第115話 仲間集め、そして仲直り

 それから俺はレベル上げをして、集めたお金で装備を整え、千里眼で魔王城の様子を確認して……時間になった所で、広場に赴いていた。するとそこには……。


「……おお、こんなに来てくれたんだな」


『うおおおおお!!!!』

『すげぇメンツだ』

『プレイヤーの半分は集まってるぞ!』

『レイちゃんの人望ってすげぇんだな……』

『ギルドハウスみたいになってて草』


 レイが集めたライバーが20人ほど立っていた。もちろん見知った人もいれば、初めましての人も多くいて……ひとりひとり挨拶したかったけど、時間が無かったから……俺は中央に立って軽く挨拶をした後、状況を説明していくことにしたんだ。


「みんな集まってくれてありがとう。ルイ・アスティカだ。話には聞いてると思うけど、魔王城攻略組は全滅してしまったらしい。だから俺は助けに行こうと思ってて……そこでみんなの力を貸して欲しいんだ」


 そんな感じで俺は協力者を募っていった。その話してる最中で……。


「なぁルイ、リーダー達はどこに捕まってるんだ?」


 金髪リボンの少女、リリィが質問してきた。こういった場面で怖気づかずに質問してくれる人は、結構ありがたい存在だよな……そんなことを思いながら俺は答える。


「魔王城の最上階だ。千里眼で見たところ、最上階のクソデカい檻にみんな閉じ込められているのが見えたんだ。道のりは遠いけど、鍵さえ手に入れられれば一気に開放出来ると思う……多分鍵は、魔王を倒す必要があるけれど」


『けっこうキツそうだな……』

『本当にいけるのか?』

『やれんのかルイ2023』

『リーダーがいない中で攻略は難しそう』


「……勝機はあるのか、ルイボーイ?」


 ここで当然の疑問をロビンが投げかけてきた。ここでの答えで、協力してくれる人の数も大きく変わりそうだと思った俺は……自信ありげにこう答えて。


「ああ。モンスターは手強いのが多いが、見たところ数は少ない。戦闘を避けていけば、最上階には辿り着けるはずだ」


 千里眼で確認した時に分かったことだが、配置されている敵はそんなに多くない。だから多分攻略組が全滅したのは、律儀に全モンスターを倒していったからなんじゃないのかって、勝手に俺は思っている。


「ならば、基本は戦わずに進むのか?」


「ああ。隠密行動で無傷のまま最上階まで上がって……最強クラスの技を魔王に、一気に全員で叩き込む。そこから離脱の方法は、明日までに俺が考えておく」


 ここで七海さんが手を上げて。


「でもルイ君。どれだけ気をつけても、敵に見つかっちゃうことだってあるんじゃないの?」


「はい。もし見つかってしまった場合は、倒せそうなら素早く倒して……無理そうなら囮役に引き寄せてもらうしかないと思ってます」


『なるほど』

『囮かぁー』

『囮も大事な役割だよ』

『囮役はもちろん俺が行く』

『人によってちゃんと口調変わるの草』

『まぁ雑魚戦に時間かけたら厳しいもんな』


 そう、この戦いは時間との勝負になる……瞬時に判断する能力、そしてメンタルが必要だ。


「この作戦が失敗したら俺らも捕らえられて、更に状況は厳しくなると思う。それにあまりこんなこと言いたくないけど……失敗したらすげぇ荒れるかもしれない」


 もちろん途中でアプデが入って、魔王城自体がナーフされたり、捕まってる人らが開放されることがあるかもしれないが……そんなのに期待してるようじゃ、配信者として二流だ。


「それでも、俺とレイの最前線に着いてきて……力を貸してくれる人はいないか」


 俺は言って軽く頭を下げる……そして一同は様子を探るように、周りを見始めた。もちろんファーストペンギンになるのは、相当な勇気が必要だろう……。


「……フン。我が行こう」


 そんな中、最初に手を上げたのは……ロビンだった。


「ロビン、お前……!」


「ああ、勘違いするなよルイボーイ……我は英雄になりたい訳じゃない。ただ我より強い敵がいるのが気に食わないだけだ」


「ははっ……動機がお前らしいな」


『草』

『いやいや、かっけぇよロビン』

『持つべきものはライバルやね』

『こういった役はロビンが一番うめぇんだよな……』

『流れ作るのが上手過ぎる』


 そして次に手を上げてくれたのが、なんと意外なことに。


「僕も行きましょう」


 安藤先生だったんだ。


「えっ、先生!? 本当に良いんですか?」 


「もちろんですよ。もちさんが捕まってる以上、僕も動かなきゃいけませんからね」


『草』

『草』

『生徒捕まってて草』

『先生も大変だなぁ……w』

『時間外労働で草』

『捕まっても牢獄でラジオやってくれ』


 そんな二人を皮切りに、続々と手が上がっていった。次は紫髪の銃を持った少女が立ち上がって。


「じゃあウチも行くよ。武器の都合上、後衛になるだろうけど」


「来夢さん……! って、攻略組にいなかったんですか!?」


「うん。ウチはチーム組まずにソロでやってたから、お誘いが来てなかったんだ」


「あっ、そうだったんすね……これはデカいぞ……!」


『来夢きたあああああああ!!!!』

『味方にした時は一番心強いなぁw』

『結局スナ手に入れたんだな』

『これで成功確率グンと上がったな』

『なんかいけそうな気がしてきた!!』


 更にはリリィも立ち上がって。


「よし、あたしも暇だから着いて行くぞ! なな姉も来るよな?」


「いいよー」


『草』

『草』

『ノリが軽いwww』

『こいつら状況分かってんのかwww』

『自由気ままだなぁ……』

『七海は猫だから』

『まぁ仲間は多いほうが良いから……!』


「頼もしいよ……みんなありがとう! 詳しい作戦は明日までに考えておくから、それまでにレベル上げと武器の強化をしててくれ!」


「はーい」「あい」「はい」「フゥン」


 そして会議は終わり、その場で解散となった。でもその後……今回は救出には参加しない人も俺らに回復アイテムなんかを渡してくれて。応援の言葉を掛けてくれたんだ。こんなにも多くの人の期待を背負ってる以上、絶対に成功させたい……改めてそう強く思う俺であった。


 ──


 そして夜。俺はレイの家で、コメントと会話しながら魔王城攻略の計画を練っていた。武器や並びはどうしようか……と頭を悩ませていると、背後から声が聞こえてきて。


「……類」


「レイか。どうした?」


 俺が振り向くと、レイはちょっと気まずそうに下を向いて……。


「あ、えっと……いなりんの様子はどうかなって思って」


 それを聞いた俺は、千里眼を使って魔王城の様子を覗いてみた。そこにはぼんやりとだけど、牢屋の様子も目に入ってきて……。


「ああ……魔王城には囚われ組も沢山いるし、みんな雑談とか定点カメラとか見て、それなりに楽しく過ごしてるみたいだ。まぁ出来ることは限られてるし、いなりさんは騒がしいの苦手そうだからちょっと大変そうだけど」


「……」


「レイ?」


 するとレイはモジモジしたように、左右に動きながら……。


「あの……ごめんね、今日は。焦って間違った判断を下すとこだった。思ってもないことも言っちゃったし……」


「いいよ別に。そうなった気持ちも良く分かるし、俺もちょっと強い言葉を使い過ぎたと思うから……ごめんな」


「……うん。……ね。明日、絶対にいなりん助けようね」


「ああ」


『言えたじゃねぇか』

『良かったぁー!!』

『謝った!!』

『仲直りしてくれて良かった~!!』

『うおおおおおおおおおおお』

『これや……これが……これが見たかったんや俺は……!』

『雨降って地固まるってね』

『……っぱルイレイなんだよなぁ!!!』

『あとは子供を取り返すだけだ!!』

 

 そしてちゃんと仲直りしたことで、レイはいつもの口調に戻ってきて。


「……ふふっ。なんかちゃんと喧嘩したのって久しぶりだね?」


「そうだな……でも。たまにはぶつかって言い合うのも、大切なのかもしれない」


「そうだね。私も類も、間違っちゃう時があるかもしれないから」


「ああ」


『ホント良い関係だよなこいつら』

『てぇてぇで済ませて良いのか、この関係を』

『眩し過ぎて泣いちゃったァ……』

『ちゃんとお互いをリスペクトしてんだよな』

『早く結婚してくれ』


「とりあえず……明日は救出予定だから、囚われ組もなるべくログインするよう、それとなくつぶやいたーで言っておこう」


「じゃあ私がやっておくね!」


「ああ、助かる」


 そしてレイはつぶやいたーに書き込んだ後……俺に話しかけて。


「じゃあそろそろ私、落ちるよ。類は?」


「俺はもう少し作戦を練っておくよ。レベルも上げときたいし」


「……そっか。頑張ってね」


「ああ、ありがとう」


「じゃあおやすみ、類」


「おやすみ、レイ」


『おやすみ』

『レイちゃんもお疲れやで』

『さぁー明日は決戦だ!』

『いなりん取り返すぞおおおおおお!!!』

『ルイも無理しないでな』

『ルイはお休みボイスを早く出せ』

『なんならルイレイで囁きボイス出してくれ』

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