第124話 ポーカー勝負! その2

「えっ……何言ってるんですかルイさん。このままって……?」


「そのままの意味だ……俺はこの五枚のカードで勝負する」


『きたああああああああああああ!!!』

『忠実に例の勝負再現してて草』

『お前スタンド使いだったのか?』

『原作通りならハッタリだけど……』

『見てる方はクソオモロイなww』


 ……はい。ご察しの通り、やってることは完全にあの主人公のパクリである。でもこうしたことによって、誰も俺の手を知ることはできなくなった……! ……俺を含めてな!!


 これでやっと五分の状況……いや、依然として俺が不利なのには変わりないが。それでも完全に手がバレていた時よりかは、勝率はグンと上がった筈だ……!


 それで……いぶっきーは少し動揺したように、俺に話しかけてきて。


「でも、カード見てないじゃないですか……! そんな馬鹿げたこと……!」


「……」


 俺は彼女の言葉を無視して、ギャラリーにいるいなりさんに呼びかけた。  


「……いなりさん、お願いがある」


「えっ? 何でしょうか……?」


「所持金の全部をチップに変えて、俺に貸してくれないか」


『うおおおおおおおおおおおお!!!』

『きたああああああああああああああ』

『いなりの魂を賭けるぜ』

『ここで決めにきたなwww』

『え、マジで勝機あるの!?』

『ハッタリじゃないのか……?』


 その発言にコメントもざわつき始める……俺の狙いはハッタリをカマして『ルイもイカサマをしているんじゃないか』と相手に思わせることだ。そうすれば相手を勝負から降ろせる。最悪勝負に来ても、勝てる可能性は十分に残っているから……今の俺がやることは、とにかく動じずに自信満々にしていることだ。


 それでいなりさんは俺の側まで来てくれて……ドンとチップをテーブルに置いて。


「……私はルイさんに拾ってもらってから、とても楽しい毎日を過ごすことが出来ました。そんな恩人であるルイさんの為なら……財産だろうと全部渡せます!」


「ありがとう……いなりさん優しすぎるから、詐欺とか引っかからないか心配だよ」


『草』

『草』

『ありがとうだけで良いだろw』

『一言余計なんだよお前はww』

『おめーだから渡したって言ってんだろ』

『でもこれは伊吹プレッシャーじゃないか?』


 そして俺は自分のチップと、いなりさんがくれた分のチップを前に押し出して。


「俺は所持金の全て……そしていなりさんの分も追加でベットする!」


「……そう来ますか」


 言いながらいぶっきーは、二枚のカードを交換した……良いカードがやって来たのだろうか。そのカードを確認した彼女は、無表情で俺を見つめて……。


「なら私は……追加でカレンさんの全財産をレイズします」


『草』

『草』

『草』

『おい』

『なんでだよ』

『もう何でもありじゃねぇかwww』

『お前ら人から借りすぎだろwww』


「ええーっ!? 伊吹さん、正気ですかっ!?」


 カレンさんもテーブルの近くまでやって来て、慌てたように言う。この反応を見るに、彼女はイカサマには加担していないようだが……この冷静さを取り戻した余裕なレイズ。まさか本当に強いカードが揃ったのか? それとも文字通りのポーカーフェイスか……。


「大丈夫です……こんなハッタリブラフのフェイク野郎には負けません」


 口悪くなってない? まぁ何だって良いさ……俺のやることは変わらない……!


「なら……俺はレイの所持金も賭けさせてもらう」


『草』

『うおおおおおおおおおおお!!!』

『やると思った』

『もうヤケクソだろお前www』

『楽しくなってきたなぁ!!??』

『でもレイちゃんは貸してくれるのか?』


 確かにレイが素直に貸してくれるかは分からなかった。レイの反応で、相手の行動も大きく変わってくると思ったから、ここも一つの賭けであったが……。


「……分かった。類が勝つって信じてるから、託すよ!」


 レイは素直に許可してくれた。俺の考えが伝わっているのか、それともマジで勝てると思ってるのか……何にせよこの反応は、相手にプレッシャーを与えられるからありがたい。俺は「ありがとう」と感謝しつつ、チップに変えてくれるのを待った。


 それでレイがチップに変えてる動作をしている途中、いぶっきーは何かに気付いたのか……少し身体を乗り出すようにして。


「……あれ。レイ、そんな指輪してましたっけ?」


「あっ、これは……」


 ──その何気ない会話を俺は見逃さなかった。


「それは俺が渡した特別な指輪だ。ラスボスのドロップアイテムだから……特殊な能力がある」


「……ッ!!?」


 この場にいる全員の目の色が変わる。もちろんこれもハッタリだが……頭の良いいぶっきーのことだ。透視や時止めが出来る可能性だって考えただろう。


 それにこのボスのドロップアイテムのことは、俺らのチームしか存在は知らなかった……そのアイテムを見たことで、ギャラリーは『ルイの伏せてるカードは最強なんじゃないのか』『マジでハッタリじゃないのか』などの声が上がっていた。


 ──完全に流れが俺に変わった。


 ここで俺は更にダメ押しで、メニューを開いてエンジェルウィングを装備し、背中に翼を生やした。全く意味は無いが……相手を揺さぶるのには丁度いい行動だろう。


『!?』

『草』

『草』

『バサッ』

『なんでだよ』

『いぶっきー混乱中!』


「な、何を……?」


「ん、どうしました?」


「……はっ、ハッタリも大概にしてください……! しょ、勝負です……!」


 このまま勝負を仕掛けてきそうだと思った俺は、一旦手を前にやって彼女の行動を静止させて。メニューを開いた時に、丁度いいアイテムを見つけていたので……俺はそれも賭けることにしてみた。


「待ちな。まだ俺は上乗せする……レイのパンチラ写真も賭けよう」


『!?』

『草』

『草』

『おい』

『ええ……』

『エッッッッ!!!???』

『なんで持ってんだよ』

『おまわりさんこいつです』


「えええええっ!!!? ちょ、類!? なにそれ!? 聞いてないんだけど!?」


 空を飛びながら写真を撮ってた時に、レイの下着が映り込んでしまった写真があったのだ。まぁゲームとは言え、流石にこれを売りに出すのはモラル的なアレで止めておいたが……ここはもう使うべきだろう。


「念の為にお守りで持ってたが……まさかここで使うことになるとはな」


「何言ってるのバカぁ!!! ヘンタイ!! 類のドヘンタイ!!」


「まぁ落ち着け……俺がこれを賭けてるってことは、相当な自信があるってことだ。いくらレイとは言え、この写真が変態いぶっきーの手に渡るのは俺も気が引ける」


「だっ、誰が変態ですか……!」


 両サイドから変態変態言われてるが、そんなことでは俺は動じない……別に喜んでる訳じゃないんだからね。


「まぁ……俺がこれを賭ける以上、いぶっきーにもそれ相応の物を賭けてもらおうか。そうだな……萌え声でASMR配信してもらうのはどうだ?」


「な、なっ……!!?」


『えっ!?』

『草』

『草』

『うおおおおおおおおおおおおお!!!!』

『マジで!?』

『気が変わった、ルイ絶対に勝て!!!』


 なんかもうルール無用過ぎるが……向こうもイカサマしてるだろうし。それに面白いから、このくらいの要求しても許してくれるだろう。


「降りるなら全部無かったことにしていいが……その場合、勝負は俺の勝ちになる。さぁ、降りるか勝負するか選べ、山田伊吹!!」


「基山伊吹です!!!」


『草』

『草』

『草』

『草』


「いっ、良いでしょう……私が負ける訳が無いんだから……受けて立ちます……!! 私は……気絶なんかしませんから……!!」


 いぶっきーがそう言った瞬間、彼女は固まり動かなくなった。一瞬、マジで気絶したんじゃないかと思ったが、どうやらそうではなく……俺も、周りのプレイヤーも固まって動けなくなっていたようだ。


「ん、あれ……? サーバーの調子が悪いのか?」


『あ』

『ん?』

『あれ?』

『フリーズ?』

『配信は止まってないぞ』

『サーバー混んでんじゃね?』

『珍しいな』

『ちょっとー! 良い所なのにー!!』


 でもコメントは普通に動いてるから、回線には問題ないのか……? まぁ出来ることも無いし、そのまま待機しておこう…………それで数十秒後、急に世界は動き出して。自由に身体が動かせるようになった。


「……あ、動きました……!」


「ああ、俺も復帰した…………」


 ……その時に俺は、伏せられていた五枚のカードの位置が若干ズレていたような気がしたんだ。まさか……この固まった時間に、俺のカードがすり替えられたのか……?


「そっ、それじゃあ再開しましょうか……私は……それでも私は勝負します……!」


 でもいぶっきーの声は震えている……これはマジで緊張してる時の声だ。イカサマでカードをすり替えたのなら、こんなにビビる意味が無い。じゃあ気のせいか……。


 ……で。いぶっきーが勝負に挑んでくる以上、俺も勝負するしか選択肢は無くなってしまった。でもまだ勝ち筋は残っている。最後まで諦めるな、ルイ……!!


「俺も降りない……勝負だ!!」


 そして俺らは一斉にカードをオープンした。いぶっきーの手は『♠5、♦5、♣Q、♠Q、♥6』。俺の手は……『♣2、♦7、♠K、♥K、♣K』だった。


「5とクイーンのツーペア……!!」


「俺は……キングのスリーカード!!!」


 この勝負…………俺の勝ちだ!!!


『うおおおおおおおおおお!!!!!!』

『きたああああああああああ!!!』

『草』

『なんでだよ』

『マジで勝ちやがったコイツwwwww』

『なんでスリーカード揃うんだよwwwww』

『まーたルイが神回生み出したのか?』

『伝説だよお前は』

『イカサマしてなかったらスゴイよこれ!?』

『いぶっきーのASMR配信きたあああああああああああああ!!!』

『うおおおおおおお!! 優勝だ! 優勝だ!』

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