第97話 ミスってないよ!!

 確かに俺の眼の前にいる青髪の美少女は、レイに違いなくて……驚きながらも俺は言葉を発した。


「お前、どうしてこんな所に家建ててるんだ!? 初日からやってたなら、もっと良い場所見つけられただろ!?」


 俺は彩花が初日からログインしていることは事前に聞いていた。だから文明レベルは来夢さん並みに進んでいると思っていたんだけど……。


「それは……材料を集めるのに時間掛かっちゃって」


「えっ、そんなに木材って集めるの大変なのか?」


「いや、そんなことは無いんだけど……私、大きな家が作りたくてさ!」


 ああ、なるほど……デカい家作る以上は、普通の何倍も素材が必要なんだろう。でも、何で大きな家が必要なんだ? ちょっと聞いてみるか。


「どうして大きな家を作ろうとしてるんだ?」


「えっ? ま、まぁ、ゲームだからさ! 豪邸に住みたいなって思って!」


「ふーん……」


 言うて現実の彩花も立派な一軒家に住んでるんだけどな……ま、そんなことは絶対配信上では言えないんだけど。そしてレイは話を逸らそうとしてるのか、俺にも同じことを聞いてきて。


「それより! 類こそ、何でこんな場所で家作ってるの?」


「俺はまぁ、隠れ家というか……探偵事務所作りたくてさ」


「え、何言ってるの?」


『草』

『草』

『めっちゃ困惑してる』

『絶対に伝わってなくて草』

『わざとだろww』

『適当過ぎて草』

『こいつらのやり取り一生見れるなww』


「……ってか豪邸作ってる最中だったんだろ? 邪魔して悪かったな」


 ここで作業を中断させて呼び出したことを思い出した俺はそう言って、その場から去ろうとしたら……レイに引き止めてられて。


「あ、待って待って。どうせ類って今ぼっちでしょ? ぼっちちゃんでしょ?」


「ぼっちちゃんではない」


「とにかく! 今、一人だよね?」


「ソロプレイヤーと言ってくれ」


『草』

『見栄を張るな』

『強がんなwww』

『俺はソロだ』

『果たして自らソロを選んでるんですかねぇ……?』


 それを聞いたレイは「ふふっ!」と笑った後、俺に一歩近づいてきて。


「だと思ったよ……ね、類。良かったら私とチーム組まない?」


『おっ』

『きたああああああああああああ』

『まさかレイちゃんから誘ってくるとは』

『彼女からのお誘いやぞ?』

『これは面白くなってきた!!!!』


 コメントは盛り上がりを見せるが……何だチームって?


「チーム?」


「そう、チーム! チームを組めばアイテムとかお金も簡単に共有出来るし、連絡も取りやすくなるんだよ! それに今回、競い合う要素もあるし!」


「競い合う要素って?」


「例えばゲーム終了時に一番お金を持ってた人とか……最初にボスを倒した人とか。それを満たしたら、何か運営さんから景品が貰えるらしいよ!」


「へぇー」


 そんなのがあるのか。やることが決まらない人は、その競い合う要素での受賞を狙うってことなんだろうか……まぁそれを狙うのなら、チームは組み得ってことなんだろう。俺はチームについてもっと聞いてみた。


「チームって何人まで参加出来るんだ?」


「四人までだね!」


「チームを組んだら、他にどんなメリットがあるんだ?」


「えっとねー、一緒のチームだと経験値が多く獲得出来たり、仲間の近くで復活出来たりとかだね! アイテムドロップ率が上がるって噂もあるみたい!」


「へー」


 なるほどね。やはりチームは組み得……と言うか、このゲームはチームを組む前提で作られているのだろう。もちろん、チームを組むってこと自体は全然良いことだと思うんだけど。


「……でもなぁ。今回は沢山のライバーが参加してるんだろ? 今までに絡んだことのない人とも関わるのが醍醐味だと思うから……ここでもお前と一緒ってのもな」


「ああー、確かに類の言いたいことも分かるよ……でもさ、今までに喋ったことの無い人に自分から絡みに行けるの?」


「うっ……」


「しかも二日目で、もう大体の人はチームに入ってるよ? 今からチームを探すのは難しいんじゃないかな?」


「ううっ……!」


 レイからの正論に、何も言い返せなくなってしまう。どうやら俺が初対面の人相手に、ガンガン行けるタイプでは無いってことを彩花は良く理解しているらしい……ってかおい、ちょっと待て。


「……」


 俺はもう一度眼の前にいる彼女の姿を見るが……周囲に他にプレイヤーらしき人物は見られなかった。まさかこいつも……? 俺は同じことを聞いてみる。


「……そういうお前は?」


 そしたらレイは、分かりやすく動揺を見せて。


「えっ、わ、私もソロだけど……他の人と一緒にモンスター狩りとかには付いて行ったりしてるから! 別に一人ぼっちじゃないんだからね!?」


「……お前もスタートダッシュ、ミスってない?」


「ミスってないよっ!!」


『草』

『かわいい』

『レイちゃんはかわいいなぁ』

『レイは初日ずっと木材集めてたから……』

『正直ミスってるとは思う』

『ルイと違って、レイちゃんはチーム組もうと思えば組めるから!!!!』


 ……まぁ。レイもぼっちで、同じぼっちである俺を見つけたからチームに誘ってきたのだろう。もちろん素直にそれに応じても良いのだが……まだ、他のチームに入れる可能性だってあるし。それに彩花の反応も見てみたいから……そう思った俺は、こんな提案をしてみて。


「じゃあ分かった……明日だ。明日までにお互い、どこのチームにも入っていなかったら、俺らでチームを組もう。それだったらどうだ?」


 その提案にレイは頷いてくれて。


「うん、分かった。そうしよっか!」


「ああ、じゃあ家作るの頑張れよ。完成したら見に来るからさ」


「うん! 待ってるね!」


「じゃあな」


 そう言って俺は去った。そしてレイに声が聞こえない場所まで来た俺は、片手を上げ……こう高らかに宣言するのだった。


「…………よし、今日中に絶対、他のチーム見つけて入ってやるぞ!!」


『草』

『草』

『草』

『カス』

『お前さぁ……』

『最悪過ぎる』

『ひっど』

『お前ってヤツはホンマ……』

『人の心とか無いんか?』

『最近やーっと素直になったと思ったらこれだよ』

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