第123話 ポーカー勝負! その1

 そしてカレンさんから掛け金を貰ったいぶっきーは、そのお金をチップに変えて、テーブルの上に重ねて置いた。


「ルイさんもチップに変えてください」


「ああ……」


 言われて俺もチップに変える操作をする……何だかんだレベル上げのためにモンスター狩りしていたから、意外と所持金は貯まっていたのだ。同じように俺もチップを重ねて置いて、準備万端の姿勢を取った。


「変えたぞ」


「では始めましょう……ディーラーは誰かに任せた方が良いですよね?」


 そう言っていぶっきーは、ギャラリーを眺めだしたが……誰かを選び出す前に、俺は手を正面に出して。


「……待った! この中にいぶっきーの仲間が紛れてるかもしれない……ディーラーはちゃんとカジノ内にいるNPCに任せるべきだ!」


「……なるほど。構いませんよ?」


『待った!』

『ナルホド!?』

『いいぞ。冷静だルイ』

『もう勝負は始まってるなw』

『だけど伊吹笑ってるぞ』

『何企んでるか分かんなくてこえ~~』


 そして俺は黒服を着たNPCを呼び、カードをシャッフルさせた。


「では改めて、勝負開始しましょう……まずは参加費を払ってください。最終日ですし、参加費は500ゴールドくらいにしましょうか」


「高くね?」


 不平を言いつつ俺は、ピンク色のチップを投げる……この色のチップが、500ゴールドと同等の価値を持っているのだ。同じようにいぶっきーもピンクのチップを置いて、参加費を払った。


「ではディーラーさん、カードを配ってください」


 彼女の指示通り、ディーラーは順番にカードを配る……そして五枚配られた所で、俺はカードを手に取って確認した。


「……」


 俺の手は『♣A、♠4、♠J、♠7,♠2』だった。数字は揃ってないがスート……カードのマークはかなり揃っている。ここはワンチャン狙って、フラッシュを揃えに行くべきだろう。初っ端から降りたくはないしな……。


『おお!』

『バラバラじゃねぇかw』

『いやフラッシュ行けるぞ!!』

『フラッシュってなんぞ?』

『カードのマークが全部同じって役だよ』

『フラッシュは揃えばかなり強いぞ!』


「俺からで良いか?」


「どうぞ」


 俺はベット分のピンク色のチップを投げ、♣Aを裏返しにしてテーブルに置いた。


「俺は一枚交換だ」


 それを確認したいぶっきーは、同じようにチップを置いて……。


「私は三枚交換します」


 三枚カードを裏返して、テーブルに置いた。そしてディーラーは俺に一枚、いぶっきーに三枚カードを配る。


 俺は配られたカードを確認した……来たカードは『♦K』だった。


『草』

『はい』

『知ってた』

『ハズレ!』

『まぁそうそう揃わんわなw』

『ワンペアくらい出来ると思ったが』

『いや、ポーカーはこっからだぞ?』


 そう、ポーカーはここからが本番……二回目のベッティングタイムで、相手をビビらせ、勝負から引きずり降ろすことだって可能だ。


 ……俺の手は何も揃っていないノーハンド、いわゆるブタだ……だけどここから相手を勝負から降ろせば、俺の勝ちになる。交換が一枚という少ない枚数だった以上、俺が良い手札だと思いこんでいるはずだ……!!


「俺は追加で2000ゴールドをベットする!」


 俺は自信満々に宣言して、追加のチップを投げた。さぁ、この圧にビビれ……! 勝負から逃げ出せッ……!!


「あ、じゃあコールします」


 サラッといぶっきーはそう言って、2000ゴールド分のチップを置いた。


『あ』

『あっ』

『はい』

『草』

『まずい』

『GG』


「……」


 ……こうなった以上、どうあがいても俺が勝つことは出来なくて……俺らは一斉にカードをオープンした。


「では勝負です……6のツーペア」


「……ノーハンド」


『草』

『草』

『うおおおおおおおおおおお!!!!』

『ざっこぉ♡』

『よわい』

『幸先悪いな……』

『こーれ負けです』

『諦めんなよ!! もう少し頑張ってみろよ!!』

『シューゾーも見てます』


 ──


 ……それから何回か勝負したが、俺はほとんどいぶっきーに勝てずにいた。勝ったのも決まって俺の手札が良い時で、必ず彼女は勝負から降りていた。


 まぁやっぱり……何かイカサマはしてると思わざるを得ない訳で。でもいぶっきーがイカサマをしてる素振りは、全く見せてないんだよな。俺だってああ言われた以上、警戒はしている。変なスキルを使おうものなら、すぐにそれを指摘するつもりだったが……全く怪しい行動は見せてないのだ。


「……」


 なら他に何が出来る……? NPCを買収……? 流石にそれは無いか。ディーラーは俺が決めたことだし、もし出来たとしても俺や他のプレイヤーが見逃さなかっただろう。


 じゃあカードに細工してるのか? でも傷やマークは見当たらないし……そんなバレやすい、リスクのあるイカサマをするとは思えない。


 ……うーん。視点を変えるべきか? いぶっきーは勝負には強いが、手札はそこまで強くは無い……せいぜいツーペアが最高だ。そうなると……カードやディーラー、そもそもゲーム自体には何もしていないのか……?


「ルイさん、次のゲーム行きますよ。皆さんが待っていますから」


「ああ……」


 いや待て……そうだ、ギャラリーだ! この勝負を見ている人がスキルを使用してる可能性がある! 例えばそう……俺の手札を報告しているとか……!? 


「では私は二枚交換します」


 その可能性は高い……! だけど……そうだったとしても、誰がどうやっていぶっきーに伝えているかが分からない……! このゲーム中に不正を暴くのは、流石に厳しいか……なら!!


 俺は配られた五枚のカードには手を付けず……眼の前のいぶっきーに視線を合わせた。


「……ルイさん? 早くカードをめくって、確認してください────」


「……俺は。このままで良い」


『!?』

『え』

『はぁ!?』

『草』

『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

『承太郎リスペクトきtらあああああああああ!!!』

『ハッタリか!? それとも策があるのか!?』

『面白くなってきたじゃないかぁ!!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る