第116話 いざ、魔王城へ!
──クラスト・オンラインが始まってから六日目。救出組はまた広場に集まって、最後の作戦会議を行っていた。
「……昨日言った通りできるだけ戦闘を避けて進んでいくから、メンバーを前衛と後衛に分けることにした。前衛は俺、レイ、ロビン、安藤先生。後衛は来夢さん、リリィ、七海さんで行こうと思ってる」
「ほう……敵に見つからないように少人数で動く、という認識で合っているか?」
「ああ。もし敵に見つかった場合は、素早く倒せそうなら倒して、無理そうだったら後衛に引き付けてもらうことになる……なんか汚れ役みたいになっちゃってごめんな?」
俺が三人にそう謝ると、リリィはポンと胸を叩いて。
「任せろ! あたしらそういう役割は得意だからな!」
「それは……リリだけじゃないかな」「うん」
「うわーん!! 後衛の二人がイジワルだよー!!」
『草』
『お姉さん二人にイジられてるwww』
『リリィは末っ子だろうなぁw』
『リリィは芸人枠だから……』
『モンスターに追われてる姿が似合うのは、断トツでリリィ』
『年下だから可愛がられてるんだよ!』
リリィのお陰で空気が和んだ所で……続けて俺は話をしていく。
「それで敵は音に反応するっぽいから、鈴なんかを用意しておくと良い。そして最上階まで来たら一気に必殺技を叩き込んで、魔王を倒して、捕まってるみんなを開放して離脱する。魔王さえ倒せれば、他モンスターも消滅すると思うけど……念のためロビンにパラシュートを何個か用意させた」
「フッ。いざという時は空から逃げる、ということだな。まぁ我は自前のグライダーで離脱するつもりだがな」
昨日離脱方法を考えていたが、最終的に魔王城の最上階から飛んで離脱するのが良いんじゃないかという結論に至った。まぁさっき言った通り、魔王倒したら他モンスターも消滅すると思うけど……念には念を入れてな?
『空から逃げるってことか』
『怪盗みたいでカッコいいな!』
『ルイには羽もあるし良い作戦かも』
『でもどうやって逃げるんだ? 屋上とかあるのか?』
『魔王城の最上階に窓があった気がする』
『なるほど』
……と、そんな感じで作戦会議をしていると。突然、広場にいぶっきーが現れて。
「……ん、いぶっきー?」
「ルイさん。これ、ロケランあげます」
そう言って、背中に背負っていたロケットランチャーを地面に置くのだった。
『!?』
『どうした急に』
『何だ!? 詐欺か!?』
『これは罠だ!!』
『爆発するぞーー!!』
『散々な言われようで草』
「えっ、ええっ!? 良いの?」
「はい。もちろんです」
「で、でもどうして……?」
何日か前に武器屋で見たが、ロケランは相当なお金が必要なはず……そんな高価なアイテムを無償でくれるなんて、何か目的があるはずだ。俺はいぶっきーの言葉を待った……そしたらとんでもない言葉が、彼女の口から出てきて。
「最初は救出失敗して、ルイさんの配信が荒れるのを期待してたんですが……」
「おい」
『草』
『草』
『草』
『悪魔で草』
『性格悪ぃwww』
「……でも遅くまで頑張ってるルイさんを見て、考えが変わりました。その武器、本当に強いから使ってあげてください」
「……」
昨日遅くまでレベル上げしてたの見られてたのか。見てたのなら話しかけてくれても良かったのに……俺は軽く笑いながら、ロケランを拾って背中に装着した。
「……ありがとう。使わせてもらうよ」
「たまには強キャラっぽい所、見せてくださいよ。ルイさん?」
「……ああ。任せろ」
『かっけぇ……』
『この不器用同士のやり取り良いね』
『お互い優しいのに口下手なんだよなぁ……w』
『なんだかんだいぶっきーはルイに期待してるんだよ』
『ルイなら何か起こしてくれるって思ってるんだろ』
『俺も思ってるもん』
『神回を量産する男やぞ』
そしてレイもいぶっきーに近づいて、お礼を言って。
「ありがとね、いぶっきー!」
「良いんですよ。それ使って、カレンさんを助けてあげてください」
「あっ、カレンちゃんも捕まってたんだ……」
『草』
『草』
『草』
『攻略班が失敗したの、メンツの方に問題があった気がしてきたな』
『なんでカレン行かせたんだよww』
──
──そして俺らは魔王城に突入していた。事前の準備が功を奏したのか、ほとんど敵に遭遇しないで進むことが出来た。道中、壁に隠れながらレイが話しかけてきて。
「ねぇ類、これって何階建てなの?」
「多分10階。このまま体力を温存して行けたら良いんだけど……」
言いながら俺は鈴を投げた。その着地した鈴の音で、こん棒を持った敵オーク達はそっちの方向に気を取られる……その隙に俺らは階段のある方へと走って、敵の群れを切り抜けるのだった。
「良い腕だ、ルイボーイ」
「でもこれで鈴が無くなった……もう少し用意しとくべきだったな」
『まぁまぁ』
『もう少しで最上階だしセーフ』
『この調子ならイケる!』
『本当に怪盗みたいだな』
そして俺らは階段を駆け上がって、9階まで上り詰めていた。だけどそのエリアはさっきまでと違って、モンスターが大量に歩いていて……。
「うわ、すげぇいるな……」
「これは戦う必要がありますね。やりましょう」
「でも戦うと、別のモンスターも集まってくるんじゃ……?」
レイが言いかけてる最中で俺らに気が付いたのか、槍を持った一匹のオークがこっちに向かって突進してきた。
「うわっ、来やがった! ……っ、おらぁぁあああッ!!」
咄嗟に俺は剣を構えて、攻撃を弾き返す。その隙にロビンは二丁拳銃を取り出し、俺と入れ替わるように前に出て。
「カバーする!」
オークの顔面に鉛玉をぶち込み、その怯んだ所に回し蹴りを食らわせ、相手の体勢を崩すことに成功したのだった。
『うおおおおお!?』
『カッコ良すぎだろコイツwwww』
『スタイリッシュ!!』
『厨二病が覚醒したな』
『やだ……かっこいい……』
『強すぎだろwww』
そしてレイも杖を振り回し、俺らにバフを掛けてくれたようで。
「よし……みんな! 攻撃力を強化したよ!」
「僕も畳み掛けます……召喚、ケルベロス!」
その先生の呼びかけと共に、三つの顔を持った犬型のモンスターが、先生の目の前に現れて……!
『!?』
『先生!?』
『先生まさかの召喚士で草』
『召喚士!?』
『この教師、ノリノリである』
「先生! 召喚士だったんですか!?」
「ええ。実はこのジョブに憧れてたんですよ……ケルベロス! 噛み付くです!」
その号令と共にケルベロスは走って、ダウン状態のオークに噛み付き……そのままHPを削り取って、オークを消滅させたんだ。
『ちゃんと強えwww』
『命令がボケモントレーナーみたいで草』
『先生は従わせるの得意だもんね……』
『なんか誤解されそうな言い方で草』
『ちゃんと全員強いの良いね』
それで確かに倒しはしたが、音を聞いたモンスターが更に集まってきたようで……いつの間にか俺らは、囲まれているような陣形を取られていた。
「クソ……これじゃキリがないな」
「ここで消耗する訳にはいきませんね……」
「ど、どうしよう、類……!」
…………と。ここでバァンとクソデカ銃声が鳴ったのと同時に、一匹。また一匹と続々とオークが倒れていくのだった。
「なっ……!?」
『この音は!?』
『あの孤独なシルエットは……』
『それはヤツしかいないだろ』
『ヒューッ!』
その倒れたモンスターの背後から出てきたのは、もちろんみんな知ってるあの超次元スナイパーで……。
「……ここはウチらに任せて行きなよ。ルイ君」
「来夢さん!」
『きたああああああああああ!!!!!』
『かっけぇー!!』
『惚れちゃうだろこんなの』
『おい後ろ』
『ルイ後ろ見ろ!!!』
「……類、危ない!」
「えっ?」
どうやら背後に俺を狙っていたモンスターがいたらしく、俺はぶん殴られるはずだったのだが……即座に七海さんが盾を持って割り込んでくれて、完全に攻撃を受け止めてくれたんだ。
「なっ、七海さん……!?」
「よそ見は駄目だよー、ルイ君。ちゃんとレイちゃんを護んなきゃ」
「あっ……ありがとうございます!」
『タンクきたぁあああああ!!』
『七海がタンクは渋いねぇ』
『これが盾勇者ちゃんですか』
『流石ルイ民総団長』
『こんなとこでルイが死ぬのは解釈違い』
更にはリリィも飛び出してきて……。
「よし、あたしも行くぞっ!! ギターは……友達ィ!!」
ギターのネック部分を斧のようにして持ち……七海さんと競り合っている、オークの脳天を叩き割るように、思いっきり振り下ろすのだった。
『草』
『草』
『草』
『ロックンロール過ぎる』
『なんでギターが武器なんだよwwww』
『友達を武器にするな』
『友達曲がってますよ』
それだけ派手に暴れた三人の方に、完全に敵は引き付けられて……次の階段へと進む道が大きく開けたのだった。
「みんなありがとう……! 今の内に行こう!」
「うん!」「ああ!」「はい!」
「行って来いッ! ルイ!」
そして俺らは階段を登って……遂に最上階まで辿り着いた。そこには黒い角の生えた魔王の姿と……奥には鉄格子に捕らえられてる、みんなの姿があった。もちろんその中には、俺らの仲間であるいなりさんの姿もいて……!
「あっ……ルイさーーん!!!! レイちゃーーん!!!!」
「いなりん!! 助けに来たよ!!」
「いなりさん! そんな大きな声出せたんだ!」
『草』
『草』
『草』
『第一声がそれかよwwww』
『ここでもノンデリかますのか……』
『早く助けてやれ!!!』
『いなりんとっても嬉しそうだ』
『さぁラスボス戦や!!!』
『ぶちかませ、ルイ!!』
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