第85話 理想の恋人を作ろう! その3
──
「じゃあ、最後は俺だな。二人みたいに上手く作れなかったから、ちょっと見せるの恥ずかしいんだけど……」
「そういうのいいから早く出してください」
「……なんか当たり強くなってない?」
「ふふっ! お二人共、仲良しになりましたね!」
俺らのやり取りを見たカレンさんは、あどけない笑顔でそう言った……これで仲良くなれたってことで良いのか? まぁ、いぶっきーの素に近い姿を見れたのは、ちょっとだけ進歩したと言えるのかもしれないが……。
そんなことを思いながら、俺は二人にスケッチブックを見せた。
「はい、ドン。俺もレイガールのフリして応募しようと思ったから、男の設定で作ったぞ。名前は
「名前かっこよすぎません?」
「アニメキャラみたいですね!」
「君らがそれ言うんだ……」
シャイニーと星雲坂も大概じゃないか? と思ったが、ここでツッコむと更にややこしくなりそうだったので……そのまま俺は零斗の解説を続けていった。
「じゃあ説明していくけど、零斗は委員長でサッカー部のキャプテンもやっている。それで優しい性格をしているから、みんなから凄く慕われているんだ。そして陽キャだから場を盛り上げることも出来るし、頭も良い……」
「……」「……」
そこで冷ややかな視線を向けられているのに気づいた俺は解説を止め……その理由を問いただしてみたんだ。
「……どうかした?」
そしてカレンさんといぶっきーは、お互いに顔を合わせて……。
「いや、何と言うか……教科書みたいな彼氏ですね?」
「えっ?」
「あー分かります! 理想と言っても、全てが完璧だと人間味が減るんですよ! だからもう少し私達が共感できそうな、お茶目なところとかを描写したほうが良いと思います!」
「ああ、なるほど……」
確かにカレンさんの言う通りかも。リアルに出来杉君みたいな完璧な人間がいたら、尊敬や愛情の前に恐怖を覚えるかもしれない……多少の欠点や欲みたいな人間臭い一面があってこそ、愛される人間になり得るのかもしれないな。
俺はそれに納得した……が、そこで出てくる問題点が一つ。
「……でも俺、二人みたいにいい感じのエピソード生み出せないよ?」
「困りましたね……それじゃあ私らが、追加のエピソードを考えてみましょうか」
「良いですね! 私らで零斗さんをポンコツにしましょう!」
「人間味を与えるって言ってよ」
……そして俺ら三人で、零斗の緊急テコ入れが始まった。ここで各々自由に、人間臭い一面を加えるようなエピソードを上げていって。
「陽キャで頭も良い……が、センスが壊滅的で、初デートで裁判の傍聴をチョイスするとか」
「……やり過ぎじゃない?」
「そうですよ! サッカー部は裁判所に行きませんよ!」
「そのツッコミも何か違う気がするけどね?」
裁判所行く人なんて、中々いないし……そもそもこれ共感する? そして次はカレンさんが案を出してくれて。
「じゃあ……頭も良いが、デートに萌えアニメのシャツを着てくるとか!」
「うーん…………それはどうだ? 引かれるんじゃないか?」
「いえ、良いラインだと思います。私の同級生も異世界モノとか見てますし。深夜アニメに詳しい運動部だってたくさんいますもの」
「そういやいぶっきーってJKだった」
ロールプレイを忘れないのは流石だ、いぶっきー……いやもしかしてこれ実話か? まぁ何にせよ、俺の頭じゃ他には思いつかないし……これを採用しようかな。
「じゃあそれを使うことにするよ……よし、これで三人分完成したな」
「おおー、やりましたね!」
「この三人で日常系アニメやってほしいですね。主人公はもちろんシャイニーで」
「ありがとうございます!!!!」
「……なんか話が飛躍しすぎてない?」
何でアニメ化の話になってんだ。つーかその場合原作はどうすんだ……ってかこの二人なら、放っておいたら無限に話作れそうだな。今日、俺は二人の眠っている才能を開花させたのかもしれない……。
「では、この三人をレイが公開している応募フォームに送りましょうか」
「はい! ……そうだ、送るペンネームはどうしますか?」
「まぁ、俺らの名前を使うわけにはいかないよな」
もしも名前で彩花にバレたら、企画が成立しなくなってしまうので、偽名を使う必要があるのだ。でもどんな名前にしようか……。
「……じゃあ私はカレンのアナグラムで『レンカ』でいきます!」
「おっ、いいね」
まさかカレンさんから、アナグラムなんて難しい言葉が出るとは思わなかった……ってのは内緒な?
「では、私は伊吹……いぶっきー……ぶっきー……『べっきー』でいきます」
「……それはツッコんで良いの?」
「ひらがなだからセーフです」
「……」
まぁ、これ以上は深く突っ込まないでおこう……。
「ルイさんはどうされますか?」
「じゃあ俺は……ルイを漢字にして
「涙ちゃんですか。泣き虫で気弱な女の子がイメージできますね!」
「一部の層に人気出そうなキャラです……あと絶対ロリキャラですね」
「だから君たちは想像力が豊か過ぎるんだって……」
何で名前だけで、顔とエピソードが思い浮かぶんだよ。それもう才能だろ。
「じゃあ、レイさんの配信日まで待機ですね!」
「では当日まで……スキップ」
「スキップー!」
「編集点まで作ってくれてる……!?」
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