした」』

『↑草』

『これが真実だろ』


「……」


 …………いやまぁ正直ね? そういう要素も入れようか迷ったけどね? 少なくともこの『魔道士のルイくん』はそんなことしないと信じてるから、そういったシーンは入れないことにしたんだ。


 …………まぁ実際の俺がこんな状況になったら、ちゃんとがっつりいきますけど。


【レイちゃんは「せっかくルイの身体馴染んできたのにー」と呟きながら、しぶしぶ元の姿に戻ることに納得しました】


『そんな~』

『もどらないで』

『別にレイちゃんはこのままでも良さそうだなww』

『一番興奮してたのレイちゃん説』

『ガタッ』


【そして魔導書は再び光り輝き……次に姿が見えるようになった時には、お互いの身体は元通りになっていました】


『あああああああああああ!!!』

『うわああああああああああ!!!!!』

『もどして』

『ルイちゃんを返せ!!』

『あーあ』

『ルイちゃんどこ……ここ……?』


 俺が元の姿に戻ったことにより、コメントはブーイングに包まれる……しばらくルイちゃんネタは擦られそうだなぁ。


【そのまま二人は地下から階段を上がり、図書館へと戻ってきました。ただ……戻った頃にはもう夜で、図書館は閉館していました】


『あ』

『真っ暗じゃん』

『これってえっどい展開になりますか!!?』

『エロあるよ(笑)』

『きっと続きはファンボだよ』

『草』


【扉には鍵が掛けられており、どの扉も開けられず。窓から出ようにも3階で、降りるに降りられず……空を飛ぶ魔法を使おうにも、身体が戻ったばかりの二人は本調子ではなく、使えなくなっていました】


『あっ』

『閉じ込められたってことっすか!!??』

『エッッッッッッ』

『これが噂の○○○○しないと出られない部屋ですか?』

『無料で続き見れるの!?』


【こうなった以上どうすることも出来ないと悟った二人は、笑って本棚を背にして座って。しばらくお喋りして。二人肩を寄せ合って、朝が来るまで一晩を過ごしたのでした。次の日、カレンちゃんとロビンくんに二人で寝ているところを目撃されたのは、また別のお話……めでたしめでたし】


 そして最後に彩花が描いてくれた、ルイとレイが寄りかかって寝ているイラストを背景に、配信終了のBGMが流れるのだった。


『おつ!!』

『エロないよ(泣)』

『いや……これでええんや……!』

『クソっ……てぇてぇなぁ!!!!』

『てぇてぇ』

『お互いが信頼してるこの寝相、すげぇいい』

『本当に面白いエイプリルフールだった!』

『おつルイ! 来年も期待してる!』

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