第137話 レイ、ぶちかましてやれ!

 ──


「……それで、答えはなんなんだよ? 俺専用の問題だから、お前がこっそり打ち込むとか、そういうことは出来ないんだぞ」


「あれ。ルイちゃん、ちょっと不機嫌になってる?」


「別になってねぇって……」


『草』

『なってますやんw』

『分かりやすいなぁお前www』

『お前が面倒くさい彼女ムーブするのか……』

『そりゃショックだもんな。分かってあげられるよぉ……』

『でも一体誰なんやろうな?』


 いや、不機嫌になんかなってないけど……それはマジだけど。神に誓うけど。その彩花の答えが予想出来なくて、ただ俺は困惑していたんだ。


 うーん……俺と同じように、誰か同性のライバーでも書いたのか……? でも彩花にはカレンさんとかいなりさんとか仲の良い人たくさんいるし、誰か一人を選ぶような真似はしないと思うんだよなぁ……とか考えてると、彼女は少し笑って。


「ふふ、じゃあ教えてあげるよ。私の好きな人は……私だよ」


「…………は?」


「だからー。答えは私、レイ・アズリルちゃんだよ」


「…………」


『草』

『なるほどwww』

「自分書いたってことかww』

『自分が好きなのは素晴らしいことやん』

『それは思いつかなかったわ』


 そう来たか……確かにそれだったら角も立たないし。それに彩花はちゃんと本心で言ってそうだもんな…………うん。でもなんでだろうな? 答えを知ってちょっと不満な俺と、安心している自分がいるのは……。


「ね、ルイちゃん、それ開けないの?」


「ああ、分かってる……」


 彩花に急かされた俺は、もう一度宝箱に向き直り……『レイ』と入力した。そしたら固く閉ざされていた宝箱は、嘘みたいに勢いよく開いて。中にあったのは……俺らがずっと狙っていた、持ち手におばけの絵柄が付いた『懐中電灯』だった。


「あ……ライト出たぞ」


「おおー、やったね!」


『きたああああああああああああああ』

『やっと見つかったなー』

『これで暗闇とはオサラバだな!』

『本当にあったのかww』

『うおっまぶし』


 とりあえず俺がライトを装備すると、洞窟の中は一気に照らされ……周りがはっきりと見えるようになった。そのまま俺らは残りの宝箱を開けていったが、手に入ったアイテムは回復薬や防具などで、もうひとつのライトは見つからなかった。


「これで全部開けたな」


「でもライトがひとつしかなかったね?」


「まぁ……剣もひとつしかなかったから、ここからは役割を分担しろってことなんだろう。俺がライト担当で大丈夫か?」


 そう言うと、彩花は声を弾ませながら剣を振り回して。


「うん、いいよ! 私がこの剣でルイちゃんのこと護ってあげるから!」


「さっきそれで俺、ぶん殴られたんですけどね」


『草』

『草』

『草』

『あれはお前が隠してたから……』


 ──


 それから俺らは洞窟内を進んでいって。足場から剣山が生えて串刺しになりそうになったり、大岩が転がってきて潰されそうになったり、水攻めに遭って溺れそうになったり……凄まじい大冒険を繰り広げていた。


 ゲーム内の出来事とはいえ、俺らの精神力は削られて……でも、それ以上に俺らの結束力は高まっていた。これが吊り橋効果ってヤツだろうか……?


「ふぅ、かれこれ5時間近くはプレイしたか……そろそろラスボスが来てもおかしくないよな」


「そうかもね…………ん、5時間? ……ルイちゃん、時間見て! もうすぐ明日になっちゃう!」


「えっ?」


 彩花の焦った声に反応した俺は、反射的に時計を見る。現在の時刻は4月1日の11時40分。もうそろそろ、次の日になろうとしているところだった。この時間だと今日中にクリアは難しいか? …………いや。


「……まだ間に合うかも」


「えっ、ホント?」


「俺の予想では、この洞窟を抜けたらゴールだ。一発でボスを倒すことが出来れば、今日中にクリア出来る可能性はある」


 もちろんノーデスでクリアするのは、相当な難易度だろうが……幾度も試練を乗り越えてきた、何度も神回を巻き起こした俺達なら達成出来るんじゃないかって。そんな謎の自信に俺は満ち溢れていたのだ。


 彩花も俺と似た気持ちだったのだろう。俺の言葉を一切否定せず、返事をしてくれて。


「分かった。それじゃあ急ごう!」


「ああ」


 そして俺らは走り出し……出口の光が微かに見えたところで、ムービーが入って。俺らの前に立ちふさがったのは、王冠を被った巨大なおばけの敵キャラクターだった。どうやらコイツが俺らに罠を仕掛けていた張本人らしい。


「出やがったな、ラスボス……よしレイ、ぶちかましてやれ!」


 俺はそのおばけにライトを照らして指示を出す……が。画面の中のレイくんは止まったまんまで……。 


「……レイ?」


「えっ? 私には何にも見えないんだけど……」


「…………えっ、マジで言ってる?」


「うん、マジで言ってる」


『ええええええええええ!?』

『草』

『こっちしか見えないって……コト!?』

『もしかしてライト持ってるヤツしか見えないのか?』

『そういやライトにおばけの絵ついてたっけ』

『これは面白くなってきたなぁ!?』

『さぁ、ラスボス戦だ!』

『一発で勝てるのか……!?』


 ──

 ──


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