第136話 ルイちゃん、あれを見て! (お知らせあり!)

 ──


 それから俺らは順調に進んでいって、次のステージであろう洞窟のエリアまでたどり着いていた。でも洞窟内はうす暗く、先の道が見えづらくなっていて、かなりの苦戦を強いられていた。


「暗くて見えないよー!」


「だな……ライトでも落ちてればいいんだけど……」


『せやねぇ……』

『そんな便利なものがあるわけないって』

『そんな都合よく無いってば』

『まさかwwwあるわけwww』


 言いながら俺らは洞窟内を歩いていく……その途中、レイくんは何かを見つけたのか、急いで俺の前を走っていって……。


「あっ……! ねぇルイちゃん、あれを見て!」


「えっ、えええええええええっ!?」


『そこでルイが目にしたものとは!?』

『草』

『草』

『茶番やめろwww』

『ダイスケ!?』


 レイくんが進んだ先の部屋にあったのは……大量の宝箱と立て看板だった。


「なんだこの宝箱の山は……もしかしてここは宝物庫か?」


「きっとこの中のどこかにライトが入ってるんだよ! 一つずつ開けてみよ?」


「ああ……」


 そのままレイくんは宝箱を調べだした……どうやらざっと見たところ、30個は宝箱が置かれているらしい。俺も目の前にあった宝箱を調べてみるが、案の定それらには鍵が掛かっているようで。


「開かないな……」


「立て看板に問題が書いてるみたいだよ?」


「また問題解けってことか……これだけの数を全部開けるとなると、気が遠くなりそうだ」


「でもやるしかないでしょ! ほら、協力していこう!」


「だな……」


 言いつつ俺は移動して、看板を確認するが……その問題の最初には『♂』のマークが付けられていて。


「あれ。これはレイくん専用の問題だ」


「こっちはルイちゃん専用の問題があったよ!」 


「分かれてるのか」


 どうやら左右で問題が分かれているらしい。俺らは場所を入れ替えて、それぞれ専用の問題を解いていくことにした。


 ──


 出される問題は、一般教養や計算問題など様々なジャンルから出されていたが、難易度はそこまで高くなく。結構スラスラと解けていた。もちろんその中には、相方のことを聞いてくる問題も存在していて……。


「ルイちゃーん、好きな言葉ってなに?」


 向こうで俺のことを聞いてくる問題があったのだろう。彩花が答えを尋ねてきたので、そのまま正解を教えてやった。


「替え玉無料」


「『かえだまむりょう』っと……えっ、替え玉無料? そんなお店あるの?」


「あるある。一杯だけ無料とか、特定の曜日だけ無料とか……今度一緒行くか?」


「……うんっ、行く!」


『いいね』

『やっぱり仲良しじゃん』

『ついに配信上で約束するようになったんやね(歓喜)』

『ルイから誘っただと!?』

『やるやん』

『成長したな、ルイ……』


 なんで誘っただけで褒められるんだよ……でもまぁ、初期の頃は絶対に関係がバレないようにと、色々発言には気をつけていたからな。今じゃ多少なりとも、視聴者のみんなのことを信頼出来るようになったのかもしれない……。


「ま、でもとりあえずこの洞窟から抜けてからの話だけどな……」


 言いつつ俺は計算問題を解いて、宝箱を開ける。中身は……サングラス。


「こんな暗い場所でサングラス置いてるの、嫌がらせだろ」


『草』

『草』

『大外れで草』

『そんな装備で大丈夫か?』

『問題大アリだよ』


「ねぇルイちゃん、こっちは剣見つけたよ!」


「剣って……次はモンスターでも出てくるのか?」 


「大丈夫だよ、私がルイちゃんのこと護ってあげるから!」


 言いながらレイくんは大剣を振り回すが……なんか危なっかしくて見てられなかった。


『草』

『こわい』

『レイに持たせて大丈夫か?』

『まぁ護ってもらおう』


「さて、いい加減こっちはライトを見つけないとな……」


 サングラスを手にした俺は、看板に近づいてみる。次の問題は……。


「問題は……」


『相方の好きな人の名前を入力せよ』


「…………」


『あ』

『あ』

『でたああああああああああああああ』

『きたあああああああああああ!!!!!』

『超難問!』

『50:50使え』

『テレフォンしろ』


 ……遂に出たな、この問題。さっき彩花がしたみたいに、本人に答えを聞けば一発で解けるだろうが……適当にはぐらかされそうだしなぁ。


「んー、ルイちゃんの好きな色は……どうせ黒でしょ? あっ、当たった」


 どうやら彩花は順調に解いてるみたいだ。俺だけ何もせず、固まってるのもばつが悪い……。


『早く問題解こう』

『二文字打つだけの簡単なお仕事やぞ?』

『何をためらってるんだ?』

『葛藤してるんでしょ』

『でもライトあるかもしれないし、逃げるわけにはいかないだろ』


 ……そ、そうだよな。この宝箱だけスルーして進むのもおかしいし……うん、これはアイテムを手に入れるための作業だ。何もためらう必要なんかないんだ……!


「よ、よし……!」


 そう決心した俺は、震える手で『ルイ』と入力した………………が。


「…………あれ?」


 宝箱は開かなかった。何か打ち間違えたのかと思い、もう一度入力するが……やっぱり宝箱は開かないままで。


「……えっ、なんで!!?」


『草』

『草』

『草』

『wwwwwwwwwww』

『あっ……』

『やられたなwww』

『誰も答えがルイだとは言ってないんだよなぁwww』

『一体いつから答えがルイだと錯覚していた?』


「…………」


 く……くそっ、やられた!!!! 彩花も俺と同じで、好きな人のところを俺じゃない、別の人の名前を書いたんだ! あれだけ意味深なことを言っておいて……!! 


 ……まぁ俺も安藤先生って書いたから、そんな責められねぇんだけど!!


「どうしたのルイちゃん? 難しい問題でもあった?」


 それで俺の声に反応したのか、レイくんはこっちに寄って来る……いや、ヤバい! 今この場に来たらこの問題と入力した文字がバレてしまう……!!


「いや!? なんでもないから、こっち来ないで!!?」


「そう言われると逆に気になっちゃうんだよねぇ……」


「本当になんでもないから!!! マジで!!!」


 俺は宝箱と看板を背にして、それらを守ろうとするが……。


「はーい、どいてどいて」


「んぎゃー!!!」


 レイくんの持っている剣で、ルイちゃんは大きくふっ飛ばされるのであった……なんでFF《フレンドリーファイア》があんだよこのゲームに!!!!


「……」


 ……それで、問題と俺の答えを確認したのだろう。彩花は今日一番の笑い声を上げて、とっても可笑しそうに。


「……あはははっ! この問題の答えが『ルイ』じゃなくて、『なんでー!』って叫んでたんだぁ……ルイちゃん、可愛いところあるね?」


「…………」


「答えが『ルイ』じゃなくて、そんなに寂しかったの?」


「……だあぁー!! もう!!!! うるさいうるさいうるさい!!!!」


『草』

『草』

『かわいい』

『かわいい』

『よし、ちゃんとヒロインしてるな』

『お前がヒロインなのか……(困惑)』

『シャナたん!?』



 ──

 ──


 ~お知らせ~

 この度「幼馴染のVTuber配信に一度だけ出演した結果『超神回』と話題になり、ついでにスカウトまで来た件について」が

「幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった」にタイトルを変更して、電撃文庫様から書籍化されることになりました! 

 いつも応援してくださる皆様のお陰です! 本当にありがとうございます!

 発売日は5月10日です! 詳しくは近況ノートをチェックしてもらえると助かります!

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