第138話 お前いっつもぶっ飛ばされてんな
どうやらおばけは、彩花には見えなくて俺だけに見えているらしい……多分その理由はこのライトだろう。ライトにはおばけの絵が付いてるし、これを装備した人は霊感が上がっておばけが見えるようになるとか、そういった効力があるんだと思う。
ただこのライトを装備している以上、俺はこれ以上武器を持つことは出来ないし、反対に彩花も剣を装備しているから、ライトを装備することは出来ないのだ。これは二人が協力しないと倒せない敵だと直感した俺は……こんな指示を出していて。
「……見えないのなら、俺がライトを向けているところに攻撃してくれ!」
「うん……! やっ、ヤァーーッ!!」
『草』
『草』
『頼りねぇwww』
『なんか聞いたことのある掛け声ですねぇ……』
『こっちの視点だとシュールだなwww』
そうやって叫びながら、レイくんは剣を振るが……そのおばけとの距離は、だいぶ離れていて。攻撃は掠ってすらもいなかった。
「当たった!?」
「全然当たってない! もっと前に近づいて攻撃するんだ!」
「えっ、前ってどっち!? 上ってこと!?」
「一旦落ち着け!!」
『草』
『いつもの』
『こいつら毎回ワチャワチャしてんなwww』
『計画が上手くいった試しがない……』
『ルイがもっと照らしてやらないと』
ここで俺は彩花に分かりやすいように、更におばけに近づいてライトを照らしてみた……のだが、この行動が悪手だったようで。俺に気づいた巨大おばけは、俺に向かって突進してくるのだった。もちろん俺……ことルイちゃんは大きく吹き飛ばされて。
「……おわァーーーーッ!!!!」
「ルイちゃんっ!!」
『飛んだあああああああああああ』
『懐かしのテンプレきたああああああ!!!』
『めっちゃ吹き飛んでて草』
『お前いっつもぶっ飛ばされてんな』
『ロケットかよ』
『草』
『まーたルイの異名が増えるのか……』
ぶっ飛ばされたことにより、俺のHPは半分以上削られてしまったが……このまま回復したところで、余計に彩花がパニックになるだけだ。俺は立ち上がって、またおばけの方へとライトを向けた。
「え、ルイちゃん、回復は……!?」
「……お前だけが頼りなんだ。いいから早く俺を護ってみせろよ……!」
『うおおおおおおおおおおおお!!!!』
『かっけぇよ、ルイ』
『クラオンの時と立場が入れ替わるのアツいな』
『さっきの見て、よくそんな行動出来るなwww』
『信頼してんだろ? レイのことを』
そんな俺の予想外の行動に、逆に彩花は落ち着きを取り戻したみたいで。
「うん、任された……!」
ゆっくりと再び剣を構えるのだった。そのレイくんの背中は大きくて、お姫様を助けに来た王子のように……とても心強いものに見えた。……どうやら俺も完全にゲームの世界に入り込んでしまってるらしい。
「……左だ、レイ!」
「うん!」
俺が移動してるおばけにライトを当て続けると、次第に動きは遅くなって……丁度背後を向いた瞬間に、レイくんはおばけに剣を振るった。どうやらそれは上手くダメージが入ったようで、おばけは萎んだ風船のように小さくなっていった。
「どう!?」
「当たった! その調子だ、レイ!」
『うおおおおおおおおおおお!』
『いいよぉ』
『効いてる効いてる』
『ノリノリクマねぇ!』
『こうげきをつづけろ!!』
そのまま俺はライトを当て続けた。でもおばけだって馬鹿じゃない……小さくなって素早くなったおばけは、光を放ち続けている俺に向かって再び突進してこようとした…………だけど俺は逃げるわけにはいかない。ギリギリまで引き付ける必要があるんだ……もう少し……もう少し……!
「ルイちゃん、指示を!」
「…………今だッ! レイ、俺ごと叩き斬れ!!」
「えっ、うん!! だぁああーーーっ!!!」
一瞬の迷いは見せたものの、彩花は指示通り俺に向かって剣を振るった。当然、俺と俺を襲っていたおばけはダメージを受け、一緒に吹き飛ばされて……おばけは完全に消滅した。
『ええええええええええ!??!!?』
『え、何が起こった!?』
『どういうこと!? 勝ったの!?』
『勝った勝った……?』
『みんな困惑してて草』
『身体張りすぎなんだよお前はwww』
『ちゃんと指示通り動いたレイちゃんも凄いわww』
『これはGG』
「る、ルイちゃん!! 大丈夫!? 生きてる!?」
「…………」
何回もぶっ飛ばされて、服もボロボロになった俺……ことルイちゃんは立ち上がって。サングラスを装備しながら俺は答えた。
「……ああ。おばけの突進攻撃よりも、FF《フレンドリーファイア》で喰らうお前の攻撃の方がダメージ低いって知ってたからな」
『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
『かっけぇ……』
『伏線回収きたああああああああ!!!!!』
『いやどういうことだよwww』
『敵の攻撃を受ける前にレイの攻撃を受けてダメージを軽減したってことやね』
『なるほど……天才か?』
『いや、狙って出来るもんじゃねぇだろwww』
『まーたルイが神回見せてくれたんですか』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます