第110話 わっ、すっごい硬くなってるよ?

『ええええええええええ!?』

『かっけぇ……』

『天使になっちゃった』

『レイちゃんは元から天使定期』

『本当に翼生えるのかwww』

『一枚の羽装備しただけで翼生えるもんなのか?』


 その光景にコメントも……俺らも困惑の姿を見せて。


「ええ……装備するとマジで羽が生えるのか……?」


「言った通りでしょ? ほらほら、類といなりんも装備して!」


「あ、ああ……」


 言われて俺といなりさんもエンジェルウイングを装備する……そしたらほぼ同じタイミングで、俺らの背中にもバサッと白い翼が生えてきたのだった。


「うわっ!」「わっ……!」


『ぎゃああああ生えたあああああああああ』

『フォトスポットみたいになってて草』

『壁に羽描かれてるやつなw』

『スマファイにこんなキャラいたな』

『ルイの羽は黒にしろ』

『白だと目立つなぁww』


 確かにこの真っ黒な服の背中に、白の羽根が生えてるのは目立つかもな……ここでどんな風に見えてるか気になった俺は、こう口にしていて。


「ちょっと鏡で確認してきても良いか?」


「あー、私も行く!」


「あっ、じゃあいなりも行きます……!」


『結局みんなで行くんかいw』

『なかよし』

『みんな一緒が良いもんね』

『まさかここで試着室が役に立つとはな』

『ここまで想定されていたのか……!?』


 結局俺らは三人で試着室の方へと向かった。そして各々分かれて試着室に入り、羽の生えた自分の姿を鏡で確認するのだった……。

 

「確かにかっこいいけど……やっぱ黒に染めたいよな……」


 言いながら俺は両手を広げ、羽の造形を確認する……うーん、クオリティは高いけど、この色だと目立っちゃうな。どうにか暗い色に変える術は無いだろうか……。


「エンジェルの羽なんだから、黒なんかにならないでしょ」


「うわっ」


 いつの間にか俺の更衣室に入り込んでいたらしく、にょきっと鏡越しにレイの姿が現れた。


「お前……勝手に入ってくるなって」


「えー、別に良いでしょー? 姿を確認してるだけなんだし」


「いやでも、俺がお前に同じことやったら……」


「普通に怒るよ?」


「だよな。理不尽過ぎる」


『草』

『草』

『羽で更衣室狭くなってるなww』

『ゲーム内とは言え更衣室に二人きりはえちち過ぎる』

『エッチな漫画でこういうシチュエーション見たことある!!』

『押せー!! 押し倒せー!!』


 そしてこんな状況になったことで、一部のコメントは盛り上がりを見せるが……お互いちゃんと服着てるし。それにこんな全男子が憧れるシチュエーションでも、レイが相手だったら興奮するものもしない訳で…………。


「わっ、類、すっごい硬くなってるよ?」


『あ』

『えっ』

『は!!???』

『エッ!!?!??』

『エチチチチチ』

『えっど』

『マズイですよ!!』

『どこ触ってるんですか!!!???』 


 レイのとんでもない発言に、俺は過去最大級のテンパり具合を見せて……。


「はっ、はぁあああっ!!!?? おおおおおっ、お前何を言って……!!!?」


「いや羽が。なんか無理やり取ろうとすると、硬くなるみたい」


「…………あっ…………あー。なるほど……ちょっと勘違いしてた……」


『草』

『草』

『草』

『草』

『すれ違いコント止めろwww』

『完璧なすれ違いだった』

『エッチなのは俺らの方だったか』

『勘違いしたルイが悪いよ』

『これは確実に切り抜かれる』


 いや、流石にこれは俺悪くないだろ……それで変な勘違いをした俺を面白がってるのか、レイは俗に言うメスガキみたいな口調で、俺のことをからかってきて。


「えーなになに、なんのことだと思ったの?」


「……お前のチャンネルがBANされても良いなら言ってやるよ」


「あ、じゃあ止めて」


『草』

『草』

『草』

『そこは冷静で草』

『ちゃんとラインは超えないの草』


 逃げ足だけは早いなコイツ……ってかさっきの発言も絶対、俺が勘違いすると思った上で言ったよなぁ。マジで油断ならないわ…………そしてまた俺の更衣室のカーテンが開けられて、にょきっといなりさんの姿が現れて。


「レイちゃんレイちゃん」


「また増えた」


「あっ、お二人の声が聞こえたので……レイちゃん、早速外で飛んでみません?」


「おー良いね! でもその前に写真撮ろうよ!」


「あ、うん、分かった……!」


 そしてまたレイはカメラモードを起動して、撮影に入ろうとする……いやここで撮るなって。その位置だと、どうあがいても俺も写り込むことになるんだって……。


「……何してるの? 早くこっち寄ってよ、類」


「え、俺も入るの?」


「うん。当然でしょ?」


「あ、ああ……分かった」


 さっき二人で撮るとか言ってた気がするけど……まぁ良いや。俺は二人の側に寄って、浮かんでいるカメラに視線を向けた。


「じゃあ撮るよー! はいチーズ!」


「ぴーす」「ふふっ」


 何枚か写真を取り終わった後、レイはそのまま俺らに写真を送ってくれた。メッセージを開き、画像を確認すると……更衣室で羽の生えたローブ姿の三人組が、笑顔で自由にポーズを取ってる写真がそこにはあったんだ。


「……情報量が多いな」


『草』

『草』

『草』

『大喜利のお題に使われそうな写真だ』

『写真で一言』

『一言じゃ足りねぇよ』

『羽で来た』


 ……で、その写真を見たレイ達はテンションを上げて。


「わー良い写真だね! 広場の掲示板にでも貼りに行こうよ!」


「良いですね……! じゃあ羽を使って行ってみませんか?」


「あっ、行く流れなんだ……」


『草』

『羽で行く』

『この構図流行りそう』

『このファンアート欲しい』

『なんなら写真を売りつけよう』

『いぶっきーかカレンちゃん相手なら売れそう』

『多分いぶっきーはルイのとこだけ切り取って捨てるよ』

『可哀想だけどめちゃくちゃ想像出来るのが草』

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