第122話 世代がバレそうな発言ですね

 ──


 そして俺らは、カジノまで辿り着いていた。いぶっきーが言ってた通り、最終日ということもあって、カジノ内は多くの人で溢れかえっていた。そんな中……聞き覚えのある少年の叫び声が、俺の耳に入ってきて。


「グッ……グアァアアッ!! この台はインチキだッ! イカサマだァッ……!!」


「……何してんだお前?」


 俺はスロット台の前に座っている、ロビンへと声を掛けた……誰かに見られてるとは思わなかったのだろう。ロビンは俺の方へと振り返り、少し動揺したように咳払いをした後……いつもの口調へと戻るのだった。


「んんッ……ああ、ルイボーイか。このスロットはやらない方が良いぞ……全く揃わない。一回捻られたルービックキューブ並みに揃わないぞッ!!」


「例えが分かりにくいな」


『草』

『草』

『いや、分かりやすいぞ』

『絶対に揃わないやつだなw』

『せめて同じゲームで例えろww』


 そして俺らのメンツを見たロビンは、物珍しそうに尋ねてきて。


「ふむ、それで……ルイボーイ達もギャンブルしに来たのか?」


「まぁそんなとこだ。ちょっといぶっきーから決闘を申し込まれちゃってさ」


「ほう、もしかしてカード勝負するのか?」


「ああ。詳細は全く聞いてないけどな」


「ほうほう、そうかそうか。それは面白い……!」


 それを聞いたロビンはニヤリと笑い、パンパンと拍手をしながら立ち上がって……カジノにいるみんなに向かって、大声を張り上げるのだった。


「おーい皆の者! 今からルイボーイと伊吹嬢が戦うそうだぞ! この一戦は見届けるべきじゃないか!?」


「えっ、ちょ、お前……!」


 一気に注目されて恥ずかしくなった俺は、慌ててロビンの口を塞ごうとした……が、その前にいぶっきーが、俺の手を掴んで止めてきて。


「良いじゃないですか。ルイさんが負ける所、みんなに見てもらいましょうよ」


「だから何で勝つ気満々なんっすか、アンタは……」


『草』

『舐められてて草』

『いぶっきーニヤニヤで草』

『ずっと戦う相手を探していたのかもしれない』

『レイちゃんに良いとこ見せたいんでしょ(適当)』

『ちょっとルイに勝ってほしくなってきたな』

『理解らせてやれ、ルイ』


 ──


 そして俺らはギャラリーを引き連れ、カードゲームがプレイ出来るテーブルまでやって来た。そこに俺らは対面に座って、見つめ合う形になる……。


「……そんな見つめられると照れちゃいます」


「だったらもっと、恥ずかしそうに言って欲しいんですけどね?」


『草』

『草』

『伊吹相手だと全然ときめかねぇ……w』

『これもうおちょくってんだろwww』

『こーれ煽りです』

『ここからもう勝負は始まってるのか』


 そして周りでも笑い声が上がる……周囲にはレイやいなりさん、ロビンやカレンさんなどを含めたギャラリーが数十人集まっていた。こんな大人数に囲まれることなんて中々ないから、ちょっと緊張してしまうが……いぶっきーはいつも通りの落ち着いた雰囲気であった。意外とこういった環境には慣れているのかもしれないな……。


 それで俺やギャラリーの準備が出来たことを確認した彼女は、メニューを開いてテーブルの上にトランプのケースを召喚した。それを開けながら、いぶっきーはルールを説明していって。


「冗談はこのくらいにして……今回勝負するゲームはポーカーです。ルイさんはポーカーのルールはご存知ですよね?」


「まぁ分かるけど……でもポーカーって言っても、色んな種類ない?」


 一応ポーカーの役くらいは分かるが、色んな遊び方があるのも知っていた。中央にカード置かれるヤツとか、見てる方も難しいんじゃないのか……? そんな俺の思いが通じたのか、いぶっきーは軽く頷いて。


「そうですね。今回は一番簡単で分かりやすい、クローズドポーカーで勝負します。自分の手札だけで完結するやつですね」


「ああ……確かNewスーパーマリモブラザーズのミニゲームにあった、ポーカーと同じルールだよね」


「世代がバレそうな発言ですね」


『草』

『草』

『本当に高校生か……?』

『マイージと無限にやるやつなw』

『懐かしいなおいwww』

『あのゲームは最近出たはずでは……?』

『もう十数年前に出たゲームだよ、おじいちゃん』


 そしていぶっきーは、シャッフルしたトランプをテーブルに置いて。


「それと……負けた後にグチグチ言われたら困るので、先に言っておきますけど……この勝負『何でもあり』です」


「何でも……?」


「はい。使えるものなら、何を使っても構いません」


『ん?』

『今何でもって』

『あっ……』

『これ実質イカサマ宣言だろwww』

『だと思った』

『先に忠告するだけ優しいなw』


 ……俺もその発言は、イカサマをするという宣言にしか聞こえなかった。しかしそう言った以上、俺から警戒されることは明らかで……そんなにバレない自信があるのか? 


 それともこれはただのブラフか、逆に俺にイカサマさせようとしてるのか……? ……これ以上考えても仕方ないか。俺はいぶっきーに質問した。


「じゃあ俺が銃突きつけて『勝負に降りなきゃ撃つぞ』とか言っても良いの?」


「良いですよ。まぁ、ギャラリーや視聴者が許してくれるとは思えませんが」


「なるほど……」


 寒いことはするな、ってことか。逆に言えば面白いことなら幾らでもやって良いってことだろう……楽しくなってきたじゃないか。


「まぁここまで言えば分かりますよね。お互い持てるものを使って勝負しましょう」


「ああ……正々堂々な」


『正々堂々(大嘘)』

『果たしてどんな勝負になるのか』

『これで何もしてこなかったらウケるなw』

『いぶっきーは平気でそういうことするぞ』

『そもそもどうやってイカサマするんだ?』

『それはお楽しみだな』


「それではゲーム開始…………の前にカレンさん。私にお金貸してください」


「ズコーッ」


『草』

『草』

『反応が昭和で草』

『さっきまでの緊張感はどこ行ったw』

『じゃあ俺らもどっちが勝つか賭けようぜ!』

『伊吹』

『いぶっきー』

『いぶっきー』

『伊吹ちゃん』

『いぶっきー以外ありえないwww』

『この流れ草』

『誰かルイを応援してやれよ』

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