第107話 お揃いの服!
──
クラスト・オンラインが始まってから四日目。俺がログインするなり、レイからチャットが届いてきて……内容はいつもの通り『家に集合!』と一言だけ書かれていた。
「昨日と全く一緒じゃねぇか」
『こんルイ』
『こんルイ』
『いつもの』
『ルーティン化してるw』
『ルイがログインしたら通知行くようになってるんじゃないか?』
「ログインしたら通知行くようになってるんじゃないかって……まぁそうだろうな。じゃなかったら、このスピードで送られてくるのに説明が付かないからな」
『確かにw』
『あれ? でもそんな機能あったっけ?』
『ま、まさか……!?』
『レイちゃんのことだし、ずっと監視してる可能性もある』
『「ルイ、まだかな……♥」』
『ヤンデレレイ概念は流行らせろ』
『ヤンデレイ、すこ』
「おい、怖い話は止めろ……夏はまだ先だぞ」
『草』
『草』
『草』
『草』
そんなコメントと会話をしながら、昨日ログアウトした始まりの草原からレイの家へと向かって行くのだった。
──
「やっと来たね、類!」
家に入るなり、レイといなりさんが俺を出迎えてくれた。だけど気になるのは、昨日と大きく変わった二人の服装で……。
「ああ……なんだその服は?」
「いなりんに作ってもらったんだー! 良いでしょー!」
言いながらレイは、シャツを引っ張るようにして見せてくる。その服には魔道士の帽子を被った、デフォルメされた狐のイラストが描かれていた。
「なるほど……狐に俺ら魔道士の要素を加えてくれたんだな」
『かわいい!』
『すっご!!』
『服屋で見たやつと違う!?』
『一日で作ってくれたのか』
『えっ、めちゃめちゃ欲しいんだけど』
『いなりん多才過ぎる』
『グッズ化してくれ!!!!』
コメントの反応はとても良くて……確かにグッズ化して欲しいレベルだな。俺もこの服着て外歩きたいもん。それでいなりさんは、魔道士要素に気づいてくれたのが嬉しかったのか、少し声を弾ませて。
「はい、その通りです! ルイさんの分もありますよ!」
「えっ、本当に?」
「もちろんですよ……はいっ、どうぞ!」
「ありがとう!」
いなりさんから服を受け取った俺は、早速メニューを開いて装備してみた……そのまま二人に感想を聞いてみる。
「……よし、どうだ?」
「はい、とても似合ってます!」
「うん! こうやってみんな同じだと、文化祭のクラスTシャツみたいだね!」
「……」「……」
「どしたの二人とも?」
「やっ、あの……文化祭には嫌な思い出があってですね……」
「同感だ……」
文化祭というワードで俺の黒い歴史が蘇ってくる……彩花と会ってなかった頃は本当に俺はぼっちで、終わるまでずっと端っこにいたからな。きっといなりさんにも似たような過去があるのだろう……いや、俺なんかと同じにされたくないだろうか。
……でも、そんな俺らの陰のオーラを吹き飛ばすように。レイは俺といなりさんの肩を組んで。
「もー、それは過去の話でしょ? それに私達はもうファミリーなんだから、お揃いの服着ても恥ずかしくないでしょ!」
「……まぁ、そうかもな」
「うんっ……! そうだね、レイちゃん!」
『レイちゃんは優しいなぁ』
『どんな過去があったんだろう……?』
『多分触れちゃいけないやつ』
『まぁアニメみたいな文化祭を送れてる奴ってほとんどいないし……』
『前に安藤先生がそんなこと言ってたっけ』
確かにレイの言う通り、過去を思い出して落ち込む意味なんか無さそうだ……で、雰囲気を戻してくれたレイは、話を変えてくれて。
「それでね、類が来るまで私達二人でモンスターを倒してて……昨日と合わせて2万ゴールド貯めたんだよ!」
「うお、すごっ!」
「でしょ! それであと1万ゴールドで、三人分の羽が買えるから……今から残りの1万を爆速で稼ぎたいと思うよ!」
「どうやって?」
そこでレイはビシッと人差し指を立てて。
「それはね……採集クエスト!」
「採集?」
「うん! 採集は指定されたアイテムを集めて、それを持って行ったらお金に変えてくれるんだ! ……まぁ、集めるだけだからレベルは上がらないけどねー」
「なるほどな」
とりあえず最短で稼げるのが、そういったクエストを受けることなんだろう。まぁ断る理由も無いし、早速行くとしようか。
「じゃあ行こうか。場所分からないから、案内してくれ」
「うん! もちろん! ……ね、誰かに会ったら、服のこと自慢したいね! 私達のリーダーが作ったんだぞーって!」
「ああ、良いかもな。出会う人みんなに宣伝しておこう」
「えっ? そっ、それはちょっと恥ずかしいですね……?」
『かわいい』
『照れてるいなりん可愛いよ!!』
『マジでグッズ化して欲しいなぁ』
『これは自慢できるよ』
『いなりんファンに高値で売れる』
「ふふっ、じゃあしゅっぱーつ!」
「おー」「おっ、おー!」
そんな感じで……俺らは外に出て、クエストの場所へと向かっていくのであった。
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