第112話 ラストダンジョン発見?

 ──


 それから俺らは羽の練習をしようと、レイの家付近にある森で飛び回っていた。30分くらい練習を重ねると、決めた方向へ飛べるくらいには安定するようになってきて……俺は浮かびながら、届いてきたチャットとコメントを確認していた。


「……おー。もういぶっきーから写真の購入依頼が届いてるよ。やっぱり熱狂的なレイガールだねぇ、あの人は……」


『流石いぶっきー』

『情報が早過ぎるwww』

『ルイから買うの屈辱的だろうなぁw』

『貴重なお金を写真なんかに使って良いのか?』

『まぁあの人らはギャンブルで稼いだお金あるから……』

『なんてメッセージ来てた?』


「なんてメッセージ来てた……ああ。『幾らで売ってくれますか。早く返事ください。さもないとロケランぶっ放しに行きます』……だってさ」


『草』

『草』

『こわい』

『撃ちたいだけだろwww』

『いぶっきーとここまで仲良くなってて俺は嬉しいよ』

『結局幾らで売るの?』


「結局幾らで売るのか……そうだなぁ。ここは1万ゴールド……いや、もっといけるか? それにもっと過激な写真を撮れたら、高額で売れる可能性も……?」


『あ』

『あっ』

『ガタッ』

『その流れはまずい』

『こーれレイちゃんに気付かれるオチです』

『スク水のレイいなりお願いします!!!!』


 まぁ……写真事業が上手くいったら、新たな写真を撮ることも考えておこう。とりあえず俺は『3万ゴールドからで良いっすよ^O^』と顔文字付きで返事をしておいた。


「……これでよし」


『草』

『草』

『クソ高ぇwww』

『ぼったくりだろwww』

『煽ってんだろその顔文字www』


「まぁ最初に高い値段を提示するのは、交渉の基本だ……」


 ……と、ここで前方を飛んでいるレイが、俺を呼んでいることに気が付いて。


「……類! ねぇー類ってば!」


「ん、どうした?」


 俺は羽を使ってレイの側まで飛んでいく。そしたら彼女は指を差しながら、少しソワソワしたように。


「あっちに凄い大きな湖を見つけたんだけど……それがすっごい色が怪しいの!」


「怪しい?」


 言いながらレイ指の先を見る。確かにそこには湖のような場所があったが……その色は黒と紫が混ざったような、かなり気味の悪い色に染まっていた。


「うわっ、何だアレは……ちょっと行ってみるか?」


「うん、気になるし何か確かめてみようよ! いなりんも着いてきて!」


「あっ、うんっ!」


 そうして二人は先に飛んでいった。じゃあ俺も行きますか……と言った所で、チャットが返ってきて。確認するとそれはいぶっきーからで……俺はそれを読み上げる。


「どれどれ……『承知しました。後ほどルイさんの所に向かいます』……だって。ふふっ……ははっ、あはははっ……! これで一気に3万ゴールドゲットだぜ……!」


『草』

『悪い顔してる』

『笑い方よ』

『笑い方が完全に悪人のそれ』

『良い商売見つけたなぁw』

『誰だこいつ良い人って言ったの』


 ──


 そして俺は湖の近くに着地した……そこでは既にレイといなりさんが、湖の調査を進めていたようで。


「んー、何なんだろうね、これ?」


「あんまり触らない方が良いよ、レイちゃん。多分これ毒だから……」


「えっ、毒!?」


「おーい、何か分かったか?」


 俺は背後から二人に話しかける。そしたらレイは振り返って、ちょっとだけ怒ったように。


「もー、遅いよ類! さっきからコソコソしてるけど、また何か変なことでもやってるの?」


「えっ、い、いや? そんな人聞きの悪いこと言うなって……」


『草』

『バレバレで草』

『バレてーら』

『また羽交い締めにされんぞ』

『ご褒美なんだよなぁ……』


 そしてレイはとある考えに至ったのか「あっ」と一言発した後、不審そうに俺の方を見つめてきて……。


「……もしかして。私らのスカートの中、覗こうとしてたの?」


「いや、してねーよ!! 変な言い掛かりはよせって!!」


「でもさっきからずっと私らの後ろ飛んでるし……覗きスキルも持ってるし……説得力無いなぁ?」


「いやいや、だからこそだろ? いつでも見ようと思えば見れるから……そんな飛んでる時に、必死こいて見る必要も無いってことだ」


『あ』

『うわ』

『うわっ』

『きも……』


「…………うわっ。うわぁーっ……」


「いや、ガチで引くのやめろ! つーかお前から吹っ掛けてきたじゃねぇか……」


 ……と、ここでいなりさんが何かを発見したらしく、指を差しながら俺らに話しかけてきて。


「あの、お二人ともあれ見てください! 何か光ってる物が落ちてませんか?」


「えっ? ホントだ……よく見えたね!」


「あれは何だ……石か?」


 確かにその方角には何か光っている物が見えたが、それが何かは分からなかった。気になった俺らは、それに近づいてみた……。


「うわっ!?」


 ……瞬間、思わず声が出てしまった。そこに落ちていたのは人の頭蓋骨、いわゆるドクロだったんだ。


「ドクロ!?」


「禍々しいオーラを放っていますね……」


「ねぇ、あそこにくぼみがあるよ!」


 更にレイが指す方には、そのドクロを設置出来そうな台座も置かれていた。なんともあからさま過ぎる配置だなぁ……。


「多分置けってことなんだろうけど……嫌な予感しかしないなぁ……」


「じゃあ、見なかったことにして帰る?」


「そういう訳にもいかないよな……」


『いけ』

『やるんだな!?』

『さて何が起こるか』

『こえ~~』

『ルイ達がやらなくても多分他の人がやるよ』


 まぁ……確かに俺らがやらなくても、他の人がこのドクロを見つけるのは時間の問題だろうし……何か起こるのなら、自分の目で確かめた方が良いよな。そう決心した俺は落ちてたドクロを手に取って、二人の方を見た。


「じゃあ置いてみるぞ……覚悟は良いか?」


「うん!」「はっ、はい!」


「行くぞ!」


 そして俺は台座にドクロを設置した…………瞬間。ゴゴゴゴと大きな地響きの音が鳴って、大地を揺らし、大量に水が溢れ出して……湖の中から50メートルは超える、巨大な黒の城が現れたんだ。


「なっ……!?」


「おっ……お城が生えてきました!?」


「うわーー!!! でっかーい!!」


『うわあああああああああああ!!!』

『何だこれ!!!??』

『やべぇのきたあああああああああ』

『城が出てきたぞ!?』

『でっけええええええええ!!!』

『魔王城だああああああああ』


 このヤバさ全開の闇のオーラ……魔王城に違いないだろう。でもこんな家の近くの湖に隠されていたなんて驚きだ……それで急にデカい建物が現れたレイは、かなり興奮気味に。


「ねぇねぇ! この城に入ってみない!?」


「いやいや。いやいやいや……いかにもって感じだろ。多分ここがラストダンジョンだ。無策で入るなんて自殺行為に他ならない」


「ええっ、ここがラストダンジョンなの!?」


「最初の町の近くがラスダンなのはRPGではありがちだしな……」


 まぁメタい考察をすると、このゲームは一週間までだし……良い感じのラスボスをプレイヤーが集まりがちな町の近くに配置してくれたのだろう。まぁ俺やレイが近くに家を建てたのは、マジで偶然だろうけど……。


「と、とりあえず……どうしますか?」


「類の言う通りここにいるのがラスボスなら、私達だけじゃ厳しいかもね?」


「そうだな……とりあえず一旦帰って、プレイヤーのみんなに報告しよう。明日からはこのダンジョンを攻略していくことになるだろうからさ」


『それが良いかも』

『これは面白くなってきた!!!』

『ワクワクしてきたな!』

『魔王城攻略編来る!?』

『このチームが最初に見つけたの流石だな』

『なんだかんだ羽も意味あったじゃないか?』


 コメントは盛り上がりを見せる。そしてレイ達は俺の提案に頷いてくれて。


「分かった。じゃあみんなにチャットで知らせておくね!」


「ならいなりは、広場の掲示板にも書いておきましょうか……」


「あっ!! 俺が掲示板に書くから、いなりさんは休んでていいよ!!!」


「えっ、あっ。ホントですか?」


「うん! 俺、働くの大好きだから!!」


『草』

『草』

『草』

『嘘くせぇwwww』

『大声で仕事奪いやがったwww』

『怪しすぎるだろwwww』

『まぁ、あの書き込みを見られる訳にはいかないからな』

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